老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
58話 海開き
駐屯地改造が楽しくて、いつの間にか難攻不落の城塞みたいな状態になっている。
やり始めると周りが見えなくなってしまうのがユキムラの悪いとこでもありいいところでもあった。
周囲の森もすっかり切り開かれてしまっている。
そんな風に時を過ごしていくとサナダ街にも色々な変化が現れる。
噂を聞いた周囲の小集落が皆帰順を申し出てきた。
小さな集落でも数が揃えばそれなりの人数になる。
ある程度大きな街なんかはサナダ街製の製品が行き渡り始めて生活の質が向上したせいで、合流者が減ってきていた。
これはユキムラ自身が言いだしたことで、現状それなりの規模の街から移住が増えると、他の街の空洞化が起こるからなるべく避けるようにというお達しがあって、皆が努力した結果だ。そう、努力したんだよ皆……
さて、駐屯地の話に戻すが、どのように魔改造になったかというと、周囲を結界で囲んではいるが、わざとモンスターが結界付近まで接近できるようになっている。
モンスターが結界のあるエリアを超えて接近をするとモンスターを囲うように結界が発生する。
そしてその結界内を猛烈な炎が包み込む。同時に日光照射を超高密度で放たれる。
結界からの脱出も出来ず箱の中でその身を焼かれるモンスター……酷い……
そんな駐屯地でもアイドルが誕生していた。
ホワイトウルフのタロだ。
目の開く前から人の手によって育てられたタロは、野生など失って人にデレデレな子犬に成長していた。狼だけど。
もっこもこで真っ白な毛玉は女子だけでなくおっさんも含めたすべての人間の心を掴んだ。
鷲掴みだ。
ソーカも仕事を終えると早馬を飛ばして会いに来るほどだ。
駐屯地勤めが今一番の人気職場になっている。
その後街でも一大ペットブームが起きて、町人と動物たちと温かいつながりがはじまっていく。
春もだんだんと暖かさを増してきて初夏の雰囲気がし始めた頃、トンネルが反対側へ開通する。
ビービービービービー
駐屯地にアラームが鳴り響く。
すでにこの頃は外部トラップでほぼ完了することが皆わかっているので、いつでも戦闘に入れる状態でそのまま様子を見るのがほとんどだ。
ただ、外敵襲来のアラームの音と違うことが気になった。
「なぁ、レンこのアラームみたいのってなんだっけ?」
「またアンデッドでも焼かれてるんじゃないんですか? 師匠こんな感じでいいですか?」
「そうだね、これで太陽光を収束させてレーザーにして打てるね」
トンネル開通を知らせるアラームがなっても呑気に開発をしていた二人、タロがワンワンとアラームのもとに吠えかかる。
「ああ、タロちゃんごめんね今消すからねー」
「あれ? 師匠それって……」
「ん……!? トンネルが開通したのか!!」
自分たちがなぜこの場にいるのか軽く忘れてしまっている始末だった。
大急ぎでホバーボードを走らせる二人、懐には風を受けて凛々しい顔をしているタロがいる。
ただただひたすら真っすぐ続くトンネルの先に光が見える。
「気をつけよう、開いた先が崖かもしれない」
「はい師匠!」
「わうん!」
「おーよしよし、タロもわかるのか、えらいなー」
どんどん光が近づいてくる、海の匂いを感じてくる。
少しづつスピードを緩めて出口のそばでボードから降りる。
「おおおおおおおお」
「凄い! これが、海!!」
眼下に広がるは全面に広がる海、崖とまでは言わないが切り立った山肌に開いたトンネルは、目の前に小さな砂浜を持つ海岸線に開通したのだった。
停止している採掘用魔道具を回収する。
予想以上の性能に大変満足する。
「レン取り敢えず街へ連絡しよう。足場を作りながら海岸へ降りてみるか」
それから海岸への降りる道を整備していく。
長い年月を経て削られた山肌は堅牢な強度を持っていた。
