老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

73話 駄女神とユキムラ解放

【ひさしぶりねユキムラ】

 目の前にこの世界に来る前に対面した月の女神アルテスが立っていた。
 相変わらず、お美しい姿で。

『あれ、ここは最初のところ?』

【ええ、ちょっとね。話しておかないといけなくなったので仕方なく接続しました】

 バツの悪そうに髪の毛をクルンクルンといじりながら女神が口を開く。

『話すこととは?』

【ねぇユキムラ、あなたなんで女神の解放もせずに寄り道ばかりしてるのかな?
 さらに、こっちが悪いけどVOのスキルシステムどんどん広めちゃうし……】

『ああ、いろいろと女神クエスト進めると被害に合う人が出るので、生活レベルと武装を引き上げてから進めようかと思って……』

【なるほどね、それはわかったんだけど、貴方に与えたVOのシステムってね、言ってみれば私達女神や神たちからのギフトなの。
 貴方だけならいいんだけど、私一人だともうそろそろ限界なの、以前から猛烈な勢いで負荷は増えていくし、それに対応するのは私一人だし。
 さらに、まぁこれもこっちのミスなんだけど、まだ取ってない魔法も発動してね、えー、っと。うん。はっきり言っちゃうね。不具合起きて直せないの】

 テヘペロって感じで舌を出す女神。かわいいなぁ。

『え、それってどういう……』

【私一人で対応できる方法は二つ、巻き戻しかJOBシステム破棄】

 ユキムラの質問には答えないスタンスだ。

【巻き戻し。最初っからやり直しでスキルを他の人へ教えられなくする!
 もちろん今までのも全部なし。最初っから。
 もう一つは……JOBシステム破棄してそこのリソースを他に回す。
 これだとユキムラの生前って言い方もおかしいんだけど、VOのJOBを反映するから、全てのJOBを完成している状態になる。
 理解さえしていればなんでも出来る。
 つまんないかもしれないけど……
 仕方ないのよ、貴方がどんどん女神とか神達を開放してたら、いろいろ手伝ってもらったりできたんだけど、全然その気配がないんだもん!!】

 だんだん女神のテンションが上ってきているぞ。ユキムラは引き気味だぞ。

【てかさ、一人で全部把握なんて無理なのよ無理! 
 早いとこ開放してよ! もうJOBシステム破棄でいいよね!?
 ソッチのほうが楽なの! 一緒にいる子達だってこれからは貴方が教えれば、魔法だろうがなんだろうが使えるし、うんそれにしよう、ね?】

『選択肢になってないじゃないですか……でも、巻き戻しは嫌です。
 もう色んな人と思い出がありますから』

【よし! そしたらJOBシステムオフにするね。
 クエスト幾つかおかしくなるけど、仕方ない。貴方がちゃんと神や女神を開放してくれたら、そのうち直しとくわ。
 これで誰でも全部のスキルが0で解放されるから、努力次第でどんな種類のスキルも取得可能よ!
 自由度素晴らしいわ! 楽しんでね! ありがとね!】

『え、ちょっと、これってすごく重要なんじゃ……』

【はい! 決めたのは君! 今の記憶は消しとくから】

 キーーーーーーーーーーーーーーン

 またかん高い音が響く。
 目の前の景色が揺れたと思ったら、足が地面に降りた感触がする。

「ししょーーー!!」

 レンがタックルをして抱きついてくる。

「あれ、ここは?」

「師匠急に消えるんだもん心配しましたよ!」

「わん!」

「ユキムラ様大丈夫ですか? 今何が起きたんですか?」

 みんな心配そうにユキムラを見つめている。

「自分でもよくわかってないんだけど、逆に何が起きたの?」

 それから二人から聞いたことを総合すると、何か考え込んでいたユキムラが突然消えて、そして現れた。と、言うことだった。

「えーっと、ステータスを確認したらバグってて……ん? なんだっけ?
 あれ? 誰かと話したような……」

 どうも頭に靄がかかったように何も思い出せない。
 それ以前のスノーアントとの戦いははっきりと覚えている。
 ユキムラはもう一度ステータスを呼び起こす。

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 ユキムラ サナダ

 BLv 162

 HP:38542
 MP:36241

 力   100
 素早さ 100
 体力  100
 知性  100
 器用さ  82
 幸運  80

 スキル:スキルマスターLv MAX
 特性:秘められた才能《取得経験値にボーナスが付きます》


 一般スキル:スキルマスター Lv MAX

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「ん? あれ? こんなんだっけ? あれ?」

「師匠どうしました?」

 ユキムラの頭は沸騰しそうになっていた。
 何か大切なことが抜けているようなそんな気持ちになる。
 同時に、大量の知識が頭の中を走り抜ける。
 もともと自分が持っていたものが補完されたような、そんな感覚を覚えた。

「えーっと、ソーカって魔法使える?」

  ユキムラはこめかみを人差し指で押さえながらソーカへと話しかける。

「私ですか? 私は剣しか使えないです」

「ソーカさ、右手を前に出して目の前に火の玉を作るイメージを思い浮かべて、その火の塊を打ち出すイメージでファイアーボールって言いながら打ち出してみて」

「魔法は使えませんってば、えーっと。火の玉ー、とんでけー、ファイアーボール」

 ドゴン!

 ソーカが伸ばした手の先の岩がメラメラと燃えている。

「え? はい? ふぇ?」

 ソーカが自分の手のひらと燃え上がっている岩を交互に睨んでいる。

「レン、あの燃えてるとこに前教えたイメージでアイスウォール使ってみて」

「は、はい。うーん……」

 レンは氷の壁が強固に作り出されるイメージを作り出す、

「アイスウォール!」

 ジュン……ビキビキビキィ

 燃えさから炎を打ち消しながら氷の壁がその場に現れた。

「ああ、間違いない。誰でも魔法が使えるような気がしたけど、本当にそうなってる……」

 レンとソーカはお互いの豆鉄砲に突かれたような顔を見合わせて絶叫をトンネルに響かせるのだった。

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