老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

279話 中途半端な決意

 ユキムラは反省していた。
 あまり人に注目されるのも持ち上げるのも苦手なくせに、ついつい物事に没頭して、明らかなオーバースペックなものを作り出して、それを人に見せたくなる自分の性格を……
 今回の騒動もそうだ。
 GUなんて普通に考えれば異常な代物だ。
 それをあまり深くも考えずにポンポン取り出してしまった。
 始めゴーレムが襲ってきたと他の巡礼者のパーティは大騒ぎになってしまった。
 ユキムラ達の手によるゴーレムだと説明してなんとか収まるも、どこから出したかという当たり前の疑問になり、マジックボックスからと説明すればこんな巨大な物が収まるほどのマジックボックスを持つのかとまた大騒ぎに、結局は来訪者であることを明かして収拾がついた。

「変に隠そうとするから無駄な労力がかかるのかなぁ……」

「僕も何も言えません……自重してるつもりだったのですが……」

「世間とズレ過ぎているし、そのズレの中にいるから気が付かないんですよね……」

「ユキムラちゃん、諦めて特異な目で見られることを受け入れるしかないわよ……」

 大反省会。

「俺が中途半端な覚悟でやってるからダメなんだよな。
 やってることめちゃくちゃなのに、目立ちたくないってのが土台無理な話なんだ……」

「「「……気がついてたんだ……」」」

 3人がはもる。

「でも師匠! この国が終われば全大陸で白狼隊式訓練の実施と、サナダ商会による魔道具の供給で目立たなくなりますよ!」

「おお! そうだよね! そしたらさっさとこの大陸もクリアしたほうがいいよね!」

「そうですよユキムラさん! 美味しいもの食べながらサクッと終わらせましょう!」

「そうよー、この後にもたくさん戦いは控えてるでしょうし!
 一時の恥は甘受しましょう!」

「よし! 決めたぞー! 自重はほどほどでガンガン行くぞー!」

 夜の反省会は反省しない、自重しないというなんだかなーという結論で終了する。

「では、さっそく」

 ユキムラは外に出てあいていた一画にコテージを展開する。
 タロ号を変形させても良かったが、手っ取り早かったので……

「えへへー。これでお風呂に入れますー」

 実はお風呂のない野宿は少し嫌だったソーカは、ニコニコしている。
 レンやヴァリィだって、テントで寝るのも平気だが、そりゃフカフカのベッドの方が有り難い。

「そしたら皆さんに説明してきますねー」

 レンとヴァリィで翌朝パニックにならないように説明に行く。
 迷惑にならない程度の食料と酒の差し入れ(賄賂)も忘れない。
 それでも朝は少しざわついた。
 鍛錬を終えて全員分の朝食を用意しておいて口封じをしたりと、レンによる単純な調略が行われていく。
 ふわふわの焼きたてのような香ばしいパンの香り。
 今まさに火から挙げられた、野菜と鶏肉がたっぷりとはいったスープがほかほかと湯気をあげている。
 旅では貴重品の卵をふんだんに使ったスクランブルエッグ、それに特大のソーセージ。
 胃袋をつかむことは人間を掌握することだ。
 旅路では味わうことの出来ない料理の魅力に逆らえる人間はいなかった……
 別になにか悪いこと企むわけでもなのだが。

「いやー、なんかお騒がせしてしまって申し訳ないです」

「こちらこそ、このような食事は久しぶりに食べました。いやー、旨い!」

「逆に何か申し訳ないなぁ……昨日からお世話になりっぱなしで」

「これも神の思し召しですので、お気になりませんように」

「今日も神への感謝を忘れないようにしましょう!」

 困ったらアルテス様の思し召しにしておけばいいのだ。
 来訪者って言えば大体の細かな問題はクリアなのだ。

 他の巡礼者達は笑顔で手を振りながら白狼隊を送り出してくれる。
 タロに少しスピードを上げてタロ号を操ってもらう。
 荒れた山道、林道を滑るように疾走るタロ号は異質かもしれないが、もういい。

「でも流石に他の人もそれなりにいるし、細い道だから本気出せないからもどかしいね」

「空でも飛びますか?」

「視覚阻害魔法かけて飛ぶのも手かぁ……」

 すでに飛ぶことに誰も苦言も呈さない。
 流石にそれはとヴァリィが止めた。最後の良心である。
 VOにおいて空をとぶことは飛空艇と気球が存在する。
 小型の飛行装置は作っても地上を進む馬車の別スキンのような扱いになる。
 この世界ではきちんと空を飛び回ることが出来る。
 これは凄いことでもあるが、ユキムラは危惧していたことがある。
 戦闘エリアを空中まで考えると対応が難しいことだ。
 以前にも風竜との戦闘で空中を自由に使われて非常に厄介だった。
 そこで、すでにユキムラは対策を考えていたりする。
 来るべき魔王との戦い、魔人との戦いで、空中からの利を簡単に相手に渡さない。
 先のことも見据えて開発をしているユキムラであった。
 開発が楽しくて、なんとなく案を形にしたら思いのほかいいものができた。
 そういう一面があることは否定できない。
 その利を逆に敵に対して使う方法もいくつか用意している。
 ユキムラ達相手ならば、空を飛べるのはプラスにならない。
 空を飛べないことがマイナスであるだけだった。

「でも、流石に飛ぶのは止めません?」

「そうだよねー、ははは」

 最近ではソーカが常識的な提案をして皆を踏みとどまらせている。
 タロも俯瞰目線を持っているので、なるべく早く、他の人に迷惑をかけないように進む。
 結局落ち着く方法に落ち着いて行くのでありました。








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