老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
184話 食事会と師弟
シズイルの街はフィリポネア共和国の中で最も北に位置しており、南国風土であるこの国においてどちらかと言えばプラネテル王国に近い気候をしている。
また文化として多くのものがプラネテル王国から到来するために二つの国の文化が混じり合ったような文化になっている。
食事に関してもさっぱりとした王国風料理とスパイシーな共和国料理のいいとこ取りのような感じだ。
「魚介だけではなく肉料理も発達しています。
肉料理にもスパイシーな味付けは大変相性がいいですからね」
料理人たちが簡単な解説をしてくれながら食卓に料理を並べていく。
プロの料理人が作る見た目にも美味しい料理たち。
テーブルに並べられていくだけで皆の心を楽しませてくれる。
「うちの自慢のシェフによる料理、是非楽しんでいってください。
サナダ白狼隊との出会いに、乾杯!」
ワインをつがれたグラスを掲げハルッセンが乾杯の音頭を取る。
琥珀色のワインは葡萄の瑞々しさがしっかりと残っていてまだ若いが、さっぱりとした味わいが料理との相性がよくとても美味しい物であった。
料理は見た目に負けない美味揃いで、ユキムラは料理人に材料や作り方を熱心に聞いていた。
ソーカの前の料理が恐ろしいスピードで消えていくので給仕の人間は大忙しだ。
「ユキムラ殿は料理をされるのか?」
「ええ、来訪者としてこの世界に来てから料理というものにすっかりハマりまして……」
「ほほう、来訪者の方の料理は大変興味がありますね」
今、話を聞いていたコック長が興味を示してくる。
色々とお話を伺えたお礼に、と、こっちの世界では特に珍しい、港町であっても、生の魚を利用した刺し身と寿司をアイテムボックスから取り出す。
「刺し身と寿司という食べ物です。生の魚を利用したものですから新鮮な魚を手早く調理するのが大事です。また寄生虫などもいる可能性があるので特殊なスキルで調理することをおすすめいたします。
食べる時はこちらの醤油というソースをつけて召し上がってください」
「生の魚……食べたことがないわけではないが……」
恐る恐るコック長もハルッセンも食す。一口食べればこの料理の単純にして奥深さの虜になる。
「これは、ユキムラ殿この調理法を教えていただけないか!?
この街の特産を利用できて完全に新しいこの味わい! 素晴らしい!」
「確かに、美味しい……食べたことないわ……」
二人共たいそう気に入ってくれた。
ユキムラはスキルに関する注意と普通の調理法での危険性、完成後の扱い、保存ができるものではないことを注意深く説明して調理スキルを発現させる手伝いをすることを約束する。
他にも来訪者としてのスキル発現をハルッセンに協力することを約束して、サナダ商会でのスキル講義に人を派遣してくれる約束を取り付ける。
そんな話をしていると食事は全てソーカに吸い込まれ食事会はお開きとなる。
食後にはデザートと紅茶が用意された。
ソーカはベツバラという呪文を唱えて各種ケーキを堪能している。
「チョコレート、コーヒー……いろいろなものがあるのですね……」
南国の果実であるカカオやコーヒーの木の利用法など、この世界ではまだ有効に利用されていないものたちの新しい利用法をユキムラから聞いてハルッセンは唸るしかない。
サナダ商会がこれからこの街、この国にどれだけの利益を与えてくれるのか想像もつかなかった。
閉塞され停滞していたような世界を壊してくれる。そういうスケールの人間だとハルッセンは直感した。
「今日は驚きすぎました。皆さんお酒は飲まれる方ですか?」
「たしなむ程度ですが」
「恥ずかしながら私は結構好きな方なの、よかったらご一緒にいかがですか?」
「それでしたら、こちらも、もしお口に合えば」
「あら、アレ出すのそれなら私も頂きたいわぁ~」
ユキムラが取り出したのは改良作業中のウイスキーとブランデーだ。
まだこの世界では一般的ではない蒸留酒だ。
しかもスキルを利用すると年単位経過したものが時間軸を無視して作れる。ずるい。
琥珀色の液体をワイングラスに少量注ぎテイスティングしてもらう。
「きれいな色、それに素敵な香り」
「ウイスキーは穀物が原料です。ブランデーはワインと同じ葡萄、リンゴを利用した物もあります」
「凄い、こんなに深くて香り高いお酒は初めて。とても美味しいですね」
「あらー、また美味しくなってるわぁ……」
「こっちのグラスのほうがいいかもしれませんね」
ユキムラはロックグラスを取り出す。
グラスによって味わいが変わるのもお酒の不思議で魅力的なところだ。
その後3人は味の感想を交わしながら、少々、いや、だいぶ飲みすぎた。
「も、もう限界……先に失礼します……」
「今日は楽しかったわ、もう少しヴァリィさんと飲みますね」
「ユキムラちゃん先に戻っててー、レンちゃんよろしくねー」
大人な二人はザルだった。
ユキムラはレンとソーカに運ばれて宿へと帰る。
ソーカは食事に甘味と十分すぎるほど食べて大満足だった。
「師匠ちゃんと歩いてくださいよー」
「ふ、二人に合わせてたら、の、飲みすぎた……」
「解毒魔法かけときますよ、ポーション飲んで休んでくださいねー」
「それじゃぁレン、ユキムラさん頼むね」
ソーカは満腹感による睡魔に勝てず商会へ戻るなりすぐにシャワーを浴びて眠りについてしまった。
「まったく……師匠、飲んどくと変わりますからちゃんと飲んでください!
