老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

81話 寄り道

「師匠! 前方に村が見えてきました。たぶんフラット村に予定通り到着だと思います」

 レンが村発見の報告をしてくれる。
 王都プラネテルの北にあるフラットの村、農畜産業が主体の中規模の村だ。
 この村につけば後は、南に進めば2日ほどで王都へ到着できる予定になる。
 日はほぼ真上、昼過ぎかな。時間的な余裕はあるものの本日はここで宿を探す予定だ。

「ありがとうレン、そしたら予定通りあの村で一晩過ごそう」

「わかりました」

「普通の旅なら村について喜ぶところですが、この馬車のせいでありがたみが薄いですね」

 ソーカが滞在の準備をしながら話しかけてくる。

「ははは、そーだね。さすがにこれ以上大きくすると人目を引きすぎるし、この世界の規格に合わなくなるからね」

「……この世界?」

「ん、ああいや、門の高さとか道の広さに合わせないといけないからさ」

「ああ、なるほど。確かに門をくぐれないほど大きくするのは困りますね」

「そうなると後は連結式か複数の馬車に分けるって話になってくるんだよね。
 あまり大規模な移動にはしたくないからなぁ……」

 それだけ言うとユキムラは今話していたアイデアなどを実案するプランをいくつか立て始めてしまう。
 思いつくとそっちに集中してしまうのは相変わらずだ。
 今回はその集中をすぐに乱される。

「師匠! 様子が変です! 空から襲われているっぽいです!」

「戦闘準備だ! ソーカ! 俺達は先行する! 
 レンは馬車の装備で援護してけが人などの収容を頼む!」

 タロが一番最初に飛び出し疾風のように加速していく、その後にユキムラ、ソーカがフライングボードで追走する。
 レンも牽制のための射撃準備に入る。

「あれは……翼竜か、家畜でも狙いに来たのかな?」

 村の入り口は南方に備えられていてユキムラ達は北東方向から村へ近づいていた。
 翼竜達は北に広がる畜産地帯に襲いかかっているようだ、まだ村への被害は少なそうだ。
 どうやら世話をしている人が4つ叉のフォークで必死に追い払っている。
 数頭の家畜が血を流し倒れているが、人的な被害はまだ出ていないみたいだ。

「このまま突入するぞ!」

 ユキムラが号令をかけた瞬間、空中を飛ぶ5匹の翼竜に白い閃光が襲いかかる。
 あっさりと5匹の翼竜は首を刎ねられ落下し魔石へと変わる。

「ひ、ひぃ!」

 目の前にいきなり現れた真っ白な狼に村人は恐れたが、目の前の狼が光り輝くと肩口の傷がみるみるうちに塞がっていく。
 タロが倒れた家畜たちに近ずいて行き一頭一頭スンスンとその輝きに触れさせていくと、傷ついて倒れていた家畜たちはブルブルと首を振りながら立ち上がっている。

「レンー、他の敵はー?」

「周囲にもういなさそうですね。まぁいたらタロが逃さないでしょう」

「そうだね、タロに全部やってもらっちゃったね」

 村人に近づくと跪いてタロを拝んでいた。

「神獣様じゃ、神獣様がわれらを救ってくれた!」

「大丈夫ですか?」

 ソーカが話しかける。

「うおっ! お主らは!?  助けに来てくれたのか? 
  神獣様があっという間にアイツらをやっつけてくれて、しかもおらの子たちを生き返らせてくれた! 
  奇跡だ奇跡が起きたのじゃ!」

 しばらくすると鍬や鋤で武装した村人が集まってきた。
 興奮した村人が事の顛末を皆に熱心に布教している。
 タロは素知らぬ顔で楽しそうに家畜たちと遊んでいた。


 タロの大活躍のお陰で村から大歓迎ムードで迎えてもらえることになったユキムラ一行。
 自己紹介をするとさらに驚かれた。このあたりでも少しは耳に入るらしい、西の方の村があっという間にでっかい街になった。程度らしいが。

 話を聞くとこんな冬の真っ只中で翼竜が出てくることは珍しいらしく、もしかしたらもうすぐ子が孵るのかも知れないということで村人たちは不安がっていた。
 北東にある山に翼龍の巣があるそうで、まぁ成り行きで調査に行くことになった。

 出発は翌日にすることにして、今後も飛来する可能性のある翼竜対策に高櫓をササッと建造した。
 頂上には大型の連弩を備え付けて、さっきくらいの翼竜を撃退するのは容易にできると思う。
 出来る限り作りは簡単にして村人なら誰でも扱えるようにする。
 枠に入れて引き金を引けばズドン。これくらい単純なのが良い。
  それでいて矢の充填も簡易化しつつ連射性能を高めていく、設置しながらもユキムラとレンはこうした方がいい、ああしたほうがいいとその場で改造を加えていく。
 レンと二人で北東角と北西角に設置し終えた。
  普通の人からしたら信じられない速度で建物が生えていった。

「神獣様も凄いが、あんたらも凄いもんじゃのぉ~」

 村長さんからもお褒めのお言葉を頂いた。呆れ気味だが。

 夜は村長さんのお宅で地元のおいしい野菜と塩漬け肉を使ったミルク鍋を頂くことになった。
 温かくとても優しい味。この村の人達の人柄を表しているようだった。
 パンは昔ながらの固いパンだったので、食事のお礼に酵母をお分けして柔らかいパンの作り方を教えた。スキル指導などは終わりがなくなるので今回は自粛するユキムラであった。

 翼竜は夜目が効かないと言われているものの、念のために警戒していたが、何事もなく夜明けを迎えることが出来た。
 村人たちに見送られてユキムラ達はフラット村北東の山を調べに行く。
 もし産卵期であるなら今後も継続して家畜たちが被害に遭うことになってしまう。
 近くに動物などが豊富な森林地帯などがあれば良いのだけど、その山の周囲は草原。
 小型のうさぎなどはいるが孵った子どもたちを養うほどの食料となると人間が育てた家畜が都合がいいのだろう。
 翼竜には翼竜の都合もあるが、今回は人間の道理を通させてもらう。

 山の麓で馬車は置いておく。
 十分な餌と水を設置して防御兼秘匿結界を展開する。

「村長の話だと山頂の火口部に巣食っているらしいですね」

「タロどう? 気配する?」

「ワン!」

「そっかぁ、いるかー、なら一気に登って終わらせちゃおう。
 今日は急ぎじゃないからタロは一人で全部終わらせないでね」

「わふん」

  タロは撫でているソーカに今回は譲ってあげるからねって感じでぽんと腕に手をかける。

「はいはい私も頑張ります。ユキムラさんまっすぐ火口に向かっちゃいますか?」

「そうだね、この壁面登っちゃおうか」

 皆の前には切り立った直立に近い岸壁がそびえ立っている。
 レンは手慣れた手つきで岸壁に魔道具を設置していく。

「動かしますー」

 レンが装置を動かすと壁面に沿って車輪のようなものがぐんぐんと登っていく。
 その車輪が通った跡には土魔法で作られたレールが作られていく。
 あっという間に最上部へと消えていく。

「問題ないですね、それじゃぁ乗りましょうか」

 一番下の装置に乗るとそのレールをしっかりと掴み魔道具自体が上昇していく。
 言ってみれば簡易エレベーターだ。

 あっという間に頂上付近まで3人を運んでくれた。







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