デイズ

鬼怒川 ますず

終焉

「さて、この姿勢のまま施設まで運んで…」

そう言いかけて、私は止まりました。
何故でしょうか、頭がムズムズします。
こうなる時は決まって他の超能力者が近くにいます。

異常脳力者は、もうこの付近にこの子以外にはいないはずなのに…。


と、そう思っていたら私の肩の何かが突き刺さりました。

あぁ痛い。
最高ですね。

私が一瞬油断したせいで今まで拘束した子供が解放されます。
そして私に…っとその前に声が聞こえてきます。
耳を…澄ませて聞いてみましょう。

「い、いいから…逃げろ……早く! 早く!!」

おや澄まさなくても聞こえましたね。
これは失敬でした。

しかし、この声は聞き覚えがありますね…。

っと、そう思っているうちにあの子が何処かに逃げ出します。
逃がしませんよ。

そうやってあの子を止めようとしますが、その前に足にまたも何かが突き刺さります。
今度は見ました。
なるほど、車椅子の破片ですか。
考えましたね。

「逃げろ!! お前は自由だ!! いつか必ず、白緑びゃくろくにとって大切な人たちに出会える!! こんな奴らと、関わらなくて済む! だから走れ!!」

…はぁ、まったく。
あの子に、なんて汚らしい名前をつけてくれたのでしょうか…。
私はなおも飛んでくる破片を、全て止めました。
飽きたので。

痛みに快感を感じながら、歩いて死んだはずのやつの元に向かいます。

いました。
胸元…心臓のあたりからとんでもない出血をしているのに、超能力を使う死に損ないが。

「…蘇生の方法はわかりませんが、それよりも」

「白緑は追わせない! 俺が」

「その名を止めろクズが」

私は彼を蹴りました。
胸元と頭を。
普通ならショック死でしょう。
ですが、どんなトリックを使っているのかまだ言葉を口に出します。

「…僕は…白緑、のこと…何も、知らない…」

「それは当然、あの子のことを知っているのは私くらいです」

「…フン、それ…じゃ、あの子の好きな…食べ物を、知っているか?」

あぁ簡単な質問だ。
馬鹿馬鹿しい。

「解はトマト料理、あの子は赤い色が好きですので」

「ちげーよ、バーカ」

さっきまで息絶え絶えにしゃべっていた彼が、急に言い切るので私は若干驚きます。
なので今度は拳銃を取り出して銃弾を頭に食らわせます。

2発。

頭の中身が飛び散りました。

でも、口は動きます。

「びゃ、くろ…く…が、好き…たべ…の…は……」

そう言って彼は止まりました。
それと同時に、あの子を逃がしました。

なんとも残念、なんという凶日。
私は傷だらけの身体を見渡し、刺さっているパイプのような破片を抜きます。

「…よろしい、あなたは頑張りました。ですが、我らがCEOはあの子を必ず連れ戻します」


グチャグチャになった頭部に、私はそれを突き刺します。
何度も、何度も何度も。

悔しいのでしょうね。
異常脳だからでしょうね。

いいえ、違います。
出し抜かれてしまったことにです。


今は兵士が全滅。
とにかく今追うのは私でも危険が伴ってしまいます。
私は諦めてすごすごと引き返すことにしました。

その気になれば、いつでもあの子を取り戻せますし、なによりも情勢を変える能力。

逃す手はないです。

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