ペンシルナイト

手頃羊

その2・競走用意

レンの手伝いを引き受けて共に目的の人物を探すが、一向に見つからない。

レン「……」

リュウ「……」

レン「……」

(気まずい!)
数時間ずっと無言である。

ブラック「あんたら、話でもしたらどうよ。」

(何の話したらいいんだよ!)

ブラック「ほらさー、いろいろあるでしょ?レンがどんな願いで来た〜とか、知りたくない?」
こちらの気持ちを察するようにアドバイスをしてくる。

(願い、か…確かに興味あるな。)

リュウ「レンってさ。」

レン「はい?」

リュウ「どんな願いでこんなところに来たの?」

レン「私ですか?そうですね…リュウさんってテレビとか見ます?」

リュウ「うーん、ニュースくらい?朝飯食う時とか晩飯食う時とかだけだけど。」

レン「じゃああたしの事やってるかな…あたし陸上やってたんです。」

リュウ「へぇ〜陸上!走る方?」

レン「はい。短距離です。」

リュウ「そりゃ足速いわけだ。」

レン「それで、全国大会とかにも出たりして、優勝したこともあるんです。」

リュウ「マジ⁉︎超すげぇじゃん‼︎」

ブラック「ガチの子かよ…」

レン「将来のオリンピック選手とかって期待されたり…」

リュウ「そりゃなぁ…全国大会優勝ってんならそりゃすごいさ。」

レン「でも、ちょっと練習でやらかしちゃいまして…」

リュウ「やらかす?」

レン「練習のし過ぎで、ある日足が動かなくなっちゃったんです。」

リュウ「足が?動かなく?」

レン「下半身がちょっとダメになったっていうか…治る見込み無し、だそうなんです。」

リュウ「そいつはお気の毒な…あ、ってことはもしかして願いって…」

レン「はい。『また走れるようになること』です。ただ走るだけなんですけど、それが大好きで、絶対にやめたくないんです。」

ブラック「陸上をやりたい、ってだけでこんな世界に来ちまうとは…よほど陸上を愛してるんだな。」

リュウ「すごいな…」

レン「リュウさんはどんな願いなんですか?」

リュウ「え゛っ」

ブラック「あぁ〜、中学生に聞かせる?」

レン「あたしが言ったんですから、次はリュウさんの番ですよ。」

リュウ「あぁ〜…うん。」



自分の願いのことを正直に話す。

レン「そんな…」

リュウ「だから、誠を生き返らせたいんだ。」

レン「…リュウさんの方がよっぽどすごいですよ。あたしなんか自分のことしか考えてない願いで…」

ブラック「あ〜あ、この展開は読めてた。」
自分を責め始めてしまった。

リュウ「別に悪くないよ。自分の願いなんだから正直にすれば。」

レン「ありがとうございます…」
だがまだ拗ね気味である。

レン「にしても羨ましいなぁ、兄弟。」

リュウ「やっぱり一人っ子ってそう思うんだ。」

レン「どうなんだろう。あたしは羨ましいって思う。あたしは妹が欲しいな。」

リュウ「妹か。」

レン「やっぱりお姉ちゃんすごい、って言われたいかなって。」

リュウ「へぇ〜。」

レン「それかお兄ちゃんが欲しいかも。」

リュウ「兄?」

レン「だってカッコいいじゃないですか!サッカーとか付き合ってくれそうだし。」

リュウ「カッコいい、かなぁ…」

レン「カッコいいって〜。って、あぁ‼︎」
突然大きな声を出す。

リュウ「どしたの?」

レン「あたしリュウさんにタメ口聞いちゃって…」

リュウ「別にいいよ。」

レン「そう…?じゃあタメ口でいい?」

リュウ「うん。」

レン「じゃあ…よろしくね、リュウさん!」

リュウ「お、おう!」
いじらしい会話をしている所に、突然声が響く。

男「オラァッ!」

男「ハァッ!」

レン「え?なになに?」

ブラック「どっかで戦闘中か。」

リュウ「誰かが戦ってるってか?マジかー。とりあえず逃げ」

レン「行こう!リュウさん!」
そう言って声のする方へと向かう。

リュウ「いっ⁉︎マジで⁉︎」

ブラック「あの子、あんたと真反対かもな。」



声のする場所へとたどり着くと、2人のゴツい体格の男が戦いを繰り広げていた。
片方はカッターを持ち振り回している。
もう片方は

リュウ「消しゴム⁉︎」

レン「消しゴムって武器なの⁉︎」
カッターを持った男の攻撃を、胴体ほどある特大の消しゴムで受け止め、蹴りで反撃している。

リュウ「意外と戦えてるなおい。」
落ち着いて2人の男をよく見る。

リュウ「カッターの方は、ありゃ外人か?」

レン「金髪だし、顔もそれっぽいよね。」

リュウ「んで消しゴムの方は日本人だろうな。」

レン「テレビで見たことあるかも。」

リュウ「マジ?」
と言われて男の顔をもう一度見る。

リュウ「あ〜言われてみれば。ニュースで見たかも。」
しかし喉の辺りまできて思い出せない。

消しゴム男「オラァッ‼︎」
カッターの攻撃を防いだカウンターで放った蹴りが顔面に入る。

カッター男「アウッ‼︎」
たまらず蹴られた側の男が逃げ出す。

レン「あ、逃げた!」

リュウ「すげぇ綺麗に入ったな…」

消しゴム男「待てこのやろ…ぐっ」
追いかけようとするが、その場に膝をつく。

リュウ「弱ってるのか?」

レン「チャンスなんじゃない?」

リュウ「チャンス?」

レン「今ならやれるよ?あの人。」
手には既にホッチキスの芯が握られている。

リュウ「ちょ、待て待て!話を聞こう!まず!」

レン「でも…」

リュウ「いいから!」

(こんな子でも、一応参加者ってわけかよ…)

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