ペンシルナイト

手頃羊

その1・start the game

リュウ「はぁっ‼︎」
目が醒めると、どこかの街の中にいた。

ブラック「日本エリアは2回目だけど、随分変わったなぁ。どこの県だここ。」

リュウ「えっと、何がどうなってんの?」

ブラック「ここが今回のペンシルナイト日本エリアのステージだ。多分、この市全体がステージだな。」

リュウ「市全体⁉︎広すぎだろ…」

ブラック「あんまり大声だすな。あたしら案内人はな、基本的に担当してる参加者以外には姿が見えないんだ。自分から姿を現す時以外はな。独り言叫んでるバカみたいに見えるぞ。」

リュウ「え?あ、おう…じゃなくて、市?」

ブラック「1000人が参加してるわけだしな。県じゃ広すぎるし、ナントカ町とかだけじゃ狭いし。市が1番良い感じだろ。」
辺りを見回す。

リュウ「駅があるってことは…駅前?しかもメチャクチャビル立ってんじゃん。」

ブラック「そうだな。駅前がこんなに賑わってるってことは東京か?」

リュウ「いや、東京はもっとすごい。見たことあるから分かる。」

ブラック「ふーん。まぁどこ県なんかはどうでもいいさ。歩いてりゃ分かる。」

リュウ「それよりも…」

ブラック「うん?」

リュウ「駅前なのに人…いなさすぎでしょ。」
自分達以外周りには誰もいない。

ブラック「ここは実際にある街を模倣した場所なんだよ。んで、参加者しかいない。」

リュウ「ってことは、出会った奴らは全員参加者なのか。」

ブラック「そう。一般人のフリして騙し討ちってのはできな」
その時、悲鳴が聞こえた。

男「Nooooo‼︎」

リュウ「っ⁉︎何今の⁉︎」

ブラック「多分、他の参加者だな。襲われてるんだろうよ。」

リュウ「もうやってんのかよ‼︎」

ブラック「あんたが来る2日前にはな。どうする?行くか?それとも逃げるか?」

リュウ「どうするって…」

ブラック「何があったか確認してみるのもいいぜ。他の参加者の文房具の能力を見とけば、何かの役に立つかもしれないしな。だが、誰かが襲われてるところに行くのは超危険だ。ついでにあんたも襲われるかもしれない。」

リュウ「………」
自分の鉛筆を見る。

リュウ「いざという時は逃げれるよな?これがありゃ。」

ブラック「さぁ?相手がそれをも上回るような奴だったらヤバイかもな。」

リュウ「うぅ…」

男「Shit! Shit!」

ブラック「声が近づいてきてるな。というか、日本エリアなのに日本人以外の参加者か。珍しい。」
目の前の曲がり角から男が現れた。
腕から血を流し、息を切らしながらこちらの方に走ってくる。

