初心者がVRMMOをやります(仮)
PvPイベントはお祭りになりました
PvPイベントが開催される頃には、最初よりもルールはかなり増えていた。
一つは、武器やアイテムを相手から奪えるというもの。
もう一つは、戦闘中いつもよりも早く空腹になるというものだ。通常よりも五倍早くLPが減るため、そちらの準備も怠れない。
カナリアがメンバーのために出来るのはこれ位だと思ってしまった。
「セバスチャン、LPの持ちがいい食事作りませんか?」
「ミ・レディ。それはそれで難しいですね。何せ片手で食べるようなものでないと難しいですし」
「……そうですね。それから相手から奪われないようにする加護をつけれればなと思うんですが」
「それは無理です。どういった状況で奪われるか、見当がつきません。例えば相手が鞄を漁る、というものが考えられます。ですが通常大半のプレイヤーはAIにすら許可しておりませんから」
そういえば、カナリアとセバスチャンが特殊なだけで、相手が鞄から物を奪うことは出来ないはずだ。
「ということは……手に持った瞬間が危ないってことですか?」
「今までだとそうでしょうが、あえてルールに書いてあるということは、他の方法もあるかと」
また頭を悩ませる事象が増えたと思った。
「ですので、我々はどういう食事が一番楽か考えましょう」
「……はい」
それしか役に立てるものはないらしい。
結局様々なものを駆使して、栄養ゼリーが入った飲み物を作って、六人に手渡した。
ジャッジも普段使う銃ではなく、刀で戦うという。
「さてと、あとは明日のくじ次第だな」
「出来れば『神社仏閣を愛する会』とは当たりたくない」
「『深窓の宴』の精鋭メンバーとはどんぱちしたいけどね」
それぞれが好き勝手に言って、ログアウトした。
翌日、このイベントのためだけに作られたという「闘技場」をたくさんの屋台が取り囲んでいた。
「……凄い、ですね」
「まぁな。初めてだろ。だから皆張り切るんだろ」
中には「PvPの前にLPを満タンに!」などと書いたところもあれば、「武器の修理はこちらで!」と書かれたところもある。
「武器の修理って……」
「一応、武器防具は壊れるぞ。しかもギルド単位で申込んでいるところだと、修理にプレイヤーをまわせない事だってある。それを考えれば商売としてありだな」
一緒に回っているジャッジが苦笑して答える。
「俺らだってディスがPT戦に出ないって決めたからこそ、頼る必要がないだけだ。同じ理由でジャスもPTに出ない」
ただ、ギルド戦に出るため出店していないだけらしい。
「ある意味カエルムみたいに、色んな職人が一緒にいるところの方が珍しい。カナリアやセバスに頼めばいい感じにLP回復の食事を考えてくれるし、ジャスやディスに頼めば武器防具のいいやつが揃う。そのための材料だってレットに頼めばなんとでもなるしな」
それだけでなく、カエルムは中難易度のクエストならギルド内のメンバーで事足りるというのも大きいらしい。
いいギルドに所属できたな、とカナリアは思った。
その時点で、ギルドが出来た理由というものをすこんと忘れているカナリアだった。
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