老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
114話 ヒヒイロカネと最高級の肉
ヒヒイロカネ。
伝説の金属とされていてVOの世界において魔力触媒金属として最高の素材。
作成意欲をこれでもかと言うほど刺激するアイテムを手に入れてユキムラは悶絶する。
「くっ……、流石にまだ時間が早い。次の階層も行こう!」
35階でのスタンピードを乗り越えてもまだ時間はお昼過ぎ程度。
流石にヒヒイロカネをいじりたいからと言う理由で今日はここまで、とは言え無い。
根が真面目なユキムラでした。
そしてそれはもう一つの幸運を呼び込む。
36階層、周囲の雰囲気が変化した。
無機質だった壁が呼吸をするかのように赤く明滅する文様が浮かび上がっている。
神秘的で不気味なまるで洞窟が生きているかのような雰囲気を醸し出していた。
ダンジョンとしてのランクが変わったことを示す。
出現する敵も宝のランクも変化するそういうサインだ。
そして一行はその変化と対面することになる。
ズーン……ズーン……ズーン……
地面が揺れる。リズムなどから巨大な生物が歩いている音だと推測された。
「何か、いますね」
「ああ、ここからは分散せずに進もうか」
「わかりました。それにしても見える範囲の外から歩いている振動が伝わってくるほど巨大な生物ですか……怖いですね」
「そうだねぇ、もしドラゴンだったりしたら解体して肉手に入れたら最高の食材らしいよ。
アイテムの説明文によると」
「やだわぁユキムラちゃんドラゴンなんておとぎ話でしか聞いたことないわよぉ」
「でも……師匠もおとぎ話でしか聞いたことが無い来訪者ですもんね……?」
タロはピクピクと耳を動かし、隙なく周囲を警戒し続けている。
この階層はロックリザードマンのパーティやらトカゲっぽい敵が多い階で、だんだんと近づく足音の主が、本当にドラゴンかも知れない。
皆、口には出さないがそう思っていた。
リザードマンは二足歩行で顔つきはトカゲ、上位種のドラゴニュートになっていくとどんどんいかつくなっていく。ロックリザードは鱗が石状になっていて、主食も岩だ。
当然その顎は岩をも砕く強靭さを持っている。
知識もそれなりに高く、その中でもリザードメイジはそれなりの魔法を使ってくる。
まぁ、白狼隊と戦うには役者不足感は否めない。
「師匠ドラゴンの肉ってどれくらい美味しいんですか?」
案の定白狼隊は出てくる敵をあっさりと蹴散らしながら、どんどんと深部へと進んでいく。
「いやー自分も食べたことはないんだけど。
『ドラゴンの肉:幻の生物ドラゴンから取れる肉、いろいろな種類がいるが食べられる部位はごく一部でどんなに巨大なドラゴンでも一頭から1キロ程しか手に入らない。
ドラゴンキラーに与えられる名誉を凌駕するほどの味わいで、一度食べると1週間は何も食べなくても活動できるほどの活力と、一生で手に入れられる快楽を味わいに込めたような極上の体験を与えてくれるだろう』
ってね。素材も貴重だし、いてくれたらラッキーだよね」
「ふ、ふーん。本当にいたら是非食べてみたいですね」じゅる
あふれ出る唾液をソーカは一生懸命飲み込んでいる。
「ドラゴンのウロコが手に入ったら絶対にカバン作りたいわぁ……」うっとり
「もし出るとしたらアースドラゴンだから……」ブツブツ……
レンは過去の知識から戦いのシミュレーションに余念がない。
「わん!」
タロは強敵との戦いに心躍っているようだった。
皆まだ見ぬドラゴンにそれぞれ夢を持っている。
きちんと探索をしながら進んでいたが、皆の意識はどんどん足音の主へと集中していく。
そして足音もどんどん近づいてくる。
どうやら現在歩いている直線的な廊下の先に足音の主はいるようだ。
廊下の先も巨体の主が収まる巨大なドーム状の空間になっている。
