俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第5章 #10「腹上死事件」

 「精気を奪う? まさか…」

 まさかの発言に思わず驚いてしまった。聞きなれない言葉が出てきたからではなくむしろつい最近、その言葉に聞き覚えがあった。だから驚いてしまったのだ。

 ---それは今朝、みのりと話していた時だった。

 「変死事件?」

 「はい。ここ最近、多くなってるらしいんですけど」

 朝っぱらからよくない話を聞かされたのをよく覚えてる。まあ俺も朝のニュースとかで見たことはあったが、詳細まではあんまり覚えてなかったが。

 「亡くなられた方が皆、精気を奪われたような表情をしていたらしいんです」

 「精気を奪われたような表情って…」

 俺はふと想像してみたが、白目むいて泡を吹いてる感じだろうか?

 「実はその方達、『腹上死』していたらしいんですよ」

 「ふく、じょうし?」

 そして彼女から聞きなれない単語が飛び出してきた。「副社長的な感じの何か?」とちょっと小ボケを入れてみたら、彼女は冷静に「違いますよ」と返されてちょっと恥ずかしい思いをしたのも覚えてる。正直、そこはすぐにでも忘れたいところだが、忘れたい記憶ほど残ってしまうものだ。ちなみに俺の記憶の7割は人に言いたくないほどのもので占められている。いや、8割か。

 「簡単に説明すると、エッチなことをし過ぎて死んでしまうことです」

 「ぶっ!?」

 話を戻した途端、彼女からとんでもない発言が出てきた。俺の小ボケを意に返さんのも納得できる説明だ。だってそっちの方が面白いんだから。

 彼女の発言を聞いて俺は慌てて周囲を見渡した。朝のSHRが始まる前だから生徒のほとんど教室で談笑しながら待機してる。だれか聞いてるかもわからんのによくそんな発言できたものだ。

 しかし幸いなことにほかの生徒達の笑い声の方が大きくてだれも聞いていないようだった。まあ非リア非モテの男子の痛い視線は相変わらず感じるが。

 「大丈夫ですか?」

 「…うん、大丈夫…それで?」

 そんなとんでも発言した彼女は知ってか知らずか俺に心配の言葉をかけてきた。俺なんかより自分のさっきの発言を心配するべきだと俺は思うが。だがそれは言わずに話の続きを促すことにした。そして彼女は俺に促され話を続けた。

 「しかも被害者は全員20歳前後の独身男性、中には高校生もいたらしいですよ」

 「こ、高校生?!」

 それを聞いて俺は思わず驚いてしまった。といってもほかの生徒達に目立たない程度だったが、それでも素直に驚いた。思春期とはいえそんなに発情するものなのか? まあ非リア非モテの俺でもエロい妄想して発情することも多…げふんげふんっ。

 「こういう死因ってレアなケースらしいんですけど、最近になって急激に増えたらしくて故意に起きてるんじゃないかっていう説があるらしいんですよ」

 「故意ってことは、つまり…」

 「多分、計画的な犯行なのかも知れませんね」

 『計画的な犯行』と聞くとなんか話が重くなった気がする。実際、警察等関係者達には笑えない話なんだろうが。

 「けど、計画的な犯行なら仮に犯人がいたとしたら犯人は何が目的なんだ? 金銭目的なら若い人よりおっさんの方がいいだろうに」

 しかし俺は1つ疑問に思ったことを口に出した。犯人は一体何目的で犯行に至ったのだろうか? 被害者の中には高校生もいたらしいし金銭目的ならある程度余裕のあるおじさま方から搾取した方がいい気がするのだが、いわゆる援助交際というやつか。まあそれも犯罪であることに変わりないが。

 流石に彼女も「そこまでは私も」と困った顔をした。そりゃあそうか。目的なんて結局、犯人自身でしか知るよしがない。

 「和彦君も気をつけてくださいね。いくらタイプの人でも簡単に誘惑されちゃダメですよ♪」

 そして彼女はさっきとは打って変わったかのように可愛くウインクしながら俺に警告を発した。俺を誘惑して血を吸おうとした人だけに説得力がある。

 「大丈夫だって。流石にそんなのに引っかかったりしないって」

 ---それがフラグになるとはさっきまでの俺には思いもしなかった。

 「まさかあなたが変死いや、腹上死事件の犯人だったんですか?」

 俺がそう言うと彼女は妖美で不敵な笑みを浮かべるのだった。

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