老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

306話 ダンジョン攻略へ向けて

 レンとナオはため息を吐きながら、目の前に並べられた簡易ベッドに横たわる男達を見下ろしている。
 医療用GUが甲斐甲斐しくユキムラ、カルラ、キーミッツ、デリカの世話して回っている。
 4人は「あ、頭が……」「き、きもてぃわるい……」「か、体の節々が……」「め、女神様……」
 と、口々にうわ言を垂れ流している。自業自得と言うしか無い。

「あら~まだ皆死んでるのー? 折角の休みなのに~」

 ヴァリィはタロと一緒に外の洞窟内露天風呂を楽しんできた。
 女性陣も少し離れた場所に露天風呂を作っていた。
 洞窟内にある大きな風呂というのもなかなかに趣がある。

「おばか達も結構イイコト思いつくわねー」

 辛辣なアリシアである。身内に対しての発言でユキムラは例外である。

「洞窟の中っていう雰囲気もいいですねー」

「浮いてる……」

 ナオの目はアリシアの前に浮かぶ2つの球体に釘付けだった。

「す、すごいわね……」

 ソーカは恐る恐るとその物体に触れる。

「な、なにこれ水の中で触れると滅茶苦茶柔らかい! 昨日と違う!」

 昨日も酔っ払って揉みしだいていたソーカだ。

「もー、ソーカ触りすぎ……ソーカのだってすっごいいい形で羨ましいー」

 お返しとばかりにソーカに触り返す。

「確かに、ソーカ様のも凄く綺麗……」

 ナオも一緒になって触っている。

「ちょっ、んっ、だめ……」

 悶えるソーカと二人の映像をメリアは、ほほう、これはこれはと眺めている。

 カオスである。

 こうして、夜通し語り尽くし、裸の付き合いを経た女性陣の結束は揺るぎないものへと変化していた。

 男達も裸で過ごし、ぶつかり合い深い友情で結ばれたが、少なくとも折角の休日は丸一日、酒の過ちを取り戻すために浪費されてしまった。


「今日から地上へ向けて進みます。というか戻ります。帰り道は構造は同じですが、敵の配置などは再配置されていると思いますので油断の無いように」

 昨日の醜態からきちんと回復するユキムラ達男性陣。
 しばらくは酒はいいやと思ってもまたやってしまう。男という生き物は本当に愛すべき馬鹿である。

 帰り道はそれぞれの階層に行きの段階で設定されたレベル帯のモンスターがリポップするので、上に行くほど戦闘としては楽になっていく。
 道がわかっていることによって、最短ルートを進むためにスムーズに帰還を図れる。
 6日間で進んだ道のりをわずか2日で帰還することが出来た。

「お疲れ様ー!」

 地上で待っている人間からすれば約半日で帰ってきたことになる。
 凄まじい速度での育成を可能にするこの時間のズレは、白狼隊や魔神と戦う事になる人々にとって非常に重要な事だ。
 あのダンジョンへは白狼隊メンバーとパーティを組まないと入れないので、最大で5パーティ、55名の育成を可能にする。

「とりあえず今回参加メンバーは3日はしっかりと休息を取ってくださいね。それでは解散」

 白狼隊は明日からローテーションで育成と商会運営を行っていく。
 大きなイベントをしっかりと終えられた安堵感が白狼隊を包む。

「アリシアさんと随分仲良くなってくれたみたいで良かったよ」

「はい、とても有意義な訓練になりました」

「今日は、このメンバーで打ち上げしようか」

「飲みすぎないでくださいね師匠」

「さ、さすがに懲りたよ、し、しばらくは自重します」

「今日の夜に同じこと言えてるといいわねーユキムラちゃん」

「もう、ヴァリィまで茶化さないでよ」

 白狼隊の日々はこうして過ぎていく、ユキムラによる各街のクエスト攻略が済んだ頃、ケラリス神国に降り立って1年半が経過していた。





「よし、明日の遠征でダンジョンの最深部攻略を目指そう」

「わかりました、アリシアさんたちにも通達しておきます」

「5年ギリギリまで引っ張るのかと思ったわ。一応理由も聞いておこうかなー?」

「あんまり深い理由はないんだけど、強いて言えば今のダンジョンの次があったら嫌だな。ってのが大きな理由で、もう一つは、想像以上に皆が成長してくれたからだね」

「確かに、アリシアを始め大司教さん達や聖騎士さんとか……やり過ぎ……気味……?」

「そうなんだよねぇ……」

 毎度のことだが、やり過ぎている。
 各都市に女神の壁も設置し、GUも元気に稼働している。
 戦闘員もフィールドに発生する悪霊達なんて鼻歌交じりでやっつけられる。
 サナダ商会の魔導具も人々の暮らしを豊かにして、スキルの恩恵も計り知れない。
 世界が笑顔に包まれた。完。となるくらいに生活に変化を起こしていた。

「いろいろあるけど、問題なければその方向で行きたい」

「こちらは問題ありません師匠」

「ユキムラさんに異存ありません」

「問題無しよー」

「ワン!」

 レンは迅速に教団側と連絡を取ってユキムラの意向を伝える。
 教団側としても特に異論はない、与えられた恩は計り知れない。
 異を唱えることなどあろうはずもない。

「しばらくアリシアとも離れ離れかぁ……」

「まだわからないけど、でも。次は肩を並べて、本当の仲間として巨悪と戦うことになるだろうね。
 それが終われば……、も、もうちょっとやることはあるけど、この世界でじっくりとやりたい放題できる!」

 長かった各国を巡る冒険も、間もなく終りが見えてきている。
 その先に待つ戦い、そして、この世界の命数を駆けた戦いの気配は、確実に近づいてきていた。
 

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