初心者がVRMMOをやります(仮)
茶飲みという名の情報収集
それから暫くして、「安楽椅子」にはクィーンやら竜神やら、「カエルム」メンバーが集まっていた。
何のことはない。「カエルム」メンバーは店の手伝い(手伝えば相応の報酬ありのため)、クィーンは竜神を誘って茶飲みに来ていただけのことだ。
そこにクリスやセラフィムまで混ざれば、ある種カオスである。
ジャッジは不機嫌なのを隠しながらの接客、クィーンとクリスは腹の探りあい。その隣で飄々と竜神が団子を食べている。
「……来る時間を間違ったかな?」
そう呟いたのはセラフィムだ。
「いつきても同じだろ。個室があってよかったよ」
返してきたのはディッチだ。個室へ行けと言わんばかりに案内をして、そのまま居座っている。
「しかし、このような部屋まで作るなど」
「我は頼んでおらぬ。せっかくじゃと茶を点てるのを楽しみに出来る部屋を作ったようじゃ」
「そこを貸切にしていいんでしょうか?」
「まだ、茶筅も茶も上手く出来ぬ。既に先行で『抹茶オレ』を出しているようじゃが、お薄として出すには、無理があるからの」
言葉どおりに取れば、まだこの部屋を使う予定はないということだ。
「ディッチ」
「はい」
「用意を」
その言葉を受けて、ディッチが茶の用意をしていく。ただし、持ってくるところまでだ。そして、茶釜に水を足す。
「そのまま座っておれ」
「……はい」
何をさせたいのか分からないが、ディッチを残したままクィーンは茶を点て始めた。
「……以前より屑が残りませんね」
屑の多さに辟易するセラフィムをよそに、クリスが言う。
「やっとここまでの改良じゃ。現実世界の茶筅を持ってきたくなる」
「さすがにそれは……」
「お主らよ。出来ぬと分かって言っておるのに、何じゃ、その顔は」
やりかねない、と思ったのはセラフィムだけではないようで、全員を睨んできた。
「……あなたなら、やってしまえるのではと思っただけです」
「ゲームはよく分からぬ。我は茶を上手く点てれるようになりたいだけじゃが」
それ自体VRMMOとしてどうなんだと問い詰めたくなる。
「カナリアのアクセサリー作成能力と料理能力はみっちりと現実世界に引き継がれておるがの」
「ここで体験していることですし、現実でも使う能力です。そのあたりはリンクしやすいでしょうな。あなたのパッシブスキルもアクティブスキルも現実で使えておかしくないと私は思いますが」
「ほほほ。さすがクリス殿。言うことがジャッジと似ておるの」
「My dear sonは同じ事を言いましたか」
「一言一句間違いなくじゃな。あ奴の場合は断言に近い状態で言って来たがの」
あ、イノセンツの情報交換にいらしたんですか。そう、セラフィムは思った。
「それにしてもLittle ladyはどちらへ?」
その言葉を受けて、一斉にディッチのほうを見た。
「……カナリア君はいとこたちとクエストに行ったようです。ただ、受注主ではないとのことです」
セバスチャンからの情報をあっさりとディッチが言う。
「いとこ、というとあの問題児の?」
「アレは違います。母方のです。今まで別ゲームを楽しんでいたため、こちらではあまり有名じゃないと思います」
「ほほう。あのポアロに連なる者たちか」
セラフィムの疑問は、クリスによって答えが出た。
ポアロ、といえば思い出す人物は二通りくらいに分かれるはずだ。
一人目はエルキュール・ポアロ。かの有名な推理小説作家の書いた作品の主人公である。そしてもう一人は、その名前からつけたという生粋の廃人プレイヤーだ。
昔は別の名前を使っていたというが、結婚後はずっとポアロで通しその妻がマープルという名前で有名である。これにも色々と噂があり、妻が推理小説大好き人間だったことが由来するとも言われている。
「知っておったか」
「Little ladyのことを調べた時に」
「それだけ分かっておればよい」
それ以上話すつもりはないらしく、クィーンはわざとらしく茶をすすっていた。
――限定クエストクリアしました。クエスト主はイッセン、メンバーはリリアーヌ、カナリアの計三名です。クエスト名は「オークゴブリン討伐」――
運営会社が変わったことにより、限定クエストクリアの際に「誰が・何を」クリアしたかというのがアナウンスされるようになった。
「!!」
タブレットから響くアナウンスに、その場にいた全員が硬直した。
