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初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

PvPイベントの1コマ


『さぁ、始まりました! PvPイベント! ギルド対抗のPvPが行われております!!』
 実況担当の社員の声が明るく響く。
『先ほど“神社仏閣を愛する会”と“深窓の宴第二部隊”の対戦は、“深窓の宴第二部隊”の判定勝ち。両者がほぼ同時に全滅するという珍しい光景。ほんの一秒差で“深窓の宴第二部隊”が残っていたための勝利。
 いやぁ、手に汗握る戦いでしたね』
 そして、その戦いのダイジェストが流される。最後はスローモーションで再生。本当にほんの少しの差で負けたのが分かる。
「……つか、『神社仏閣を愛する会』の戦力考えれば、かなりの善戦だろ」
 ジャッジは思わず呟いた。それに対してジャスティスも同意している。
「アントニーさんはチームプレイ得意だけど、今回ばかりは相手との連携組む時間が少なすぎ」
「エリさんは三回戦まで残ると思ってなかったみたいです。これからお疲れ様の打ち上げするそうです」
 そう言ってカナリアがセバスチャンに何かを頼んでいた。
「かしこまりました。ミ・レディ」
「カナリア、何を頼んだ?」
「えっと、会席料理もどきと半生の和菓子を。おばばさんが太鼓判押したので大丈夫だと思います」
 確かにあの面子は、何よりもそれを喜ぶだろう。クィーンを巻き込んだ料理に、ジャッジとジャスティスがため息をついた。

『さてさて、ここまで面白装備で勝ち抜いてきた“リアライズ”の登場だ!!」

 次の瞬間、周囲が笑いで包まれた。

 ……笑う理由は分かる。そう思ってジャスティスを見ると、ジャスティスも苦笑している。

 猫の前足をモチーフにしたような杖や、黒とベージュの二組に分かれ、双方共に二足歩行。……おそらくうけを狙ったものと思われた。
 それをわざわざ、嫌われている「マゼンタ」との対戦でやるため、周囲は尚更沸き立っている。
「……自爆、はしないよな?」
「したら判定負けだろ」
 ジャッジたちも思ったが、周囲でも同じ事を考えているのがいたらしい。
「よく作ったな、あれ」
「あ、黒兎の毛皮が欲しいって言ってたギルドです」
 カナリアがポツリと呟く。
 とすると、あの黒猫の素材は黒兎か。ある意味シュールである。
「ベージュのほうはなんだろうな」
 ジャスティスがそちらを気にしている。
「多分エアラビットの毛皮だと思います。近い色のエアラビットがいた記憶があるので」
「防具としてはかなり低いだろ」
「……ですね」
「遠目で見る分にはいい出来だな」
 丁度トトたちが来て、ジャッジたちは控え室へと戻った。

 次の試合が出番なのだ。


 そんな緊張をよそに、カナリアたちはセバスチャン作の会席弁当をつまみながら、試合観戦を楽しんでいた。
 最近増えた知り合いに弁当を羨ましがられつつ、ほのぼのとしている。

 ちなみに、トトたちが先ほどまで席をはずしていた理由は、この弁当を主催者側にいるタカとユウに届けに行ったためである。
『おおっ!? 黒猫のコスをしたプレイヤーが思いっきり高く跳んだ! その隙を突いてベージュの猫が別のところから突進だぁぁ!!
 な、なんと! 手榴弾をいきなり取り出し投げた! いやアレは樽で出来た爆弾だ!! どこまで我々の腹筋を鍛えてくれるんだ!?
 お!! これは初めてだ!! 黒猫が敵の鞄から物を奪った!! いや、奪えるという設定は出ていたが、セキュリティ面から難しいはず!』
 どうやってそんなことの出来るアイテムを作ったのか、カナリアはかなり気になった。
『盗んだのはマタタビ……ではなくHポーションだ!! お!? こちらでは爆破の影響で回復役のタブレットが壊れた!! これは大変だ!!』
 ひたすらオーバーリアクションで攻撃を仕掛け盗む黒猫と、爆弾を投げたりちまちまと攻撃をするベージュの猫。上手い具合に連携が取れていた。
「いいぞー!! やれ!! ア○ルー! メ○ルー!!」
 誰かが大きな声で声援していた。
「勝ったらこんがり肉をご馳走してやる! 『リアライズ』行けー!!」
 そんな周囲の声援を聞きつつ、カナリアは「あの肉球のついた杖、可愛い。今度ディッチさんにでもお願いしようか」などと考えていた。
『おおっ!? ここで“マゼンタ”が猛攻撃に出た! いや反撃か!? 現在の状況であれば、判定で勝てるのは“リアライズ”! マゼンタは盛り返せるか!?』
「面白い戦いですね。トトさん」
「いやぁ、パパンさん。色々とネタを盛り込んでくれるギルドだ。見てて飽きないですな」
 パパンとトトはほのぼのと話し始めた。
「先ほどの戦いは、マニアックな格闘ゲームのパクリでしたし。よくぞあれを知っていたと思いましたが……」
「ははは。ただ単にオーバーリアクションで観客を煽っているわけではないと、スカーレットちゃんが言ってましたからな」
「さすがに娘も控え室で出くわした時は、思わずガン見したそうです」
 そんな話をしているうちにママンとカカも戻ってきて、まったりとお茶をしながら観戦していた。
「面白くなってますわね」
「あぁ。溜席たまりせきが欲しくなるよ」
「パパンさんは渋いですな。溜席ですか」
「こういった場所も飲食が出来て最高ですが、臨場感を味わうなら溜席ですな」
 そんな男二人を尻目に、女性三人はほのぼのとお茶をしていた。
「それにしても、猫ちゃんの服が可愛いです」
「そうですわね。そのうちジャスティス君に作ってもらおうかしら」
「いえ、うちに住むニーニャ兄弟に同じようにスカーフ巻いてあげたいなって」
 布切れはあったと思う。闘技場は発想のるつぼだ。

 おそらく、それをメンバーが聞いていたら「違う」と突っ込みを入れられただろう。


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