老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
180話 女領主
「だ、大丈夫ですか皆さん?」
ぐったりしたソーカをレンが、少しふらついているユキムラをヴァリィが支えながら馬車から降りる。
タロは優しい光を放ちながら皆にスリスリして回復させている。
その甲斐もあって短時間で回復できた。
レンやユキムラの使う回復魔法はどうにも車酔いみたいな微妙なものに対して効果が薄い。
タロの放つそれは暖かくメンバーを包み込み気分が回復する。
ユキムラも知らない技法だが、さすがタロと気にする様子はない。
「タローありがとー」
ソーカがタロに抱きついて全身を撫でくりまわしている。
タロは大好きなソーカに撫でられて上機嫌だ。
「すみません、見苦しいところを……」
レンがとりあえず領主の館の人と話をつけていてくれている。
別に今回の馬車が特別悪いものではない。これがこの世界でも上の下くらいの馬車なのだ。
ユキムラ達の乗っているものがあまりにも規格外すぎるだけだ。
「これは、なんとかしておかないと危険かもね、座布団式のショックアブソーバーでも作るか……」
また、なんだか無駄な発明をユキムラが思いついているあたりで面会の場へと呼ばれる。
「はじめまして。私がシズイルの領主をさせていただいているハルッセンだ。
ベイストのパトスから話は聞いている。歓迎するよサナダ白狼隊、そしてサナダ商会の皆さん」
シズイルの領主は女性だった。
褐色の肌が美しい少し気が強そうな、そして、なんというか、グラマーだ。
落ち着いた柄の南国風のボディスーツみたいな服装がそれを余計に際立たせる。
「はじめまして。ユキムラと申します。サナダ商会会長をさせていただいてます。
それと、私は来訪者です。女神のお告げによりこの街に迫る悪意から皆さんを守るための仲間を置かせていただきたくお願いに上がりました」
「ふぅん……」
ユキムラの姿を足の先から頭のてっぺんまで値踏みするかのようにじっくりと見つめられる。
まるで蛇に睨まれた蛙のようにユキムラは身震いする。
「GUでしたっけ? 何でもベイストの街では長年悩みのタネだった魔獣を瞬殺したとか、さらに治療魔法が使える……、それが本当なら是非こちらからお願いしたいですね」
「もし何かお困りのことがあればGUの力をお見せできると思いますよ?」
「貴方は……?」
「し、失礼しました。ユキムラの弟子でレンと申します」
「レンは私の右腕、すべてのことにおいて頼りにしています。交渉は私ではなく彼が中心となりますので、お見知りおきを」
慌ててユキムラもフォローする。
同じようにハルッセンはレンを舐めるように見つめる。そしてぺろりと唇を舐める。
「つまり、こちらのレンさんがあなた達との窓口になるのね。ふーん。なるほど……」
顔にこそ出していないがレンの背中は冷や汗でびっしょりだ。
もの凄く危険な香りがハルッセンから漂っている気がしている。
「交渉の場には必ず私も同席いたしますのでよろしくお願いしますね。ヴァリィと申します」
「あーら、別にこちらのレンさんだけでもこちらとしては問題ありませんよ?」
「レンはまだ未成年。私が年長者として帯同することに決まっておりますので」
「あら、そう? ならそれでいいわ。
レンさん、今のところ問題はないしGUの能力は信用しているわ。
パトスは人を見る目は確かだから、彼がここまで肩入れするなら間違いはないでしょう。
これからもよろしくお願いしますね」
「あ、はい! よろしくお願いします」
繋いだ手がゾクゾクする。ユキムラの本能も警鐘をかき鳴らす。
ハルッセンは危険が危ないと……。
そのままこの街における商店の確保などの話を担当者と詰めてしまう。
会合を持つとレンの身に危機が訪れるような、そんな確信にも似た予感がする。
順調に話し合いが済んで翌週からでも商店として利用の可能な、商店の一等地を手に入れることができた。値段はしたが、投資に見合う物件だそうだ。
「はぁぁぁぁぁ……ヴァリィさん……本当に有難うございます!!」
レンが珍しくヴァリィに抱きついて感謝の意を表している。
「いや~、彼女。やり手よね。色んな意味で。このまんまじゃレンちゃんが……
なーんか、無理してる感じもあるけども……」
可哀想なものを見るようにレンを見てため息をつく。
「やーめーてーくーだーさーいー!!」
「まぁまぁ、その店は生活もできるんだろ?
