老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

262話 オトハの実力

 いくつもの大きな山々が連なり巨大な山脈を作り上げている。
 その中でもひときわ大きな山が龍の巣と呼ばれる山。
 上空には龍の巨体がまるで鳥のように小さく見える。
 そしていくつもの影が接近してきた白狼隊を警戒するかのように旋回している。
 その遠近法だけでも山の巨大さが計り知れる。

「ほう、ここがその入口というやつか、なるほど妙な、しかし懐かしい気配を感じるな」

 オトハはダンジョンの入口部分のゆらぎを興味深そうに眺めている。
 他のメンバーよりもその境目をはっきりと認識できているようだ。

「今日はお試しなので一階層だけ、むしろオトハ様の実力を把握するのが目的です。
 皆さんはお貸しした武具をしっかりと身につけて防御に徹してくださいね。
 オトハ様は俺たち白狼隊がお守りいたしますから安心してください」

「ユキムラ殿、申し訳ないがお頼み申す。
 いざとなればこのケイジ生ける壁として皆の前に立ちますゆえ」

「大丈夫ですよ。武具の性能はケイジ殿も確かめたでしょう? 
 ユキムラ殿に任せましょう」

 ソーシとケイジはユキムラ達が用意した武具の性能をまざまざと見せつけられている。
 それでもオトハが心配でしょうがないケイジであった。

「ケイジよワシの武勇をとくと見よ!」

「それじゃぁダンジョン開きますので突入しましょう」

 ユキムラはマイペースにダンジョン内へ侵入する。
 メンバーは白狼隊5人、白狼隊隊員3人、オトハ、ケイジ、ソーシ、親衛隊隊長の12名のフルメンバーだ。
 龍の巣ダンジョン内部はゴツゴツとした岩場がむき出しの山道になっている。
 足場だけは周囲からすると不自然なほど整備されているために戦闘時にはありがたい。
 山道も幅広く戦闘時にも問題のない広さが確保されている、こういうところは実際の山登りよりも遥かに優遇されるのはユキムラのユニークスキルと言ってもいい、ダンジョン作成とかね。
 リアルの方の龍の巣は所々で山の内部への洞窟などを突破しながら細い山道を上空から襲ってくる龍の相手をしながら踏破せねばならないと言う非常に、とても過酷なダンジョンとなっている。
 しかし、ドラゴンと同じく龍は宝を集める習性があるためギャンブル的な実入りが良いため、上級冒険者は夢を見てこのダンジョンに吸い込まれていく。
 帰ってこない者も非常に多い……

「これが……話には聞いていましたが、全く別の場所ですね……」

 ソーシの感想がその事実を裏付けする。
 以前挑んだ現実世界での龍の巣とここは別の空間なのだ。

「さっそく敵が来ますね。それではオトハ様、お手並み拝見です」

「おお、ユキムラもお主らも見ておれー!」

 オトハはユキムラに与えられた勝利者の手甲と不退転の衣に身を包みぐるんぐるん腕を回して準備は万全だ。
 もちろん全員の装備が龍特攻装備で固められている。
 今、襲い掛かってきている集団も地走り蜥蜴、龍戦士、龍狩人、龍術師と全てドラゴン、竜系の魔物だ。
 龍人系魔物は高い知識を持っている。
 パーティとしてのコンビネーションもきっちり取ってくるし、魔法も使用する。
 龍気と言われる武闘系スキルも多用して来るために非常に強敵と言っていい。
 きちんとした対策をして利点を潰しても十二分に強い。それがドラゴンであり龍だ。

「よーし行くのじゃ!」

 先頭を先行して突っ込んできた蜥蜴にオトハが飛びかかる、まずは白狼隊メンバー+オトハで戦う。
 通路などの地形を利用して最初の蜥蜴が戦闘範囲に入り込んだ時点で後続部隊との切り離しを画策する。設置型魔法壁などでオトハと蜥蜴の1対1の状況を作り出し、レンとヴァリィが後続部隊とじゃれ合ってもらっておく。
 ソーシやケイジにとっては猛攻というしかない攻撃を鼻歌交じりで捌き続けるヴァリィ達。
 戦場のコントロールをいとも簡単に行う白狼隊の手腕に舌を巻いてしまう。
 白狼隊隊士たちも改めて見るメンバーの鮮やかな手際に感心しっぱなしだ。

「ちょっとユキムラ! この蜥蜴やけに強いんじゃが!?」

「そりゃそうですよ、多分レベルは1500くらいありますよ?」

「な、なんじゃとー!? い、いくらワシでもそんな魔物見たこと無いぞ?」

「あれ、言いませんでしたっけ? まぁ、装備はしっかりしてますからそこまでダメージ通りませんよ。
 無理なら言ってくださいね、助けますから」

「ぬぬぬ、ワシのレベルは普通の人間と別世界だから余裕ぶってたのに……どうなってるんじゃ……」

 口では弱気なことを言いながらも、オトハは見事な体捌きと神道術を駆使して蜥蜴を翻弄している。

「確かに見事な動きですねオトハ様」

「は、話しかけるでない! ワシは必死なんじゃ!」

 のしかかってくる蜥蜴を見事に引きずり落とし込みそのまま腕を捻りこむ、ベキリと嫌な音がする。
 投げ飛ばされ立ち上がる蜥蜴は3本足でズリズリと痛めた脚を引きずっている。
 こういった状態変化はゲームだとアイコンが出るだけだが、リアルだとそれはもう痛々しい。
 後続に治療ができるメンバーもいるが、すでにヴァリィとタロが遊び半分に他のメンバーへの戦術指導がてら殲滅してしまっている。
 ケイジとソーシは驚いていた。
 白狼隊の超越した戦闘能力や、この場に現れる魔物の強力さもそうだが、オトハの戦う姿に唖然とした。
 守るべき、保護すべき対象と信じてやまなかったオトハは、自分たちとは次元の違う技術、能力で戦闘を行っているのだ。

「あれが……オトハ様のお力……」

「正直……狐につままれているような気分だ……」

 四肢を折られながらも果敢に襲い掛かってくる蜥蜴の首を決めて戦闘は終了した。

「オトハ様、たしかに素晴らしい技量ですね。
 闘い方も冷静沈着で相手の力を削ぐすべもご理解なされている。
 すみません、正直すぐに助けが必要だと思ってました。謝ります」

「ゼェゼェ……、そ、そうじゃろ……ワシは……はぁ、やると、言ったじゃろ……?」

 蜥蜴一体で疲労困憊といった感じだが、見事、無傷での勝利を収めた。

「そしたら、親衛隊隊長さん、ソーシさん、ケイジさんも交えてドンドン行きましょうか!」

 ユキムラがとっても素敵な笑顔で皆に笑いかける。
 白狼隊や知っているメンツからするとその美しい笑顔は地獄の微笑みに見えるという……

 スパルタが、始まる。
 

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