リュウ「え?ちょっと、待って!」
しかし、龍を通り過ぎてそのまま走り去ってしまった。

リュウ「え?え?」

ブラック「あんたなんかに構ってらんないほど逃げなきゃヤバイと思ったんじゃないのか?」

男「Shit…Shit…」
もう1人の男が曲がり角から現れた。
先ほどの男より怪我が多く、顔を押さえてフラフラしている。

男「Help…please…help…」

ブラック「こっちも他国からの参加者か。」

リュウ「何なんだ…?」
男の元へ走る。

ブラック「あ、おい!」

リュウ「大丈夫ですか?」
近づいて声をかける。

男「Huh…?Who are…you…?」

リュウ「えーとえーと、アーユーオールライト?」
英語で話しかけるが、片言になってしまう。

男「Help…help me…!」

リュウ「ヘルプって、とりあえずどっかに…」
男の手を取ると、押さえていた顔が露わになる。

リュウ「ん⁉︎なんだこれ⁉︎」
目の部分が真っ白な何かに覆われていた。

男「I can't…I can't see ! ミエナイ…!ナニモ…!タスケテ…!」
向こうも片言の日本語で話しかけてくる。

(この白いの、見たことあるぞ?えーと…)
考えていると、いつの間にか男の向こう側に人が立っていた。

リュウ「え?」
女性が片手に白い大きなボールペンのような物を持ち、もう片方の手にナイフを持ち、そのナイフを振り上げた状態で立っている。

リュウ「ちょ」
何か言う暇もなく、そのナイフが男の背中に振り下ろされる。

男「Aghhhhhhhhh!!」

リュウ「ひ、ひぃ‼︎」
女は何度もナイフを突き刺す。

リュウ「ちょっ、ちょ、待って!何して…」
男が完全に動かなくなると、男のすぐ横にビー玉のようなものが空中から現れて落ちた。

リュウ「あ、あれって…‼︎」
願いの石。

(ってことは、この石はこの男の…?)
女が願いの石に持ち上げると、光って消えた。
すると、今度は龍に振り向く。

リュウ「え?」

女「あなたも参加者なのよね。」

(やばい!)
声のトーンで殺意が溢れているのが分かる。

リュウ「待っ、ちょっ」
白いボールペンのような物を振り回す。
すると、そこから白い液体が飛び散って龍の元へと飛んでくる。

リュウ「うわわわわわ!」
間一髪避けて鉛筆を地面に突き立て、先ほどしたようにスライドして逃げる。

(わかった‼︎あの白いの修正液だ‼︎ボールペンタイプの修正液だ‼︎)
先ほど殺された男は、顔に修正液をかけられて目潰しをされたのだ。

(俺の鉛筆でさえ書いたところで何かできるわけだし、多分あの修正液に触れたらロクなことにならな…)
後ろを振り返ると、ナイフを構えた修正液女が走って追いかけてきていた。

リュウ「来てる‼︎」
修正ペンを銃のように構え、ペン先から修正液が飛ぶ。

リュウ「あぶね!」
顔面めがけて飛んできた白い弾丸を避ける。

リュウ「何とかして逃げないと…うわっ!」
地面を走らせていた鉛筆が何かに引っ掛かる。
急にブレーキをかけられたことで体が飛ばされ、地面を転がり回る。

リュウ「いってぇ…一体何が…」
地面に修正液の水たまりのようなものがある。

(まさかこれに引っかかって…いや、考えてる場合じゃない!)
鉛筆が少し離れたところまで飛んで行ってしまった。

リュウ「早く逃げないと…」
修正液女の方を見ると、ナイフを構えて走ってきている。
今から立って鉛筆を取りに行くのは間に合わない。

(反撃は…無理か?いや、まず逃げないと‼︎)
この一瞬の迷いが行動を遅らせる。
もう一度女の方を見ると、既に飛びかかってきていた。

リュウ「待て待て待て待て‼︎」
リュウの上に覆いかぶさり、左手で右手を押さえつけられる。
ナイフを持った女の右手が振り下ろされるのを、左手で何とか掴む。

リュウ「うおおおおおおお!」

女「ぐうううううう‼︎」
しかしナイフの先が少しずつ近づいてくる。

(やばいやばいやばいやばい‼︎)

リュウ「待って!ストップ!落ち着いて!」

女「死ねえええええ‼︎」

(ダメだ話し合い通じないやつだ!
ナイフが少しずつ左目に近づいてくる。

(だったら…一か八か‼︎)
ナイフを抑えている左手を離す。
ナイフが顔面めがけて落ちてくるのを、首を横に曲げて避ける。

リュウ「りゃあ‼︎」
素早く左手で女の首を殴る。

女「ぐえぇっ‼︎」
首を両手で抑えて苦しみ、体の上でうずくまる。

リュウ「えぇい‼︎」
女をどかして鉛筆を取る。
すぐに振り返ると、まだ苦しそうにうずくまっていた。

リュウ「動くな!」
鉛筆を女の後ろで構える。

リュウ「動いたら刺すぞ!」
動いたらいつでも刺せる体勢。
女も動かなくなる。

(有利⁉︎いやでも…こっからどうしよう…)

女「…殺さないの?」

リュウ「え?あ、あ〜…」

(いや、ここで殺さないって思われたら多分反撃してくるか?なんかいい時間稼ぎは…)

リュウ「…あんた、どんな願いがあってここに?」
とりあえず時間稼ぎをしながら考えをまとめる作戦。

女「それ知ってどうするつもりなの?」

リュウ「別に…ただどんな願いがあるのか聞きたいってだけだよ。」

女「……」
すると、目の前に光るビー玉のようなものが浮かんでいた。

リュウ「これは…願いの石?あんたの?」
ビー玉の中を見る。

リュウ「『桜の病気を…治す』?」

女「私の妹よ。」

リュウ「い…⁉︎」

女「生まれつき体が弱かったの。それなのにどんどん病気にかかって、今病院で治療中で、状況はどんどん悪くなっていってるって。」

リュウ「じゃああんたは…妹を助けるために…」

女「そうよ。」

リュウ「それって…そんなの…」
鉛筆を握っていた手が下がっていく。
手に全く力が入らない。

(こんな人が人を…ってか、こんな人を殺すなんて…)

リュウ「できるかよ…」

女「え?」

リュウ「やってらんねぇよ…なんなんだよちくしょう‼︎」
その場から逃げるように走る。

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