第8章番外編　#2「美波彩香」

　---「ねー綴さん、今日綴さんのウチ行っていい？」

　「えっ？　私ん家？　別にいいけど」

　「ホント？！　いよっしゃっ！」

　「？」

　彼女の名前は美波みなみ彩香あやか。きれいな顔立ちに腰より下まで伸びた黒髪がよく似合う、元気で明るく、クラスの中でも人気のある女の子だ。あまり目立たないように生きている私とは正反対だ。

　彩香とは高校に入ってから知り合ったのだが、気がつくと仲良くなっていたのだ。なぜ仲良くなったのかはよく覚えていない。

　そんな彩香が唐突に私の家に行きたいと行ってきた。私は今まで人を入れたことがなかったから一瞬、戸惑ってしまったが、彩香は私にとって特別な存在だったから私は戸惑いながらも承諾した。

　すると彩香は大げさにガッツポーズをし始めた。そこまで喜ぶことでもないと思うけど、彩香が喜んでいるのなら別にいっか。

　彩香は私にとって高校でいや、人生で初めての友達だった。

　---私の家、不二宮家に生まれた者は代々召喚士サモナーとして育てられてきた。当然私も父からその教育を受けてきた。

　その間、私は外部との交流を極力避けてきた。学校は行っていたけど。

　しかし、学校が終わればまっすぐ家に帰りサモナーになるため日々勉強、学校以外に外出したことなんてほとんどなかった。サモナーというのはそれだけ難しい職業なのだ。私はそう父に教えられていた。

　だが、実際に簡単じゃないってことは知っていた。召喚獣を呼ぶ儀式、召喚サモンで死んだという話を両親が私の居ないところでひっそりと話していたのをよく聞いていたからだ。

　召喚は生と死の表裏一体。成功すれば召喚獣を呼び出すことができるが、失敗すれば失敗したサモナー見習いは死ぬ。『召喚で生き残っていれば本物のサモナーになれる』と言われているほど難しい儀式なのだ。

　だからサモナーの家系は小さい頃からしっかりとサモナーとしての教育を受けさせるのだ。それでも失敗してしまう者もいるのが現状だが。

　---そんな事情もあり私は友達どころか、他の子達とろくに遊んだことなんてなかった。

　そのため、常に私は孤独だった。別にいじめられていたわけではなかったのだが、自然とそういう風になっていった。

　色々家の都合があり高校から1人暮らしを始めた私だったが、今まで他の子達とあまり接したことがなかったから、かなり不安だった。

　その不安は友達ができるかとかいう不安ではなく、学校に馴染めるかという不安だった。

　そんなときに声をかけてきてくれたのが、彩香だったのだ。