ペンシルナイト
その2・善人、何を思う
しばらく走っていたが、すぐに疲れて立ち止まる。
リュウ「はぁっ…!はぁっ…!」
ブラック「体力ねぇ割には結構走ったな。」
いつの間にかすぐ横で壁にもたれかかっていた。
リュウ「ブラック…お前…」
ブラック「いや〜、うん。何やってんの、あんた。」
呆れ顔で睨んでくる。
リュウ「お前…さっきまでどこに…」
外人参加者が襲われていたあたりから姿を見かけなかった。
ブラック「案内人は参加者の邪魔にならないように、他の参加者と戦ってる時やそれに巻き込まれそうな時はだいたい姿を消してるのさ。近くで見守ってるだけ。」
リュウ「じゃあ見てたのか…」
ブラック「うん。見てた。」
リュウ「あの人…」
地面に座り込む。
リュウ「妹がいるって…」
ブラック「らしいな。」
リュウ「病気がひどいから、治したいって…」
ブラック「言ってたな。」
ブラック「で?」
リュウ「え?」
ブラックの怒ったような声に驚く。
ブラック「あんたさぁ、趣旨分かってる?」
座ったリュウに視線を合わせるように目の前でしゃがむ。
リュウ「趣旨?」
ブラック「自分の願いを叶えるために、他の参加者を殺すんだよ。何見逃してんの?ここ、そういうんじゃないんだけど。」
リュウ「だって、あんな願い持ってる人殺すのはマズイだろ‼︎妹さんの将来がかかってて」
ブラック「何がマズイんだ?あんたと似たような環境のやつに同情したのか?それとも、見逃したんだから自分も見逃されるべきって作戦だったのな?」
リュウ「は?」
表情まで怒っているようだった。
リュウ「何言ってんだよ…だって…」
ブラック「あの女の願いがどうとか、お前の願いがどうとか、そんなの関係ない。願いを叶えるには、殺すしかないんだよ。ここはな、厳しい世界なんだ。願いを叶えるには石が10個。手に入れる手段は、他の参加者を殺すこと。」
リュウ「理不尽だろ…こんなの…」
ブラック「見知らぬ誰かを助けて徳積み徳積みって…ちげぇよ。殺し合いなんだよ。覚悟してきたんじゃないのか?まぁ別にいいよ。死にたいなら今ここで自殺すればいい。あんたは死ぬが、弟は助かるぜ?その逆もな。」
リュウ「………」
何か言い返したいが、言い返すことができない。
ブラック「あの女だって分かってる。自分も妹も助かるには、こうするしかないって。自分は死んでもいいから妹助けたいってんなら、初めからやってるさ。それでも他のやつを殺そうとしてるのは、助かった妹と幸せな生活を夢見てるからだろうさ。あんたも、それぐらいは願ってたろ?」
リュウ「…」
ブラック「まぁ期間は長いし、その間現実の時間は一切進まない。ゆっくりやるんだな。まだまだ参加者は増えていく。チャンスなんていくらでも…」
男「うわああああああ‼︎」
リュウ「っ‼︎」
また叫び声が聞こえる。
リュウ「今のは⁉︎」
ブラック「また襲われてるやつがいるな。さっきの女…は違う方向だから別のやつか?」
遠くの方から2人の走ってくる男が見える。
片方は会社員のようなスーツ姿で、おそらく逃げている。
もう片方は、ラフな格好の中年だが大きな二本の何かを両手で振り回しながら走っている。
おそらく追いかけている側。
ブラック「あれは…追いかけっこか。」
リュウ「完全に一方的じゃんかよ…」
ブラック「あのおっさんが振り回してるのは…げっ!」
リュウ「なに?なんなの?」
ブラック「ありゃハサミだ。」
リュウ「ハサミィ⁉︎」
よく見ると、ハサミを2つに分解したものをそれぞれ片手に持って双剣のように振り回しながらスーツ姿の男を追いかけている。
スーツ男「ひいいいいいいいい‼︎」
ハサミ男「待たんかいこの雑魚野郎がぁ‼︎その首ちょんぎってやるあああ‼︎」
スーツ男「いやだあああああああ‼︎」
ブラック「あーあ、ありゃ無理だな。」
2人とも走る速度が同じなのか、距離が縮まりも離れもしない。
リュウ「無理って…」
ブラック「あのスーツの兄ちゃん、どっかで追いつかれる。」
スーツ姿の男がビルとビルの間の道に入っていく。
ブラック「あっ。」
リュウ「あっ?」
ブラック「あそこ、行き止まりだ。」
リュウ「行き止まり⁉︎」
ブラック「なんの文房具もらったかは知らんが、余程使いづらい文房具に当たったんだろうな。可哀想に。」
スーツ男が入っていった路地に向かって走っていく。
ブラック「あ、おい!リュウ!何してんだ!」
リュウ「見に行く‼︎」
ブラック「バカ!さっきの話聞いてたのか!アホ!」
●
路地を覗き込むと、やはりハサミ男がスーツ男を追い詰めていた。
ハサミ男「ひっひっひっ…」
いかにも悪者そうな笑い方で近づいていく。
スーツ男「あぁ…ぁぁぁ…」
ハサミ男「こんのクソガキが。手こずらせやがって。」
(何とかしてあの人助けないと…!)