必要なもの揃えたりしないといけないし移動しよう。
それにここだと耳があるかもしれないぞ……」
レンがビクリと体を揺らし周囲をキョロキョロと見回す。
ユキムラはごめんごめんと頭をぽんぽんしてあげる。
そそくさと領主の館を後にする。馬車も勧められたが辞退した。
街の様子を見ておきたいとかそれっぽい理由をつけておいた。
改めてシズイルの街を見てみると、見事な港町だ。
街中だと言うのに貿易による物資運搬を考えられてか大通りの道幅が広くきちんと石が打たれている。
この世界ではかなりしっかりとした道路を形成している。
人通りも多く、珍しい獣人などもチラホラと見受けられる。
獣人は力も強いので港町では重宝されるのだろう。
建物も堅牢な石造りが多い、海風が当たる厳しい環境で耐えられる造りなんだろう。
全体として統一感があるため、力強い魅力を感じる。
借りられた店は港から一本通っている大通りから脇に入ってすぐ。
周囲には大型の店子も多く並ぶ確かに一等地と言っていい場所だった。
内部の状態も悪くない、少し清掃すればすぐにでも使えそうだった。
店部分とウラに作業場、二階に倉庫に居住区。理想的な間取りだった。
すぐに魔改造に取り掛かる。
すでに生活用具は持ってきているので清掃作業を魔法や魔道具でさっさと行い、新型の壁材を設置していく。魔道具とつなげれば防音、防災、空調、照明器具になる。わずか数時間でオーバーテクノロジーな家の出来上がりだ。
すっかり日も隠れているので今日は地元の店の探索に向かう。
港町の食事。ソーカのよだれが止まらない。
車酔いで唐揚げは後日へと延期されたようだ。
旅服から着替え白狼隊は夜の港町へと繰り出していく。
ぐったりしたソーカをレンが、少しふらついているユキムラをヴァリィが支えながら馬車から降りる。
タロは優しい光を放ちながら皆にスリスリして回復させている。
その甲斐もあって短時間で回復できた。
レンやユキムラの使う回復魔法はどうにも車酔いみたいな微妙なものに対して効果が薄い。
タロの放つそれは暖かくメンバーを包み込み気分が回復する。
ユキムラも知らない技法だが、さすがタロと気にする様子はない。
「タローありがとー」
ソーカがタロに抱きついて全身を撫でくりまわしている。
タロは大好きなソーカに撫でられて上機嫌だ。
「すみません、見苦しいところを……」
レンがとりあえず領主の館の人と話をつけていてくれている。
別に今回の馬車が特別悪いものではない。これがこの世界でも上の下くらいの馬車なのだ。
ユキムラ達の乗っているものがあまりにも規格外すぎるだけだ。
「これは、なんとかしておかないと危険かもね、座布団式のショックアブソーバーでも作るか……」
また、なんだか無駄な発明をユキムラが思いついているあたりで面会の場へと呼ばれる。
「はじめまして。私がシズイルの領主をさせていただいているハルッセンだ。
ベイストのパトスから話は聞いている。歓迎するよサナダ白狼隊、そしてサナダ商会の皆さん」
シズイルの領主は女性だった。
褐色の肌が美しい少し気が強そうな、そして、なんというか、グラマーだ。
落ち着いた柄の南国風のボディスーツみたいな服装がそれを余計に際立たせる。
「はじめまして。ユキムラと申します。サナダ商会会長をさせていただいてます。
それと、私は来訪者です。女神のお告げによりこの街に迫る悪意から皆さんを守るための仲間を置かせていただきたくお願いに上がりました」
「ふぅん……」
ユキムラの姿を足の先から頭のてっぺんまで値踏みするかのようにじっくりと見つめられる。
まるで蛇に睨まれた蛙のようにユキムラは身震いする。
「GUでしたっけ? 何でもベイストの街では長年悩みのタネだった魔獣を瞬殺したとか、さらに治療魔法が使える……、それが本当なら是非こちらからお願いしたいですね」
