老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
119話 最深部
ゴルゲン古城地下ダンジョン最下層50階。
前日にしっかりと休息を取りサナダ白狼隊のメンバーの状態は万全。
この階層をクリアすればドラゴン肉BBQが待っている。
全員の士気は高い。
ダンジョン最下層らしく壁や天井には新しく時計のオブジェが散見され、いかにもな雰囲気を高める手助けをしている。
魔物などは存在していない一本道式の最下層なようで、敵の姿は見当たらない。
カツカツと足音だけがひびく不思議な雰囲気の廊下を歩いていくと、廊下の突き当りに扉が現れる。
ユキムラは皆の顔を一回り見回して、その扉に手をかける。
赤い怪しい光を放つ幾何学模様のような紋様が、回路のように複雑に絡み合っている。所々に時計を模したオブジェが回路に埋め込まれている。
指し示している時間は様々だが、カチカチと秒針の音がそこら中から聞こえて薄気味悪い。
部屋の中央には地面からパイプのような管が束となって伸びており、そこにも時計状のオブジェが張り付いている。そしてそのパイプは一つの水槽のようなタンクにつながっている。
タンクの上部からもパイプは天井に向かって伸び部屋の隅々に向かって広がっていっている。
文様が光るタイミングに合わせてタンクから何か光の粒子がタンク上部のパイプを通して上がっていく。そして薄っすらと光るタイミングでタンク内には人影のような物が見える。
その光の粒子はその人物像からにじみ出ているようだ。
何者かが捉えられ、力を吸い出されている。
その施設は見るものにそう想起させる作りになっていた。
「師匠あの中って……」
「多分女神だろうな……」
ヴィーー! ヴィーー! ヴィーー!
けたたましいサイレン音が部屋に響く。赤く命脈する文様が真っ赤に光り続けている。
よくある侵入者に対しての警告音を思わせる。
「皆、気をつけろよ」
ユキムラは全員に注意をうながす。
『テキタイセイリョクノシステムルームヘノシンニュウヲカクニン、ハイジョスル』
「おお、ありがちな音声!」
変なところにテンションがあがるユキムラだった。
そしてすぐに地面から液体金属のような物がゴポゴポと湧いてくる、それがだんだんとゴーレム状に形態を作っていく。
「あー、こいつかー……」
ユキムラは悩んでいた。ネタバレしてすぐに倒すか。
イベントに沿って進めてきちんと段階を踏んでいくべきだろうか……
「師匠! 知ってるんですか?」
「ああ、うん。知ってる。物理攻撃も魔法も効き目が薄い厄介な敵なんだけど、一応弱点はある」
「その弱点とは?」
聞かれちゃったら答えるしかないよね。
「ああ、高熱にされた後急激に冷やすと、硬化して物理攻撃が効くようになる。
しばらく戦うとこの部屋のギミックでできるようになるけど、まぁ魔法でやっちゃうか」
ストーリーに絡んだギミックを使って倒すべきボスを、知識チートで倒す。
罪深い所業である。
かわいそうなので説明しておくと、ここのボスは液体金属でできたゴーレムで、物理攻撃無効、単純な魔法攻撃も通用しない。
液体金属であることを利用して一部を硬化しての斬撃、打撃、射撃と多彩な攻撃でプレイヤーを悩ませる。しばらくしてると捕らわれた女神が拘束が弱まったと協力してくれる。
そして苦労して倒す胸熱なストーリーだ。
しかし、倒し方を事前に知っていると……
「ふぅ、2周で終えられてよかったね」
「師匠、こないだと同じようにこの球を解体ですか?」
「あ、ここも奥に宝箱出ると思う。それは多分崩れちゃうよ」
ユキムラが言った通りコアのような珠はサラサラと風化していった。
かわいそうなボスは説明している間にユキムラの炎熱魔法とレンの極冷魔法で硬化させられ、ソーカ、ヴァリィ、タロの猛攻で2度めの攻撃であっさりと機能を停止した。
『メインシステムダウン、メガミシステムノイジハフカノウ、全システムダウン』
タンクからブシューという音と共に水蒸気が吹き出す。
同時にパイプが次々に外れていく、ごぼごぼとタンクから謎の液体が排出されていき、内部にいる女神の姿がはっきりと確認できるようになる。
メガネをかけ、銀色の髪。知的な顔つき、シルクのように輝く衣を身にまとっている。
液体の中にいたのに液体が抜けた後は全く濡れていない。
一層激しく水蒸気が吹き出し、タンクの前方が持ち上がるように開いていく。
「大丈夫ですかー?」
ユキムラがタンクの中に入って、たぶん女神をお姫様抱っこで外に連れ出す。
驚くほど軽く華奢な体型に少し驚く。
「師匠こちらに」
レンが敷物にタオルを引いて待っていてくれた。
ユキムラはそっとそこにその女性を横たえさせる。
ソーカに頼んで体に異常がないか調べてもらうが、目立った外傷などはなく静かに寝息を立てているだけだと教えてくれる。
「えーっと、アルテス様ー? いらっしゃいませんかー?」
ユキムラが呼びかける。
『はいはーい』
ユキムラの呼びかけに応えて月の女神アルテスが姿を表した。
一緒に火と勇気の女神フェイリス様も一緒に現れた。