砂浜はとても狭いが打ち寄せる波の音が心地よく、二人と一匹はしばしその場で潮風に当たっていた。
「海って変わった臭いがするんですね」
「磯の匂いってやつだな、さて、せっかく来たならー……あったあった」
すぐに釣りポイントは見つかる。海沿いのポイントは非常に多く設定されている。
二人はしばしとりつかれたように釣りを楽しむ。
見たこともない魚が次から次へと連れてレンは興奮を隠せない。
タロは打っては返す波と戯れている。もう砂とか海水で灰色になっている。
あとでシャンプーは間違いない。
しばらくすると街からの応援も到着する。
はじめは海の巨大さに心を奪われていた街人も岩肌の採掘ポイントを探したり、採集ポイントを探したり釣りを始める。初めての場所だからね、仕方ないよね。完全に病気だよね。
「さて、海の幸もだいぶ確保した。
しかし、このあたりに出張所を作れる安全な場所は難しいね……
いっそ洞窟状に作れば海が時化っても安全かもなぁ……」
残念ながら山肌は海岸線近くまで切り立っており、まとまった平地は確保できそうになかった。
トンネルを掘る要領で掘削し、保護結界を展開して洞窟型の居住スペースを作ることに決定する。
今まで高級だった海の幸、そして海由来の塩が得られる。
ユキムラ、レンそれに街人のやる気は非常に高かった。
すぐに先程の掘削機械で大きな空間が作られる。
何箇所か柱を残して崩落防止結界、照明、入り口には門も作られていく、20人ほどでの作業だが、精鋭が集まっているためにみるみるうちに村としての機能が作られていく。
夜更けまで皆の作業は続き、夜明け前には村として完成していた。
数時間の仮眠をとるとユキムラは単身でトンネルにレールを敷き、高速移動用のトロッコ列車まで作り上げている。この日のためにしっかりと準備をしていた。
日本出身のユキムラにとって海産物の確保は悲願であった。
年を取ってからたまの楽しみといえば宅配寿司:シルバーの皿で寿司を取ることであった。
刺し身と寿司、ユキムラの悲願は一気に現実味を帯びてきたのだった。
やり始めると周りが見えなくなってしまうのがユキムラの悪いとこでもありいいところでもあった。
周囲の森もすっかり切り開かれてしまっている。
そんな風に時を過ごしていくとサナダ街にも色々な変化が現れる。
噂を聞いた周囲の小集落が皆帰順を申し出てきた。
小さな集落でも数が揃えばそれなりの人数になる。
ある程度大きな街なんかはサナダ街製の製品が行き渡り始めて生活の質が向上したせいで、合流者が減ってきていた。
これはユキムラ自身が言いだしたことで、現状それなりの規模の街から移住が増えると、他の街の空洞化が起こるからなるべく避けるようにというお達しがあって、皆が努力した結果だ。そう、努力したんだよ皆……
さて、駐屯地の話に戻すが、どのように魔改造になったかというと、周囲を結界で囲んではいるが、わざとモンスターが結界付近まで接近できるようになっている。
モンスターが結界のあるエリアを超えて接近をするとモンスターを囲うように結界が発生する。
そしてその結界内を猛烈な炎が包み込む。同時に日光照射を超高密度で放たれる。
結界からの脱出も出来ず箱の中でその身を焼かれるモンスター……酷い……
そんな駐屯地でもアイドルが誕生していた。
ホワイトウルフのタロだ。
目の開く前から人の手によって育てられたタロは、野生など失って人にデレデレな子犬に成長していた。狼だけど。
もっこもこで真っ白な毛玉は女子だけでなくおっさんも含めたすべての人間の心を掴んだ。
鷲掴みだ。
ソーカも仕事を終えると早馬を飛ばして会いに来るほどだ。
駐屯地勤めが今一番の人気職場になっている。
その後街でも一大ペットブームが起きて、町人と動物たちと温かいつながりがはじまっていく。
春もだんだんと暖かさを増してきて初夏の雰囲気がし始めた頃、トンネルが反対側へ開通する。
ビービービービービー
駐屯地にアラームが鳴り響く。
