俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第7章 #5「有紗の挑戦」

 「お兄ちゃん、あそこの焼きそば美味しそうだよ!」

 「和彦君、一緒に射的やりませんか?」

 「和彦、あのりんご飴って何?」

 「…わたあめ」

 「ちょっ、ちょっと待てって! いっぺんに言うなって!」

 屋台が立ち並ぶ祭り会場で俺はみんなに手を引っ張られまくっていた。一見羨ましいことだと思うかもしれないが、あちこちに振り回されるからけっこう大変だ。こんなに人に振り回されるのは初めてだ。

 「と、とりあえず1つ1つ見て回るから、一旦落ち着こうぜ」

 俺はみんなを落ち着かせるために行きたい場所を1つ1つ見て回ることにした。みんな、それに納得してくれたようで、各々首を縦に振ってくれた。とりあえず食べもの系から見て回るか。

 ---「んー♡ やっぱり屋台の焼きそばって美味しいですよねー」

 「このたこ焼きも美味しいですよ!」

 「んっ、りんご飴、けっこう美味しいかも」

 「……」

 食べもの系の店は一通り見て回り各々食べたいものを買って食べていた。梓は焼きそば、みのりはたこ焼き、有紗はりんご飴、イーリスちゃんはわたあめ、俺は焼き鳥を選んだ。

 「食べもの系は見て回りましたし次は遊ぶ系ですかね?」

 「気が早いな」

 「時間は有限ですから」

 食べながらみのりは次の予定を立て始めた。気が早い気がするが、まあ花火までそんなに時間もないし他の店を回るなら急いだ方がいいのかもしれないな。

 「そうだな。じゃあこれ食べ終えたら行くか」

 そう思った俺はみのりの意見に賛同し早めに自分の持っている焼き鳥を食べることにした。

 ---みんなも早めに食べ終え、俺達は射的や金魚すくいで盛り上がっていた。

 「この紙、薄すぎない? こんなんで金魚なんかすくえんの?」

 特に有紗は初めてのことばかりで金魚すくいで苦戦している姿は初々しく感じた。本人はぶつくさ文句を言っているが、それでも楽しそうに見えるのは俺の気のせいだろうか?

 「はははっ! お嬢ちゃん、よく見ときな! こうやれば、っと」

 「ッ!? うそ…」

 しかし、店のおじさんに手本を見せてもらい驚愕する有紗。まるでマジックショーを見る子供のようだ。

 「もう一回! もう一回やらせて!」

 「はいよ! 頑張ってねお嬢ちゃん!」

 それを見せられた有紗は負け時と再度挑戦を試みた。どうやらこの店のおじさんは商売上手なようだ。

 ---その結果、10回以上挑戦した有紗だったが、1匹も取れず手に持っている金魚はおじさんからおまけでもらったものだった。本人は屈辱を受けたようだったが。

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