「あ!」
俯瞰視点にその姿が現れる。
「ほんとにドラゴンだ……アースドラゴンか、でかいんだよね……」
全員の集中力が増していくのがわかる。
一人は材料のため、一人は力試し、一人は胃袋、一人はおしゃれ、一匹は大きな玩具で遊びたい。
理由はそれぞれ違うが、白狼隊初めてのドラゴンハントだ。
「あのさぁ……、盛り上がってるとこ悪いんだけど。ずるい勝ち方と正攻法どっちがいい?」
部屋の前でユキムラが提案を出してくる。
「師匠、一応そのずるい方法っていうのは?」
「えーっとね、タゲ回しってやり方なんだけど。
基本的に魔物は与えられたダメージの大きい敵を対象に攻撃してくるんだよね。
だからああいう巨大で動きの遅い敵はそれを利用して次から次へとヘイトを回して、相手に攻撃させないで勝つ的な方法があって……」
「ガウ!!」
「うー、ごめんよぉ。そういう方法があるってだけだよぉ。一応ね。一応。
はい! ということで正攻法で行こう!!」
鶴の一声ならぬタロの一言で正攻法での戦闘となる。
「失礼しました、先程の話は忘れましょう。
えーっと、巨大な敵との戦いは基本的にリスクを取らないことです。
深く相手の懐に入るのではなく、出ているところを叩きましょう。
そして一発逆転を絶対に狙わない。
そんなものを狙う状態にされた時点で、たぶんそのだいぶ前に撤退すべきポイントがあります。
地味ですが、積み重ねる。それしかありません」
タロに叱られて少しへこんだユキムラの丁寧な大型種との戦闘ハウツーだ。
「万が一、あの巨体の一撃を完全に受けると、この鎧でもどうなるかわからない。
それは絶対に忘れないでくれ、死んだら俺はそいつを許さないから」
最後の言葉が隠すことのないユキムラの本心だった。
全員その言葉を重くうなずき気合を入れ直す。先程までの浮ついた雰囲気は消え失せた。
「当然だけど、まとまるのも悪手だからね。そしたら行こうか!」
白狼体が広間へと一斉に飛び出していく。
伝説の金属とされていてVOの世界において魔力触媒金属として最高の素材。
作成意欲をこれでもかと言うほど刺激するアイテムを手に入れてユキムラは悶絶する。
「くっ……、流石にまだ時間が早い。次の階層も行こう!」
35階でのスタンピードを乗り越えてもまだ時間はお昼過ぎ程度。
流石にヒヒイロカネをいじりたいからと言う理由で今日はここまで、とは言え無い。
根が真面目なユキムラでした。
そしてそれはもう一つの幸運を呼び込む。
36階層、周囲の雰囲気が変化した。
無機質だった壁が呼吸をするかのように赤く明滅する文様が浮かび上がっている。
神秘的で不気味なまるで洞窟が生きているかのような雰囲気を醸し出していた。
ダンジョンとしてのランクが変わったことを示す。
出現する敵も宝のランクも変化するそういうサインだ。
そして一行はその変化と対面することになる。
ズーン……ズーン……ズーン……
地面が揺れる。リズムなどから巨大な生物が歩いている音だと推測された。
「何か、いますね」
「ああ、ここからは分散せずに進もうか」
「わかりました。それにしても見える範囲の外から歩いている振動が伝わってくるほど巨大な生物ですか……怖いですね」
「そうだねぇ、もしドラゴンだったりしたら解体して肉手に入れたら最高の食材らしいよ。
アイテムの説明文によると」
「やだわぁユキムラちゃんドラゴンなんておとぎ話でしか聞いたことないわよぉ」
「でも……師匠もおとぎ話でしか聞いたことが無い来訪者ですもんね……?」
タロはピクピクと耳を動かし、隙なく周囲を警戒し続けている。
この階層はロックリザードマンのパーティやらトカゲっぽい敵が多い階で、だんだんと近づく足音の主が、本当にドラゴンかも知れない。
皆、口には出さないがそう思っていた。