すでにこの頃は外部トラップでほぼ完了することが皆わかっているので、いつでも戦闘に入れる状態でそのまま様子を見るのがほとんどだ。
ただ、外敵襲来のアラームの音と違うことが気になった。
「なぁ、レンこのアラームみたいのってなんだっけ?」
「またアンデッドでも焼かれてるんじゃないんですか? 師匠こんな感じでいいですか?」
「そうだね、これで太陽光を収束させてレーザーにして打てるね」
トンネル開通を知らせるアラームがなっても呑気に開発をしていた二人、タロがワンワンとアラームのもとに吠えかかる。
「ああ、タロちゃんごめんね今消すからねー」
「あれ? 師匠それって……」
「ん……!? トンネルが開通したのか!!」
自分たちがなぜこの場にいるのか軽く忘れてしまっている始末だった。
大急ぎでホバーボードを走らせる二人、懐には風を受けて凛々しい顔をしているタロがいる。
ただただひたすら真っすぐ続くトンネルの先に光が見える。
「気をつけよう、開いた先が崖かもしれない」
「はい師匠!」
「わうん!」
「おーよしよし、タロもわかるのか、えらいなー」
どんどん光が近づいてくる、海の匂いを感じてくる。
少しづつスピードを緩めて出口のそばでボードから降りる。
「おおおおおおおお」
「凄い! これが、海!!」
眼下に広がるは全面に広がる海、崖とまでは言わないが切り立った山肌に開いたトンネルは、目の前に小さな砂浜を持つ海岸線に開通したのだった。
停止している採掘用魔道具を回収する。
予想以上の性能に大変満足する。
「レン取り敢えず街へ連絡しよう。足場を作りながら海岸へ降りてみるか」
それから海岸への降りる道を整備していく。
長い年月を経て削られた山肌は堅牢な強度を持っていた。
砂浜はとても狭いが打ち寄せる波の音が心地よく、二人と一匹はしばしその場で潮風に当たっていた。
「海って変わった臭いがするんですね」
「磯の匂いってやつだな、さて、せっかく来たならー……あったあった」
すぐに釣りポイントは見つかる。海沿いのポイントは非常に多く設定されている。
二人はしばしとりつかれたように釣りを楽しむ。
見たこともない魚が次から次へと連れてレンは興奮を隠せない。
タロは打っては返す波と戯れている。もう砂とか海水で灰色になっている。
あとでシャンプーは間違いない。
しばらくすると街からの応援も到着する。
はじめは海の巨大さに心を奪われていた街人も岩肌の採掘ポイントを探したり、採集ポイントを探したり釣りを始める。初めての場所だからね、仕方ないよね。完全に病気だよね。
「さて、海の幸もだいぶ確保した。
しかし、このあたりに出張所を作れる安全な場所は難しいね……
いっそ洞窟状に作れば海が時化っても安全かもなぁ……」
残念ながら山肌は海岸線近くまで切り立っており、まとまった平地は確保できそうになかった。
トンネルを掘る要領で掘削し、保護結界を展開して洞窟型の居住スペースを作ることに決定する。
今まで高級だった海の幸、そして海由来の塩が得られる。
ユキムラ、レンそれに街人のやる気は非常に高かった。
すぐに先程の掘削機械で大きな空間が作られる。
何箇所か柱を残して崩落防止結界、照明、入り口には門も作られていく、20人ほどでの作業だが、精鋭が集まっているためにみるみるうちに村としての機能が作られていく。
夜更けまで皆の作業は続き、夜明け前には村として完成していた。
数時間の仮眠をとるとユキムラは単身でトンネルにレールを敷き、高速移動用のトロッコ列車まで作り上げている。この日のためにしっかりと準備をしていた。
日本出身のユキムラにとって海産物の確保は悲願であった。
年を取ってからたまの楽しみといえば宅配寿司:シルバーの皿で寿司を取ることであった。
刺し身と寿司、ユキムラの悲願は一気に現実味を帯びてきたのだった。
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