「……今度は一体何をやらかしたのかな? Little ladyたちは」
楽しそうにクリスが呟いていた。
何のことはない。「カエルム」メンバーは店の手伝い(手伝えば相応の報酬ありのため)、クィーンは竜神を誘って茶飲みに来ていただけのことだ。
そこにクリスやセラフィムまで混ざれば、ある種カオスである。
ジャッジは不機嫌なのを隠しながらの接客、クィーンとクリスは腹の探りあい。その隣で飄々と竜神が団子を食べている。
「……来る時間を間違ったかな?」
そう呟いたのはセラフィムだ。
「いつきても同じだろ。個室があってよかったよ」
返してきたのはディッチだ。個室へ行けと言わんばかりに案内をして、そのまま居座っている。
「しかし、このような部屋まで作るなど」
「我は頼んでおらぬ。せっかくじゃと茶を点てるのを楽しみに出来る部屋を作ったようじゃ」
「そこを貸切にしていいんでしょうか?」
「まだ、茶筅も茶も上手く出来ぬ。既に先行で『抹茶オレ』を出しているようじゃが、お薄として出すには、無理があるからの」
言葉どおりに取れば、まだこの部屋を使う予定はないということだ。
「ディッチ」
「はい」
「用意を」
その言葉を受けて、ディッチが茶の用意をしていく。ただし、持ってくるところまでだ。そして、茶釜に水を足す。
「そのまま座っておれ」
「……はい」
何をさせたいのか分からないが、ディッチを残したままクィーンは茶を点て始めた。
「……以前より屑が残りませんね」
屑の多さに辟易するセラフィムをよそに、クリスが言う。
「やっとここまでの改良じゃ。現実世界の茶筅を持ってきたくなる」
「さすがにそれは……」
「お主らよ。出来ぬと分かって言っておるのに、何じゃ、その顔は」
やりかねない、と思ったのはセラフィムだけではないようで、全員を睨んできた。
「……あなたなら、やってしまえるのではと思っただけです」
「ゲームはよく分からぬ。我は茶を上手く点てれるようになりたいだけじゃが」
それ自体VRMMOとしてどうなんだと問い詰めたくなる。
「カナリアのアクセサリー作成能力と料理能力はみっちりと現実世界に引き継がれておるがの」
「ここで体験していることですし、現実でも使う能力です。そのあたりはリンクしやすいでしょうな。あなたのパッシブスキルもアクティブスキルも現実で使えておかしくないと私は思いますが」
「ほほほ。さすがクリス殿。言うことがジャッジと似ておるの」
「My dear sonは同じ事を言いましたか」
「一言一句間違いなくじゃな。あ奴の場合は断言に近い状態で言って来たがの」
あ、イノセンツの情報交換にいらしたんですか。そう、セラフィムは思った。
「それにしてもLittle ladyはどちらへ?」
その言葉を受けて、一斉にディッチのほうを見た。
「……カナリア君はいとこたちとクエストに行ったようです。ただ、受注主ではないとのことです」
セバスチャンからの情報をあっさりとディッチが言う。
「いとこ、というとあの問題児の?」
「アレは違います。母方のです。今まで別ゲームを楽しんでいたため、こちらではあまり有名じゃないと思います」
「ほほう。あのポアロに連なる者たちか」
セラフィムの疑問は、クリスによって答えが出た。
ポアロ、といえば思い出す人物は二通りくらいに分かれるはずだ。
一人目はエルキュール・ポアロ。かの有名な推理小説作家の書いた作品の主人公である。そしてもう一人は、その名前からつけたという生粋の廃人プレイヤーだ。
昔は別の名前を使っていたというが、結婚後はずっとポアロで通しその妻がマープルという名前で有名である。これにも色々と噂があり、妻が推理小説大好き人間だったことが由来するとも言われている。
「知っておったか」
「Little ladyのことを調べた時に」
「それだけ分かっておればよい」
それ以上話すつもりはないらしく、クィーンはわざとらしく茶をすすっていた。
――限定クエストクリアしました。クエスト主はイッセン、メンバーはリリアーヌ、カナリアの計三名です。クエスト名は「オークゴブリン討伐」――
運営会社が変わったことにより、限定クエストクリアの際に「誰が・何を」クリアしたかというのがアナウンスされるようになった。
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