初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

カナリア包囲網!?


 治療もひと段落して、再度「TabTapS!」にログインすると、喫茶店は以前以上ににぎわっていた。
 理由は日欧マナースクールが出来たことだと、ジャッジに聞かされた。
「マナースクール、ですか?」
「あぁ。入門編みたいなもんだが、どこぞのビジネスマナースクールよりも質がいい」
 しかも課金金額によって選べる内容も違うという。
「全部やるのは無理だろうな。砂○け婆様が師範を務めるのだけでも六つはある」
「え!?」
「ついでに、婆さんが薙刀を教えられるなら、講師に招きたいとか言ってたぞ」
 その言葉に、カナリアは開いた口がふさがらなかった。
「俺の方で打診してみたが、免状は持っていないからって断られた」
「お祖母ちゃんがそういう武器使えたことの方が驚きです」
 すでに交渉の終わったことだからこそ、こうやってカナリアに伝えることもできるのだろう。
「……私もマナースクールに通いたいです」
「砂○け婆さんに鍛えられているのに?」
 心底不思議そうにジャッジが言う。
「きちんと勉強した人とそうでない人には差があります! ユーリさんと私の動きを見ていれば違うことぐらい分かるはずです」
 ユーリはさすが上流階級出身、そう思える動きだ。それにクィーンの和装での動き。見様見真似ではたどり着けない。

 だったら、教えてくれるところに行くのが一番だ。……先立つものがないのが残念である。
 今だって皆におんぶにだっこ状態なのだ。
「……だそうだ。さすが陰険策士様」
 いつの間にか呼んでいたらしい。クィーンたちが背後に立っていた。


「問題ないよ。カナリア君に関しては投資みたいなもんだし」
「……投資、ですか?」
 楽しそうにディッチが言う。
「そう。投資。クィーン様のそばにいたいってことは、とある家に関わるってこと。とある家ってユーリの実家ね。で、そこでは幼少時から日欧のマナーは学んで当たり前のお家柄。そこまで言えばわかる?」
「……おばばさんと一緒にいるためには、最低でもここでやっている勉強をこなさなくてはいけないってことですか?」
 マナースクールでやっている内容をタブレットで確認したカナリアは、恐る恐る答えを出した。
「半分正解じゃ。全部やる必要はない。我も師範の免状を持っているのが少々、、ある故、それは現実で我が手ほどきをしておるであろう?」
 そう言って、不必要なものをクィーンがカナリアのタブレットから消していく。それでもかなりのものが残る。
「だと、別流派のこの辺りは省いて大丈夫だね」
 ディッチもユーリに教えられるままに消していく。
「それから、ユーリのおすすめはこれ。ユーリに教えてくれた人らしいよ」
 そう言いながら次は選択していく。
「あとは礼儀作法に関しては現実とゲーム両方でやってもらう故、このあたりじゃな」
 そこで初めて自分がゲーム内で学ぶべきものが明らかになる。そして金額を見て驚いた。
「……む、無理ですっ! 払えませ……」
「お主の養育にかかる金は我が出す故」
「おばばさん!?」
「我の話し相手になっている報酬だと思うがよい」
 それにしても多すぎる!! カナリアはそう思ったが、クィーンに言い含められた。


「あの陰険策士様、自分が養育したっていう実績作りやがって」
 蚊帳の外に置かれたジャッジが悔しそうに呟く。


 こうしてカナリアに対するクィーンの包囲網はしっかりと出来上がった。

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