ってちゃんと座ってください、って、師匠ここで寝ちゃ駄目ですよ!!」
「うーレンー……着替えさせてくれー……」
「しっかりしてくださいよぉ師匠ー」
結局ユキムラを着替えさせてポーション飲ませて顔を拭かせてベッドに寝かせてと全部やる羽目になってしまうレン。
ぐだぐだと喋るユキムラを寝かしつけ自身もシャワーを浴びて、念のためにもう一度ユキムラの様子を見に行く。
すやすやと寝息を立てているユキムラの姿に安心して帰ろうとすると寝間着の裾を掴まれて引き込まれてしまう。
「ちょ、師匠離してくださいよー」
「なんだよー、たまにはいいだろー昔はよく寝てたろー、タロー! タロもおいで~」
自分のベッドで寝ていたタロも尻尾を振りながらベッドに上がってくる。
「最近ずっと動きっぱなしだし、たまにはこういう時間もいいだろー」
「まぁ、忙しいですもんね最近。わかりました。師匠もう酔いも冷めてるんだから酔ったふりしなくてもいいですよ」
「バレたか」
タロは二人の間で嬉しそうに横になっている。
  レンは思っていた、自分にタロのような尻尾がついていなくてよかった。もしついていたらいまのタロの何倍もぶるんぶるんと振ってしまっていただろうからと……
レンとユキムラは夜遅くまで昔の思い出やこれからのことを話す。
久しぶりに師弟水入らずのゆったりとした時間を過ごすことが出来た。
また文化として多くのものがプラネテル王国から到来するために二つの国の文化が混じり合ったような文化になっている。
食事に関してもさっぱりとした王国風料理とスパイシーな共和国料理のいいとこ取りのような感じだ。
「魚介だけではなく肉料理も発達しています。
肉料理にもスパイシーな味付けは大変相性がいいですからね」
料理人たちが簡単な解説をしてくれながら食卓に料理を並べていく。
プロの料理人が作る見た目にも美味しい料理たち。
テーブルに並べられていくだけで皆の心を楽しませてくれる。
「うちの自慢のシェフによる料理、是非楽しんでいってください。
サナダ白狼隊との出会いに、乾杯!」
ワインをつがれたグラスを掲げハルッセンが乾杯の音頭を取る。
琥珀色のワインは葡萄の瑞々しさがしっかりと残っていてまだ若いが、さっぱりとした味わいが料理との相性がよくとても美味しい物であった。
料理は見た目に負けない美味揃いで、ユキムラは料理人に材料や作り方を熱心に聞いていた。
ソーカの前の料理が恐ろしいスピードで消えていくので給仕の人間は大忙しだ。
「ユキムラ殿は料理をされるのか?」
「ええ、来訪者としてこの世界に来てから料理というものにすっかりハマりまして……」
「ほほう、来訪者の方の料理は大変興味がありますね」
今、話を聞いていたコック長が興味を示してくる。
色々とお話を伺えたお礼に、と、こっちの世界では特に珍しい、港町であっても、生の魚を利用した刺し身と寿司をアイテムボックスから取り出す。
「刺し身と寿司という食べ物です。生の魚を利用したものですから新鮮な魚を手早く調理するのが大事です。また寄生虫などもいる可能性があるので特殊なスキルで調理することをおすすめいたします。
食べる時はこちらの醤油というソースをつけて召し上がってください」
「生の魚……食べたことがないわけではないが……」
恐る恐るコック長もハルッセンも食す。一口食べればこの料理の単純にして奥深さの虜になる。
「これは、ユキムラ殿この調理法を教えていただけないか!?
