初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

クィーンとクリス その1

 全員が揃う中、先日の話になる。
 すぐにジャッジの表情が険しくなる。
「クリスって言ったんだよな。その男」
「……はい」
「最悪だ。何であいつがこれに関わってんだよ」
 カナリアの答えに、ジャッジが頭を抱える。
「お知り合い……ですか?」
「今の状況だとそうだと思うとしかいえない。ただ、俺の知るクリスはゲームプログラマーだから……」

「酷いね。My dear son.(私の可愛い息子は)」
 どこからともなく、その男が現れた。
「お父様、なんですか?」
「違う。実父の知り合いだそうだ。天地がひっくり返っても、こいつと血が繋がっているなんて言わないで欲しいんだが」
 ジャッジの言葉に、クリスがくすりと笑う。
「本当に酷いよ、お前は。お前にプログラムの基礎を教えたのは私だろう?」」
 その瞬間、クィーンが扇子を取り出した。
「ほほほ。自称親か。そしてこのゲームの作り手。……おぬしとかような場面で相見あいまえるとは」
「それはこちらの台詞でしょう。『女帝』」

 先ほどまでジャッジと対峙していたはずなのに、いつの間にかクィーンが相手になっていた。
 そして、クィーンの現実世界の別称「女帝」。これを知る者なのだと、クリスは言っているのだ。
「ジャッジを見たときからおぬしと相見えると思うておったからの。予定が早くなっただけじゃ。今も米国アメリカにおるのなら、黙っていようかと思うていたが、日本にいるのであらば、いつでも相手するぞ」
 クィーンの言葉に、全員の背筋が凍る。いや、パッシブスキルをわざと、、、氷のように凍てつかせているのだ。

 ……そんなスキルをいつの間に……、そう思ったのはカナリアだけではないはずだ。

「相変わらず、遠慮のない方ですね。女帝は」
「I don't want to withhold from you.(お主に遠慮したいなどと思わぬわ)」
「It is a pity.(残念だ)」
 二人の間にかなりの火花が飛び散っていた。

「とりあえず、クィーンさん。茶筅が出来上がりましたので茶を点ててみました。ご賞味を」
 アントニーが唐突に割って入った。


 ログアウトしてから思ったのは、クィーンの扇子かアントニーがお茶を出すタイミングが合図だったのだろう。

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