ブラック「おいこのバカ童貞!」
追いかけてきたブラックに怒られる。
リュウ「ブラッ…おい童貞ってなんだ‼︎」
ブラック「静かに!見つかるぞ?」
リュウ「あ、あぁ。」
ブラック「何するつもりだ⁉︎」
リュウ「あの人を助けないと…」
ブラック「助けないと、だぁ?さっきの話分かってねぇのか!ここは、こういう世界なんだ!こうあるべきなんだよ!他のやつを押しのけてまで願いを叶える覚悟があるのかを見るのであって、他人を助ける優しさを求めてるわけじゃないんだよ!」
リュウ「でも…待って!」
ハサミ男「お前ら若い奴らが俺らから色んなモン取っていって…それでいて俺らの言うことは聞かない。ほんとに最近の若いのはクソガキだらけだ!」
ブラック「うわぁ…あれは…」
リュウ「俗にいう、老害ってやつだな。」
ハサミ男が座り込んでしまったスーツ男を何度も踏みつける。
ハサミ男「てめぇ!みてぇな!クソガキは!俺らの!言うこと聞いて!従ってりゃいいんだ!そうすりゃ失敗しない良い人生送れるってのに。俺の孫なんて、ミュージシャンになるっつって女も作らずにずぅぅぅぅっとギターかき鳴らして…もっとマシな人生送れってんだ‼︎」
ブラック「うっわ、あれはないわ…。」
リュウ「こればかりは、俺の甘えた考えも許してくれよ。」
ブラック「はぁ?」
ブラックがリュウの方を振り向く頃には、既にリュウは鉛筆を持って走っていた。
ブラック「あ、あいつ‼︎」
ハサミ男の後ろまで近づき、鉛筆でその背中を刺そうとする。
ハサミ男「ん?貴様⁉︎」
が、直前で気づいたハサミ男にハサミでガードされる。
リュウ「どけ‼︎」
ハサミ男を蹴り飛ばす。
リュウ「こっちだ!」
その隙に倒れていたスーツ男の手を取って逃げ去る。
ハサミ男「待て!待たんかこのクソガキ共が!」
リュウ「はぁっ…!はぁっ…!」
ブラック「体力ねぇ割には結構走ったな。」
いつの間にかすぐ横で壁にもたれかかっていた。
リュウ「ブラック…お前…」
ブラック「いや〜、うん。何やってんの、あんた。」
呆れ顔で睨んでくる。
リュウ「お前…さっきまでどこに…」
外人参加者が襲われていたあたりから姿を見かけなかった。
ブラック「案内人は参加者の邪魔にならないように、他の参加者と戦ってる時やそれに巻き込まれそうな時はだいたい姿を消してるのさ。近くで見守ってるだけ。」
リュウ「じゃあ見てたのか…」
ブラック「うん。見てた。」
リュウ「あの人…」
地面に座り込む。
リュウ「妹がいるって…」
ブラック「らしいな。」
リュウ「病気がひどいから、治したいって…」
ブラック「言ってたな。」
ブラック「で?」
リュウ「え?」
ブラックの怒ったような声に驚く。
ブラック「あんたさぁ、趣旨分かってる?」
座ったリュウに視線を合わせるように目の前でしゃがむ。
リュウ「趣旨?」
ブラック「自分の願いを叶えるために、他の参加者を殺すんだよ。何見逃してんの?ここ、そういうんじゃないんだけど。」
リュウ「だって、あんな願い持ってる人殺すのはマズイだろ‼︎妹さんの将来がかかってて」
ブラック「何がマズイんだ?あんたと似たような環境のやつに同情したのか?それとも、見逃したんだから自分も見逃されるべきって作戦だったのな?」
リュウ「は?」
表情まで怒っているようだった。
リュウ「何言ってんだよ…だって…」
ブラック「あの女の願いがどうとか、お前の願いがどうとか、そんなの関係ない。願いを叶えるには、殺すしかないんだよ。ここはな、厳しい世界なんだ。願いを叶えるには石が10個。手に入れる手段は、他の参加者を殺すこと。」
リュウ「理不尽だろ…こんなの…」
ブラック「見知らぬ誰かを助けて徳積み徳積みって…ちげぇよ。殺し合いなんだよ。覚悟してきたんじゃないのか?まぁ別にいいよ。死にたいなら今ここで自殺すればいい。あんたは死ぬが、弟は助かるぜ?その逆もな。」
リュウ「………」
何か言い返したいが、言い返すことができない。
ブラック「あの女だって分かってる。自分も妹も助かるには、こうするしかないって。自分は死んでもいいから妹助けたいってんなら、初めからやってるさ。それでも他のやつを殺そうとしてるのは、助かった妹と幸せな生活を夢見てるからだろうさ。あんたも、それぐらいは願ってたろ?」
