初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

翼竜を守るキングゴーレム2


 それを見ていたディッチは思わず苦笑する。
「カナリア君」
「ふぇ?」
「とりあえず、俺からのアドバイス。ここをクリアすると採取・採掘できる素材は、クリア前に採取・採掘するよりもかなり、、、質がいいし、量も多い。出来れば、カナリア君の持つLUK値はそこで使って欲しい。頑張って皆をサポートしてクリアしたご褒美だと思えばいい」
「ご褒美、ですか?」
「そう。それにレイドボスである翼竜を倒せれば、鱗も手に入る」
「鱗……」
 意識は討伐へ。ディッチは心の中でにやりと笑った。
 途中の採取・採掘は今回のようにギリギリでなければ確実にやっている。あえてそれは言わない。
「それにカナリア君はこのゲームをプレイして既に一年以上経っている。これからはもう少し色んなクエストに挑戦して、今以上に自分で欲しいアイテムを手に入れたほうがいい」
 己たちが甘やかしたせいか、カナリアは現状で満足しすぎだ。
 素材のためいいから、もう少し貪欲になって欲しいとディッチは思う。

「さて、レイドクリア目指すか」
 ディスカスがそう言い、ジャッジたちがすぐさま準備に入る。


 カナリアのタブレットの位置を、セバスチャンが微調整し始めた。そして、よく使うであろう魔法を、タブレットのトップに持ってくる。
「これで大丈夫かと。話を聞く限り、ステータスダウン系の魔法もあまり効かないようですので、それよりもステータスアップ系の魔法を味方にかけたほうがよろしいかと思います」
 今までカナリアがトップにおいていた、ステータスダウン系はあえてしまう。

 カナリアの準備が整うと、すぐにレイド戦へと突入していく。

「弱点魔法はありません! 弱点は斬撃と打撃!」
 セバスチャンの言葉に、すぐさまジャッジが武器を刀へとかえる。
「ミ・レディは前線にSTRとCRIUPの魔法を! そのあと全体にDEFとVITUPを!」
「はいっ!」
 パーティとしてそれなりの陣形はあるものの、混戦に近い。

 何せ、目の前にいるのはキングゴーレム二体だ。
 そのうちの一体をカナリアたちが担当している。

 ちなみに、カナリアの携帯はセバスチャンが持っている。ディッチとすぐに連絡を取れるようにするためである。

 イッセンたちはセバスチャンの動きに疑問を持っていなかったが、上位組はため息をついていた。
「どこまで規格外なAIなんだ」と。

 主がカナリアというある意味規格外なプレイヤーのせいか、セバスチャンも規格外に拍車がかかっているのだ。
「俺は楽でいいけど、そういう問題じゃないよな」
 ディッチの呟きに、ミントが頷く。
「セバスさんを基準にされちゃ、俺ら全員無能になっちゃうよ」
 いや、AIは皆優秀である。くどいようだが、セバスチャンが規格外なだけで。
「セバスがカナリア君のそばにいると、心労が減るよ」
 素材という誘惑に負ける確率が減るのだ。

 ここまでAIに頼りきりのレイドというのは、ディッチも初めてである。

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