この街の特産を利用できて完全に新しいこの味わい! 素晴らしい!」
「確かに、美味しい……食べたことないわ……」
二人共たいそう気に入ってくれた。
ユキムラはスキルに関する注意と普通の調理法での危険性、完成後の扱い、保存ができるものではないことを注意深く説明して調理スキルを発現させる手伝いをすることを約束する。
他にも来訪者としてのスキル発現をハルッセンに協力することを約束して、サナダ商会でのスキル講義に人を派遣してくれる約束を取り付ける。
そんな話をしていると食事は全てソーカに吸い込まれ食事会はお開きとなる。
食後にはデザートと紅茶が用意された。
ソーカはベツバラという呪文を唱えて各種ケーキを堪能している。
「チョコレート、コーヒー……いろいろなものがあるのですね……」
南国の果実であるカカオやコーヒーの木の利用法など、この世界ではまだ有効に利用されていないものたちの新しい利用法をユキムラから聞いてハルッセンは唸るしかない。
サナダ商会がこれからこの街、この国にどれだけの利益を与えてくれるのか想像もつかなかった。
閉塞され停滞していたような世界を壊してくれる。そういうスケールの人間だとハルッセンは直感した。
「今日は驚きすぎました。皆さんお酒は飲まれる方ですか?」
「たしなむ程度ですが」
「恥ずかしながら私は結構好きな方なの、よかったらご一緒にいかがですか?」
「それでしたら、こちらも、もしお口に合えば」
「あら、アレ出すのそれなら私も頂きたいわぁ~」
ユキムラが取り出したのは改良作業中のウイスキーとブランデーだ。
まだこの世界では一般的ではない蒸留酒だ。
しかもスキルを利用すると年単位経過したものが時間軸を無視して作れる。ずるい。
琥珀色の液体をワイングラスに少量注ぎテイスティングしてもらう。
「きれいな色、それに素敵な香り」
「ウイスキーは穀物が原料です。ブランデーはワインと同じ葡萄、リンゴを利用した物もあります」
「凄い、こんなに深くて香り高いお酒は初めて。とても美味しいですね」
「あらー、また美味しくなってるわぁ……」
「こっちのグラスのほうがいいかもしれませんね」
ユキムラはロックグラスを取り出す。
グラスによって味わいが変わるのもお酒の不思議で魅力的なところだ。
その後3人は味の感想を交わしながら、少々、いや、だいぶ飲みすぎた。
「も、もう限界……先に失礼します……」
「今日は楽しかったわ、もう少しヴァリィさんと飲みますね」
「ユキムラちゃん先に戻っててー、レンちゃんよろしくねー」
大人な二人はザルだった。
ユキムラはレンとソーカに運ばれて宿へと帰る。
ソーカは食事に甘味と十分すぎるほど食べて大満足だった。
「師匠ちゃんと歩いてくださいよー」
「ふ、二人に合わせてたら、の、飲みすぎた……」
「解毒魔法かけときますよ、ポーション飲んで休んでくださいねー」
「それじゃぁレン、ユキムラさん頼むね」
ソーカは満腹感による睡魔に勝てず商会へ戻るなりすぐにシャワーを浴びて眠りについてしまった。
「まったく……師匠、飲んどくと変わりますからちゃんと飲んでください!
ってちゃんと座ってください、って、師匠ここで寝ちゃ駄目ですよ!!」
「うーレンー……着替えさせてくれー……」
「しっかりしてくださいよぉ師匠ー」
結局ユキムラを着替えさせてポーション飲ませて顔を拭かせてベッドに寝かせてと全部やる羽目になってしまうレン。
ぐだぐだと喋るユキムラを寝かしつけ自身もシャワーを浴びて、念のためにもう一度ユキムラの様子を見に行く。
すやすやと寝息を立てているユキムラの姿に安心して帰ろうとすると寝間着の裾を掴まれて引き込まれてしまう。
「ちょ、師匠離してくださいよー」
「なんだよー、たまにはいいだろー昔はよく寝てたろー、タロー! タロもおいで~」
自分のベッドで寝ていたタロも尻尾を振りながらベッドに上がってくる。
「最近ずっと動きっぱなしだし、たまにはこういう時間もいいだろー」
「まぁ、忙しいですもんね最近。わかりました。師匠もう酔いも冷めてるんだから酔ったふりしなくてもいいですよ」
「バレたか」
タロは二人の間で嬉しそうに横になっている。
  レンは思っていた、自分にタロのような尻尾がついていなくてよかった。もしついていたらいまのタロの何倍もぶるんぶるんと振ってしまっていただろうからと……
レンとユキムラは夜遅くまで昔の思い出やこれからのことを話す。
久しぶりに師弟水入らずのゆったりとした時間を過ごすことが出来た。
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