俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第8章番外編 #1「あのときとは」

 ---「姉ちゃん、大丈夫っスか?」

 「ええ、大丈夫。司こそ怪我はない?」

 「オイラなら大丈夫っスよ! オイラ、アンデットっスから!!」

 「そう」

 家に帰ると私はまっすぐに風呂場に向かっていた。服が濡れてしまって身体がベトベトになってしまったので。

 脱衣場で服を脱ぎながら私は司に問いかけてみた。司は私の着替えを持ってきながら笑顔でそう返した。

 アンデットは怪我をしても感覚が鈍いから、気づくのに時間がかかったりする。しかしあれからある程度時間が経っているし、見た感じでも傷痕のようなものは見受けられない。頭と身体が分離したときにできた傷痕も今はふさがれている。自然治癒で繋ぎ直したようだ。

 ---「…ふぅ…」

 シャワーを浴びながらふと小さくため息が漏れた。昨日今日でどっと疲れがたまってしまったから。

 昨日はクラスの人達と歓迎会。親睦を深めるために開いてくれたとはいえ、慣れない行事に参加したから、ついつい気を遣ってしまった。

 楽しくなかったわけではなかったけど、疲労感の方が少し上回っていた。

 そして今日はとくに疲れた。まさか転入してきた2日目で『また』見られてしまうとは。

 あのとき、正直終わったと思った。『また』あのときのようなことになってしまうのではと思うと、怖くてたまらなかった。

 『このことは絶対にだれにも言わない。約束するよ!』

 彼、佐藤和彦君が言ってくれた言葉をふと思い返していた。怖くてたまらなかった私に彼は優しい口調でそう言ってくれた。

 正直、慣れているというのは本当かどうかはわからない。私に気を遣ってウソをついてくれたのかもしれない。

 けど、嬉しかった。司のような化け物を、そしてそれを召喚した私を、彼等は受け入れてくれた。ひょっとして本当に慣れているのかもしれない。

 一体、彼等はどれだけの修羅場を潜り抜けてきたのだろうか? サモナーの存在を知っても割とあっさり受け入れてしまうほどだから、きっと私の想像をはるかに上回るほどの経験をしてきたのだろう。

 「……」

 ふと『あのとき』のことを思い出してしまった。今思い出している『あのとき』とは今日のことではなく、転入する前、つまりここに来る前の話だ。

 私達が転校することになったのは、あのときの出来事が原因だった。あのときのことは未だに後悔していた。

 それなのに同じ過ちを犯そうとしていたなんて、今考えると背筋がゾッとさせられた。

 ---「綴さん、一緒に帰ろー!?」

 「ええ。今、行くわ」

 約1カ月前、私には仲のいい友達がいた。

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