初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

ユウからの忠告


 全ての試合をモニター観戦しつつ、様々な指示を出しているのが「十二宮」と「七つの森」である。どちらにも所属していないが、クリスとセラフィムも指示を出す側である。
「……いいのかね、これ」
 試合中のみ手伝いに来ているタカがモニターを見ながら呟いた。
「親父、今更だろ。俺らだってネタのオンパレードだってのに」
「あそこまで節操無しじゃないだろう」
「いや。スカーレットさんがいる時点で節操ないよ」
 そう言ったあと、ユウは「色んな意味でね」とぼそりとつけたしていた。
「どういう意味だい?」
「言葉どおりですよ」
 唐突にセラフィムが割って入ろうとも、気にせずにユウが返してきた。
「私が言いたいのは『節操なし』の方だが」
「そちらもほんっとうに、言葉どおりです。ネタもそうですが、あのヒトは女性の皮を被ったセクハラ中年親父です」
 その言葉にタカが苦笑している。
「まぁ、主だった被害はカナリアに向いているので、他ギルドには迷惑かけてませんよ」
「……よく、あの初心な子がかわせるね」
「かわしちゃいません。逆です。分かってません。あまり酷くなると周囲が強制的に終わらせますから」
 特にジャッジあたりが。それを聞くだけでクリスは思わず笑う。

 あの子が人間味を帯びていく。壊したのは自分たちだというのに、なんとなく嬉しい気がした。
「言っておきますが、ジャッジは昔から変わりませんよ。執着するものには恐ろしいほど執着して、逃げられてばかりですから。カナリアの場合、今までの環境のなせるわざなんでしょうね。疑問に思っちゃいません」
 冷たくユウが呟いた。
「あいつは俺と会ったときから表面上取り繕う術を身につけていましたよ。それをどう使うと効果的かも。
 学年主任の先生が気付いて、すぐさまカウンセリングを受けさせましたが、あそこまでが限界。相手の意思を無視した拘束は日常茶飯事だったのを、何とか意思確認くらいまではもっていったみたいですけどね。カウンセリングが必要ないくらいまで一時期はなったみたいですが、現在は心療内科に通院しているって話を聞いてますが」
「それは誰から?」
「本人から聞きましたけど。
 あ、違ったな。カナリアがカウンセリングを受けるついでに治療してもらってるんだっけ」
 クリスの問いにもユウはあっさり答えてくる。おそらくわざと言っているのだろう。

「言葉に気をつけろ」
 イノセンツがユウに向かって忠告していた。
「俺は事実を言ったまで。あんたらにとってジャッジは『裏切り者』らしいけど、そうさせたのは誰だろうね」
「なっ!?」
 セラフィムまでもが口を挟もうとするのを、クリスは止めた。
「君は私たちがMy Dear Sonを裏切りに導いたと言いたいのかな?」
「さて、どうでしょう。そこまで詳しく知りませんよ。……夢でうなされるのを見たことがあるだけで」
 画面から一切目を離すことなく、ユウは淡々としていた。

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