『白狼隊の皆様また新たな女神の封印を開放してくれて本当に『うお! お前らなんだよその装備すっげーな!! ちょっと見せろよ!!』フェイリス!!』
いつもの漫才からスタートである。
前日にしっかりと休息を取りサナダ白狼隊のメンバーの状態は万全。
この階層をクリアすればドラゴン肉BBQが待っている。
全員の士気は高い。
ダンジョン最下層らしく壁や天井には新しく時計のオブジェが散見され、いかにもな雰囲気を高める手助けをしている。
魔物などは存在していない一本道式の最下層なようで、敵の姿は見当たらない。
カツカツと足音だけがひびく不思議な雰囲気の廊下を歩いていくと、廊下の突き当りに扉が現れる。
ユキムラは皆の顔を一回り見回して、その扉に手をかける。
赤い怪しい光を放つ幾何学模様のような紋様が、回路のように複雑に絡み合っている。所々に時計を模したオブジェが回路に埋め込まれている。
指し示している時間は様々だが、カチカチと秒針の音がそこら中から聞こえて薄気味悪い。
部屋の中央には地面からパイプのような管が束となって伸びており、そこにも時計状のオブジェが張り付いている。そしてそのパイプは一つの水槽のようなタンクにつながっている。
タンクの上部からもパイプは天井に向かって伸び部屋の隅々に向かって広がっていっている。
文様が光るタイミングに合わせてタンクから何か光の粒子がタンク上部のパイプを通して上がっていく。そして薄っすらと光るタイミングでタンク内には人影のような物が見える。
その光の粒子はその人物像からにじみ出ているようだ。
何者かが捉えられ、力を吸い出されている。
その施設は見るものにそう想起させる作りになっていた。
「師匠あの中って……」
「多分女神だろうな……」
ヴィーー! ヴィーー! ヴィーー!
けたたましいサイレン音が部屋に響く。赤く命脈する文様が真っ赤に光り続けている。
よくある侵入者に対しての警告音を思わせる。
「皆、気をつけろよ」
ユキムラは全員に注意をうながす。
『テキタイセイリョクノシステムルームヘノシンニュウヲカクニン、ハイジョスル』
「おお、ありがちな音声!」
変なところにテンションがあがるユキムラだった。
そしてすぐに地面から液体金属のような物がゴポゴポと湧いてくる、それがだんだんとゴーレム状に形態を作っていく。
「あー、こいつかー……」
ユキムラは悩んでいた。ネタバレしてすぐに倒すか。
イベントに沿って進めてきちんと段階を踏んでいくべきだろうか……
「師匠! 知ってるんですか?」
「ああ、うん。知ってる。物理攻撃も魔法も効き目が薄い厄介な敵なんだけど、一応弱点はある」
「その弱点とは?」
聞かれちゃったら答えるしかないよね。
「ああ、高熱にされた後急激に冷やすと、硬化して物理攻撃が効くようになる。
しばらく戦うとこの部屋のギミックでできるようになるけど、まぁ魔法でやっちゃうか」
ストーリーに絡んだギミックを使って倒すべきボスを、知識チートで倒す。
罪深い所業である。
かわいそうなので説明しておくと、ここのボスは液体金属でできたゴーレムで、物理攻撃無効、単純な魔法攻撃も通用しない。
液体金属であることを利用して一部を硬化しての斬撃、打撃、射撃と多彩な攻撃でプレイヤーを悩ませる。しばらくしてると捕らわれた女神が拘束が弱まったと協力してくれる。
そして苦労して倒す胸熱なストーリーだ。
しかし、倒し方を事前に知っていると……
「ふぅ、2周で終えられてよかったね」
「師匠、こないだと同じようにこの球を解体ですか?」
「あ、ここも奥に宝箱出ると思う。それは多分崩れちゃうよ」
ユキムラが言った通りコアのような珠はサラサラと風化していった。
かわいそうなボスは説明している間にユキムラの炎熱魔法とレンの極冷魔法で硬化させられ、ソーカ、ヴァリィ、タロの猛攻で2度めの攻撃であっさりと機能を停止した。
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タンクからブシューという音と共に水蒸気が吹き出す。
同時にパイプが次々に外れていく、ごぼごぼとタンクから謎の液体が排出されていき、内部にいる女神の姿がはっきりと確認できるようになる。
メガネをかけ、銀色の髪。知的な顔つき、シルクのように輝く衣を身にまとっている。
液体の中にいたのに液体が抜けた後は全く濡れていない。
一層激しく水蒸気が吹き出し、タンクの前方が持ち上がるように開いていく。
「大丈夫ですかー?」
ユキムラがタンクの中に入って、たぶん女神をお姫様抱っこで外に連れ出す。
驚くほど軽く華奢な体型に少し驚く。
「師匠こちらに」
レンが敷物にタオルを引いて待っていてくれた。
ユキムラはそっとそこにその女性を横たえさせる。
ソーカに頼んで体に異常がないか調べてもらうが、目立った外傷などはなく静かに寝息を立てているだけだと教えてくれる。
「えーっと、アルテス様ー? いらっしゃいませんかー?」
ユキムラが呼びかける。
『はいはーい』
ユキムラの呼びかけに応えて月の女神アルテスが姿を表した。
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