リュウ「…」
ブラック「まぁ期間は長いし、その間現実の時間は一切進まない。ゆっくりやるんだな。まだまだ参加者は増えていく。チャンスなんていくらでも…」
男「うわああああああ‼︎」
リュウ「っ‼︎」
また叫び声が聞こえる。
リュウ「今のは⁉︎」
ブラック「また襲われてるやつがいるな。さっきの女…は違う方向だから別のやつか?」
遠くの方から2人の走ってくる男が見える。
片方は会社員のようなスーツ姿で、おそらく逃げている。
もう片方は、ラフな格好の中年だが大きな二本の何かを両手で振り回しながら走っている。
おそらく追いかけている側。
ブラック「あれは…追いかけっこか。」
リュウ「完全に一方的じゃんかよ…」
ブラック「あのおっさんが振り回してるのは…げっ!」
リュウ「なに?なんなの?」
ブラック「ありゃハサミだ。」
リュウ「ハサミィ⁉︎」
よく見ると、ハサミを2つに分解したものをそれぞれ片手に持って双剣のように振り回しながらスーツ姿の男を追いかけている。
スーツ男「ひいいいいいいいい‼︎」
ハサミ男「待たんかいこの雑魚野郎がぁ‼︎その首ちょんぎってやるあああ‼︎」
スーツ男「いやだあああああああ‼︎」
ブラック「あーあ、ありゃ無理だな。」
2人とも走る速度が同じなのか、距離が縮まりも離れもしない。
リュウ「無理って…」
ブラック「あのスーツの兄ちゃん、どっかで追いつかれる。」
スーツ姿の男がビルとビルの間の道に入っていく。
ブラック「あっ。」
リュウ「あっ?」
ブラック「あそこ、行き止まりだ。」
リュウ「行き止まり⁉︎」
ブラック「なんの文房具もらったかは知らんが、余程使いづらい文房具に当たったんだろうな。可哀想に。」
スーツ男が入っていった路地に向かって走っていく。
ブラック「あ、おい!リュウ!何してんだ!」
リュウ「見に行く‼︎」
ブラック「バカ!さっきの話聞いてたのか!アホ!」
●
路地を覗き込むと、やはりハサミ男がスーツ男を追い詰めていた。
ハサミ男「ひっひっひっ…」
いかにも悪者そうな笑い方で近づいていく。
スーツ男「あぁ…ぁぁぁ…」
ハサミ男「こんのクソガキが。手こずらせやがって。」
(何とかしてあの人助けないと…!)
ブラック「おいこのバカ童貞!」
追いかけてきたブラックに怒られる。
リュウ「ブラッ…おい童貞ってなんだ‼︎」
ブラック「静かに!見つかるぞ?」
リュウ「あ、あぁ。」
ブラック「何するつもりだ⁉︎」
リュウ「あの人を助けないと…」
ブラック「助けないと、だぁ?さっきの話分かってねぇのか!ここは、こういう世界なんだ!こうあるべきなんだよ!他のやつを押しのけてまで願いを叶える覚悟があるのかを見るのであって、他人を助ける優しさを求めてるわけじゃないんだよ!」
リュウ「でも…待って!」
ハサミ男「お前ら若い奴らが俺らから色んなモン取っていって…それでいて俺らの言うことは聞かない。ほんとに最近の若いのはクソガキだらけだ!」
ブラック「うわぁ…あれは…」
リュウ「俗にいう、老害ってやつだな。」
ハサミ男が座り込んでしまったスーツ男を何度も踏みつける。
ハサミ男「てめぇ!みてぇな!クソガキは!俺らの!言うこと聞いて!従ってりゃいいんだ!そうすりゃ失敗しない良い人生送れるってのに。俺の孫なんて、ミュージシャンになるっつって女も作らずにずぅぅぅぅっとギターかき鳴らして…もっとマシな人生送れってんだ‼︎」
ブラック「うっわ、あれはないわ…。」
リュウ「こればかりは、俺の甘えた考えも許してくれよ。」
ブラック「はぁ?」
ブラックがリュウの方を振り向く頃には、既にリュウは鉛筆を持って走っていた。
ブラック「あ、あいつ‼︎」
ハサミ男の後ろまで近づき、鉛筆でその背中を刺そうとする。
ハサミ男「ん?貴様⁉︎」
が、直前で気づいたハサミ男にハサミでガードされる。
リュウ「どけ‼︎」
ハサミ男を蹴り飛ばす。
リュウ「こっちだ!」
その隙に倒れていたスーツ男の手を取って逃げ去る。
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