初心者がVRMMOをやります(仮)
現実世界にて<女帝の情報網>
保がクリストファーのつけたであろう追っ手を撒きながら戻った時には、日付が変わっていた。
「保さん!!」
美玖がリビングから慌てたように出てきた。
「お帰りなさいっ」
ゲーム内で宣言したように、美玖はかなりの頻度で出迎えるようになっていた。
昌代に言わせれば「美玖はまだまだ成長期。夜は休め」なので、日付が変わるまで起きているということはない。
起きていようものなら、翌日凄まじいしごきが待っている。
それなのに起きていたということに、保は驚いたのだ。
「今日だけは特別だっておばばさんが」
「砂○け婆様が?」
「はいっ。今日だけはどんなに遅くなっても保さんを出迎えてやれって」
嫌な予感しかしない言葉である。
その足で保は美玖と共に昌代のところに向かう。
「どういうことだ?」
「どうもこうも、『ルシフェル』と名前のついた鼠が騒いでおったようなのでな」
「……」
さらりと告げられた言葉に、保は何も返せない。
「そのような顔をするな。我のところにもぐりこんだ鼠など何匹いるか分からぬ。そのうちの一匹じゃ」
「そんな物騒なやつ、よくそのままにしておけるな」
「そのままで結構。我は堂々とした鼠は嫌いではない」
それに、と続けてくる。
「必要な治験もあるしの。その情報などあやつらにくれてやっても痛くもかゆくもない」
一体何の治験だ。その言葉を保はかろうじて飲み込んだ。
「VR機器が人体に与える影響と、それに携帯を合わせた場合に起こりうる異常作用の研究じゃ」
あえて聞かなかったことを口にするか!? この陰険策士様は!! そう怒鳴りたくなるのを堪え、保は昌代を睨む。
確かに知られても問題のないものなのかもしれない。そう、禰宜田の女帝から見ればであるが。
「ほほほ。国にも同じものを提出しておるし、禰宜田だけでやっておる研究でもない」
「だったら尚更……」
「変に隠すから調べたくなるもの。堂々としておればそこまででもないぞ?」
どこまで非常識なやつなのだ。己を棚に上げて保はそう思った。
「さて、護衛からの報告だと厄介なやつと接触したようじゃの」
「どこまで手を回して、どこまで知ってるんだ。あんたは」
「我が知っておるのは、二十年近く前に起きた事件かの。あの被害者の中におぬしが入っていることくらいか」
「……十分だよ」
ただでさえ美玖のように騒がれた事件ですらない。
一ついうなれば、十五歳以下の子供は保護者同伴でないとVRゲームには繋げなくなっただけである。
元から、年齢一桁の子供へのVRゲームは国際的に禁止されている。
保たちはその違法な行為に、「公式な」実験台にさせられていたというだけである。
それには勿論、保の親も関わっているのだ。
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