第9章　#3「大事な話」

　---「さて、そろそろ話してくれるかしら？」

　「えっ？」

　「……」

　しばらく他愛のない会話をしていると有紗が突然妙なことを言い出した。今だってちゃんと話をしているのに、なにを言ってるんだ有紗のやつ？

　「本当はそんな他愛のない話がしたかったわけじゃないんでしょ？」

　「？　おい有紗、なに言ってんだよ？」

　「和彦、あんたまだわかってないわけ？ここに招いたのはお礼がしたいんじゃなくて、大事な話がしたかったからでしょ？」

　「…えっ？」

　「……」

　すると有紗はまじめなトーンで話を続けた。大事な話ってなんのことだよ？

　そう不思議に思った俺は綴さんの方を見ると、綴さんも愛想笑いなどもなく、まじめな表情を浮かべていた。

　「…ええ。夏目さんの言う通り、今日は大事な話がしたくてお2人をお呼びしました」

　「ッ！？」

　すると綴さんは有紗に促されるかのように話し始めた。大事な話って綴さんや司君がサモナーと召喚獣という特殊な主従関係であること以外にも隠してるようなことがあるということなのだろうか？

　「その前に改めて言わせてください。昨日のことは本当にごめんなさい」

　しかし大事な話を始める前に、綴さんは昨日の件について、深々と頭を下げ謝罪した。別に気にしなくてもよかったのだが。

　「別に私達は気にしてないわ。続けて」

　それを有紗が紅茶を一口飲んだ後、代弁するかのように返した。なんか紅茶を飲むさまが板についてきている気がする。

　「はい。私達サモナーは世間ではあまり認知されていない職業です。その理由は召喚獣という未知の生物を世間に知られないようにするためです。召喚獣は本来、この世に存在しない、いえ、存在してはいけないものですから」

　「存在してはいけないもの？」

　綴さんの話を聞いていて俺は疑問に思ったことを口に出していた。

　「はい。司みたいに死なない人間が居るなんて知られたら大変なことになるのは目に見えているでしょ？」

　「たしかに」

　綴さんにそう言われて俺はすぐに納得した。たしかに死なない人間がいたら普通はパニックを起こすだろう。俺や有紗は他にもありえないものを見てきてるから、ちょっと頭がおかしくなっていたのだが。

　「だから私達サモナーはだれにも知られないようにしてきました」

　綴さんは俺の疑問に答えると突然、まじめな表情から暗い表情に変わった。急にどうしたのだろうか？

　「けど、私、その暗黙のルールを破った挙句、大事な親友を川に突き飛ばしました」

　そして綴さんは突然、衝撃の告白をするのだった。