リザードマンは二足歩行で顔つきはトカゲ、上位種のドラゴニュートになっていくとどんどんいかつくなっていく。ロックリザードは鱗が石状になっていて、主食も岩だ。
当然その顎は岩をも砕く強靭さを持っている。
知識もそれなりに高く、その中でもリザードメイジはそれなりの魔法を使ってくる。
まぁ、白狼隊と戦うには役者不足感は否めない。
「師匠ドラゴンの肉ってどれくらい美味しいんですか?」
案の定白狼隊は出てくる敵をあっさりと蹴散らしながら、どんどんと深部へと進んでいく。
「いやー自分も食べたことはないんだけど。
『ドラゴンの肉:幻の生物ドラゴンから取れる肉、いろいろな種類がいるが食べられる部位はごく一部でどんなに巨大なドラゴンでも一頭から1キロ程しか手に入らない。
ドラゴンキラーに与えられる名誉を凌駕するほどの味わいで、一度食べると1週間は何も食べなくても活動できるほどの活力と、一生で手に入れられる快楽を味わいに込めたような極上の体験を与えてくれるだろう』
ってね。素材も貴重だし、いてくれたらラッキーだよね」
「ふ、ふーん。本当にいたら是非食べてみたいですね」じゅる
あふれ出る唾液をソーカは一生懸命飲み込んでいる。
「ドラゴンのウロコが手に入ったら絶対にカバン作りたいわぁ……」うっとり
「もし出るとしたらアースドラゴンだから……」ブツブツ……
レンは過去の知識から戦いのシミュレーションに余念がない。
「わん!」
タロは強敵との戦いに心躍っているようだった。
皆まだ見ぬドラゴンにそれぞれ夢を持っている。
きちんと探索をしながら進んでいたが、皆の意識はどんどん足音の主へと集中していく。
そして足音もどんどん近づいてくる。
どうやら現在歩いている直線的な廊下の先に足音の主はいるようだ。
廊下の先も巨体の主が収まる巨大なドーム状の空間になっている。
「あ!」
俯瞰視点にその姿が現れる。
「ほんとにドラゴンだ……アースドラゴンか、でかいんだよね……」
全員の集中力が増していくのがわかる。
一人は材料のため、一人は力試し、一人は胃袋、一人はおしゃれ、一匹は大きな玩具で遊びたい。
理由はそれぞれ違うが、白狼隊初めてのドラゴンハントだ。
「あのさぁ……、盛り上がってるとこ悪いんだけど。ずるい勝ち方と正攻法どっちがいい?」
部屋の前でユキムラが提案を出してくる。
「師匠、一応そのずるい方法っていうのは?」
「えーっとね、タゲ回しってやり方なんだけど。
基本的に魔物は与えられたダメージの大きい敵を対象に攻撃してくるんだよね。
だからああいう巨大で動きの遅い敵はそれを利用して次から次へとヘイトを回して、相手に攻撃させないで勝つ的な方法があって……」
「ガウ!!」
「うー、ごめんよぉ。そういう方法があるってだけだよぉ。一応ね。一応。
はい! ということで正攻法で行こう!!」
鶴の一声ならぬタロの一言で正攻法での戦闘となる。
「失礼しました、先程の話は忘れましょう。
えーっと、巨大な敵との戦いは基本的にリスクを取らないことです。
深く相手の懐に入るのではなく、出ているところを叩きましょう。
そして一発逆転を絶対に狙わない。
そんなものを狙う状態にされた時点で、たぶんそのだいぶ前に撤退すべきポイントがあります。
地味ですが、積み重ねる。それしかありません」
タロに叱られて少しへこんだユキムラの丁寧な大型種との戦闘ハウツーだ。
「万が一、あの巨体の一撃を完全に受けると、この鎧でもどうなるかわからない。
それは絶対に忘れないでくれ、死んだら俺はそいつを許さないから」
最後の言葉が隠すことのないユキムラの本心だった。
全員その言葉を重くうなずき気合を入れ直す。先程までの浮ついた雰囲気は消え失せた。
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