初心者がVRMMOをやります(仮)
思い出を詰め込む
開店後、カナリアのゲーム生活は一変した。何故、祖母が「もう少しゲームを楽しんでからの方がいい」と言ったのかやっと分かった。
店中心のゲームになるのだ。
しかもカナリアは「娘香の巫女」としての仕事もある。その二つと最低限のアクセサリー作りをしてしまうと、一日のゲーム時間のほとんどが終わってしまう。
「……ふしゅぅ」
「店を構えるのって予想以上に大変なんだな」
ジャッジが自発的に手伝ってくれているおかげで、店が成り立っているようなものだ。
「初めて知りました。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの凄さを改めて感じました」
本日の手伝いはジャッジとジャスティス。ほぼ「カエルム」から誰かしら手伝いに来てくれる。
「それはあるな。さすがポアロさんとマープルさんだ」
「ポアロ?」
初めて聞く名前に、カナリアは思わず食いついた。
「じいさんのプレイヤーネームだ」
「へぇぇ」
そういう話を聞くと、カナリアも一緒にゲームをやってみたかったと思ってしまう。もっとも、祖父が他界したのはカナリアが九歳の頃。どちらにしても無理なのだが。
「……にしても、カナリア」
唐突に、ジャスティスが呆れた声を出した。
「何故、土にドラゴンの卵の粉末を入れた?」
ジャスティスの言葉に、カナリアはすいっと視線を逸らした。
事の発端は、ドラゴンの卵の殻をボウルとして使ったことだ。間違ってオーブンにかけてしまったのだが、耐熱容器としてかなり使い勝手がいいことに気付いた。
熱しやすく冷めにくいのだ。
この性能を活かせないかと思ったのは、自然の成り行きだろう。
粉末にして、土に混ぜてみるということを思いついたが、そのままでは土が燃えるだけで終わってしまった。
スカーレットの知識とマリル諸島の特殊錬金を合わせて、土に混ぜ器にしたところ成功したのだ。そして、その知識を活かして土鍋を作ってもらった。
これで来年の冬には土鍋で鍋焼きうどんを出せる。思わずカナリアはほくそ笑んだ。
カナリアにとって家庭の味は祖母が作る料理だ。そして、冬になれば最低でも一回は食べていた。
それをゲーム内でも食べれないかと思ったのは自然の成り行きだった。
器が出来た。あとは食材を一年かけて探せばいい。
だが、それを口に出すのははばかられた。
「えへへ。ちょっとした思い付きです」
笑って誤魔化せ! 従姉の言葉を思い出し、思わず実行に移した。
勿論、後日その話はジャッジが向こうで聞いてきて、ばれてしまうのだが。
カナリアにとっての思い出の店は、料理もカナリアの思い出のものを取り入れて行くことになる。
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