初心者がVRMMOをやります(仮)
クィーンの嫌がらせとカナリアの決意
当然のごとく、ジャッジを含む全員がクィーンから説教を受けることになった。
ジャッジ以外はすぐに解放され、「あまり目立つな」と釘を刺された。
こればかりは仕方ない。ただでさえ「カエルム」は称号持ちが多い上に、いろんな面で上位のプレイヤーが揃っている
しかも今回騒いだのは一名を除き上位プレイヤーのみなのだ。
「お主がおるから安心しておったが」
ため息をつきながら、クィーンはディッチを見る。
「……さすがに止めたら負けるかなと」
「たかがゲーム内イベントと言いたいところじゃが、人の価値はそれぞれ。仕方あるまい」
あっさりとクィーンが言い、それでジャッジ以外は終わったのだ。「次からは少し気をつけるように」と言われたくらいで。
「……さすがにパパンとトトも引いておったぞ」
「大事なものを馬鹿にしたのは向こうだ」
「それも事実じゃが、美玖がお主から逃げるとは思わなかったのか?」
「思いつかなかった」
「いま少しやり方というものを覚えるがよい。あれでは力を手に入れたばかりの幼子と同じじゃ」
だからなんだと、ジャッジは思った。カナリアがそばを離れるのなら、それ相応のことをすればいいと。
「お主、まだ落ち着かぬのか。いま少しカウンセリングの時間を増やせ」
「砂○け婆様?」
「お主が監禁なぞしようものなら、我は全力で排除する」
どうやらやりたいことは既にばれていたらしい。そして、カナリアがそれをあっさりと受け入れてしまう、幼さであるということも。
「……善処する」
「馬鹿者。カナリアは自由で笑っておるからこそ、お主をもひきつけたのじゃ。努々忘れるでない」
「……そうだな」
ひたむきに頑張り、笑うカナリアだからこそ、ジャッジがそばにいれるのだと、クィーンは言う。
そこまで見通せる目を持つクィーンだからこそ、カナリアが懐き、ジャッジは文句を言いながら逆らわないのだと、改めて思い知らされた。
……が。
如何せん、正座のまま十時間近く放っておくというのはどうなのだろうか。
時折説教に訪れるだけで、ほとんどがアントニーによる修行。
絶対高校時代の禅修行よりもランクアップして辛くなっている。
「……絶対わざとだ」
ジャッジは思わず呟いた。
当たらずしも遠からず。
どんな説教よりもダメージがあると見たクィーンの、「ささやかな」嫌がらせなのだ。
「ジャッジさんっ」
修行が終わったジャッジに、カナリアは思わず抱きついた。
「だめ、です。あんなの」
「カナリア?」
「だって、あれじゃジャッジさんが傷つきます。私は平気ですから」
「俺が平気じゃない。お前も、ばあさんも見下したあいつを俺が許せない」
だから、あそこまでしたのだと、ジャッジは言う。
「でも……」
「イッセンとかリリアーヌがいたら、もっと酷かったぞ。かなりご立腹だった」
「いっくんと、リリちゃんがですか?」
「あぁ。大事な従妹のお前を見下して、ばあさんは『長くやっているからこういうことが出来るんだ』と非難して。ああ見えてあいつら、あっちのゲームじゃ古参の上、日本サーバないでもベスト五十に入るプレイヤーだからな。ちなみにばあさんは殿堂入りしてるから、ランク外だぞ」
「お祖母ちゃんが!?」
「あぁ。あっちでβ版のころから喫茶店構えてるし、戦闘スタイルも有名だし、フレンドはいつも飽和状態。空きが出るのを待ってるやつすらいる」
どんな凄い人なのだろうか。カナリアは身内であるにもかかわらず、他人事のように思った。
「ま、あの喫茶店にいたやつらから恨まれただろうから、二度とあっちのゲームには繋げないだろうな」
「……そう、ですか」
驚いて、それしか言えなかった。
「ジャッジさん」
「ん?」
「一度、あちらのゲームに一緒に行ってもらっていいですか?」
カナリアは一つ決意した。
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