「もし何かお困りのことがあればGUの力をお見せできると思いますよ?」
「貴方は……?」
「し、失礼しました。ユキムラの弟子でレンと申します」
「レンは私の右腕、すべてのことにおいて頼りにしています。交渉は私ではなく彼が中心となりますので、お見知りおきを」
慌ててユキムラもフォローする。
同じようにハルッセンはレンを舐めるように見つめる。そしてぺろりと唇を舐める。
「つまり、こちらのレンさんがあなた達との窓口になるのね。ふーん。なるほど……」
顔にこそ出していないがレンの背中は冷や汗でびっしょりだ。
もの凄く危険な香りがハルッセンから漂っている気がしている。
「交渉の場には必ず私も同席いたしますのでよろしくお願いしますね。ヴァリィと申します」
「あーら、別にこちらのレンさんだけでもこちらとしては問題ありませんよ?」
「レンはまだ未成年。私が年長者として帯同することに決まっておりますので」
「あら、そう? ならそれでいいわ。
レンさん、今のところ問題はないしGUの能力は信用しているわ。
パトスは人を見る目は確かだから、彼がここまで肩入れするなら間違いはないでしょう。
これからもよろしくお願いしますね」
「あ、はい! よろしくお願いします」
繋いだ手がゾクゾクする。ユキムラの本能も警鐘をかき鳴らす。
ハルッセンは危険が危ないと……。
そのままこの街における商店の確保などの話を担当者と詰めてしまう。
会合を持つとレンの身に危機が訪れるような、そんな確信にも似た予感がする。
順調に話し合いが済んで翌週からでも商店として利用の可能な、商店の一等地を手に入れることができた。値段はしたが、投資に見合う物件だそうだ。
「はぁぁぁぁぁ……ヴァリィさん……本当に有難うございます!!」
レンが珍しくヴァリィに抱きついて感謝の意を表している。
「いや~、彼女。やり手よね。色んな意味で。このまんまじゃレンちゃんが……
なーんか、無理してる感じもあるけども……」
可哀想なものを見るようにレンを見てため息をつく。
「やーめーてーくーだーさーいー!!」
「まぁまぁ、その店は生活もできるんだろ?
必要なもの揃えたりしないといけないし移動しよう。
それにここだと耳があるかもしれないぞ……」
レンがビクリと体を揺らし周囲をキョロキョロと見回す。
ユキムラはごめんごめんと頭をぽんぽんしてあげる。
そそくさと領主の館を後にする。馬車も勧められたが辞退した。
街の様子を見ておきたいとかそれっぽい理由をつけておいた。
改めてシズイルの街を見てみると、見事な港町だ。
街中だと言うのに貿易による物資運搬を考えられてか大通りの道幅が広くきちんと石が打たれている。
この世界ではかなりしっかりとした道路を形成している。
人通りも多く、珍しい獣人などもチラホラと見受けられる。
獣人は力も強いので港町では重宝されるのだろう。
建物も堅牢な石造りが多い、海風が当たる厳しい環境で耐えられる造りなんだろう。
全体として統一感があるため、力強い魅力を感じる。
借りられた店は港から一本通っている大通りから脇に入ってすぐ。
周囲には大型の店子も多く並ぶ確かに一等地と言っていい場所だった。
内部の状態も悪くない、少し清掃すればすぐにでも使えそうだった。
店部分とウラに作業場、二階に倉庫に居住区。理想的な間取りだった。
すぐに魔改造に取り掛かる。
すでに生活用具は持ってきているので清掃作業を魔法や魔道具でさっさと行い、新型の壁材を設置していく。魔道具とつなげれば防音、防災、空調、照明器具になる。わずか数時間でオーバーテクノロジーな家の出来上がりだ。
すっかり日も隠れているので今日は地元の店の探索に向かう。
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