デイズ

鬼怒川 ますず

スカウト



沖縄で君が超能力を使って友達にイタズラしていた時に、ちょうど見ていたらしい赤いスーツの男に「面白いものを持っているね」と喋りかけられたという。

君はそんなお世辞に照れていたが、男が君と二人で喋りたいと友達から離れた場所でと言ってそこで会話をした。

男から、君はありえない話を聞かされた。

「君の超能力は、ある意味で最高だ。念動力は幾つも見たことがあるが、君のは変幻自在と言うか手軽にやってのけるのだね。これは超能力とは違う…私はそう思うけど君はどうかね?」

「はぁ…ようするにお兄さんも私みたいに超能力使えるんですか?」

超能力を褒めるのとは違う。
いつもとは違い、違和感のする喋り方をする男に訝しげになる。

「とんでもない、私は超能力などとは無縁だよ。エスパー、発火、様々な人体の神秘は見てきたが私が使ったことはないよ。実験などではそれ以上の神秘を見てきたが、私はその領域には達せないからね」

「…で、お兄さんはそれを言うためにみんなから離れた場所まで移動したんですか?」

君はここで何かに引っ掛かりを感じた。
男は容姿は良かったが、言ってることに気味の悪さを感じた。


「正直言うと私がここまで君を連れてきたのは、君をスカウトしたいからだよ」

「…………スカウトって何よ?」

「えぇ、私がCEOを務めるある組織に君を非検体として雇いたいと思ってる」


「は?」

君が疑問符を口にすると、男は君のことなど無視して話を進める。

「世界中に存在する能力者とは、すべからく社会に適応できた者たちばかりだ。社会的地位もそうだが交友関係もある、能力者とは潜在的にそういった思考だから表には絶対でない。私としても君みたいな子は初めてなんだよ」

男は静かに言うと君の瞳を覗くように見つめた。
君は後ずさって逃げたかったけど、まるで蜘蛛の糸で身動きを止められたかのように動けなかった。

「今この場で私のスカウトに応じてくれれば君の待遇は最高のモノにしてあげるよ。金も男も好き放題で人生困らないのは間違いないだろうね。でもその反面、君は世俗から存在自体消えてしまうけどね」

「な、なんで…」

「私は世界が混乱することを望んでいる。その組織に所属するとなれば当然、君の情報は死んだ事になって消される。代償は高いが君は自由になんでもできるんだ。どうだい? 」

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