俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第10章 #11「初めての誘い」

 ---「ハア」

 昼の1時過ぎ。慌ただしかった店も徐々に落ち着き始めていた。

 「お疲れさまです、和彦君!」

 「ああ、おつかれー」

 俺が店の片隅でひと息ついていると、みのりが声をかけてきた。

 有紗もそうだったが、みのりもかなり指名がきていたっけな。にもかかわらず、未だに笑顔を絶やさないみのりを見て感心させられた。撮影のときもけっこうノリノリだったしな。

 ちなみに当然かもしれないが、俺を含め男子の指名は1人もいなかった。まあわざわざ千円払って女装した男子と写真撮りたがるやつなんていないよな。

 そんな男子はほとんど裏方の仕事をする羽目になったのだが、なぜか俺1人だけ撮影担当になっていた。そのおかげであちこちのテーブルに振り回され、ほかの男子達の倍ぐらいは動き回っていた。結果、俺はかなり疲れきっていた。

 「そろそろ交代の時間なんで、先に着替えてていいですよ」

 「うん、わかった。そうさせてもらうよ」

 みのりは交代の時間を告げ、俺に先に着替えるよう促してきた。どうやら午後の人達の着替えが終わったようだ。

 俺はみのりの言葉に促されるように隣の空き教室に向かった。ちょっとだけ馴染んできている気がするが、改めて自分の格好を見てみると、やっぱ恥ずかしい。

 そう思った俺は、急いで着替えることにした。

 ---「フー。ようやく俺も自由の身だ」

 着替えが終わったあと、接客業という人見知りな俺にはなかなか酷な責務から開放された俺は伸びをしながら1人呟いていた。

 「お疲れさまでした、和彦君」

 「あっ、みのり。おつかれー」

 空き教室から出ると、ちょうどみのりと鉢合わせた。どうやらみのりも今から着替えようと俺が居た空き教室の方に様子を見に行こうとしていたようだ。

 「今、俺だけしか居ないかったから、着替えるなら今のうちだぞ」

 「そうですか。ありがとうございます」

 いちおうだれも居ないことをみのりに伝えると、みのりはお礼の言葉を述べ、空き教室に入って行こうとしていた。

 「そ、そういえばみのり、昼メシまだたろ? せっかくだし、どっかで食べに行くか?」

 そんなみのりに俺はふとみのりを昼メシに誘ってみることにした。別に大した理由はないが、せっかくの学園祭だし梓達とも合流してみんなでどっかの模擬店で昼メシ取るのもいいんじゃないかと思っただけだ。

 「ふふ♡ ありがとうございます。けどごめんなさい。ちょっと運営委員会の方に行かないといけない用事があるので…」

 「そ、そっか」

 しかし、みのりは申しわけなさそうに俺からの誘いを断った。まあ用事があるんなら仕方ない。いちおうみのりは学園祭の運営委員だしな。

 ってな感じで、俺の初めての誘いは見事に断られてしまうのだった。なぜだかそれがちょっとだけ寂しく感じた。

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