デイズ

鬼怒川 ますず

危機一髪

化け物が。

俺は急いで右腕を持っていた鋭利なサバイバルナイフで切り落とす。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーッッ!!?!」

俺が絶叫しながら落ちた右腕を見ると、その右腕は関節までがすでに結晶化しており、綺麗な色を放っていた。

朦朧とする意識。

その先にあれを見た。

あの化け物を。

「…く、クソッタレがァァァァァァァァ!!」

とにかく背を向けて逃げ出す。
あんなのには勝てない。

だが奴は逃す気はない。

後ろから草むらを掛け分けて走ってくる音がする。
まずい、追いつかれる。


そう思ってふと背後を見ると、すぐ後ろにあの目を………違う!

確かこのガキは緑と白の目のはずだ。
なのに何故赤と黒に変わっているんだ!?

俺の脳内で浮かんだ疑問にガキが答えるわけはない。

化け物は俺に襲い掛かって……


「はい、そこまでですよ」

ピタリ、と止まってしまう。

目の前で恐ろしい形相で俺を睨むガキが宙に浮いて静止している。

「は、はな……!!」

フーッ、フーッと荒い鼻息で俺に飛び掛かりそうな化け物だったが、それは木々の間から颯爽と現れるあいつのおかげで止まった。

その姿は、おそらくあの化け物でも恐ろしいのだろう。

ストップ。
このガキをここまで運んで来た、超能力者達にとって最悪の歩く監獄。
彼はいつも通り安いスーツを着て俺たちの前に現れて、ガキのアゴを撫で始めた。

「あぁ、CEOに愛されたお姫さま……あなたはこのようなつまらない事に能力を使ってはいけないのですよ? あなたの能力…異常脳力は世界の情勢を変える。それは我がCEOが望む大戦の引き金を引くかもしれないのですから…」
ストップがそういうと、何かがあったのかあのガキの歯が震え始めた。
俺に超能力は使えない。
だがこれだけは分かる。

ストップは、おそらくこの化け物が恐れる最悪の能力だ。
あの人間を無差別に無機物にして操る能力よりも恐ろしい能力。

「さて、お姫さまはもうお眠りのお時間ですよ?お部屋に戻って、明日も元気に、変わりなく検診を受けましょうね。……それよりスペースレンジャー、アンタは早く風呂入ってこい。クセェんだよ」

そう言われて気づいた。
俺はいつの間にか、漏らしていた。


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