終末の異世界と大罪のグリモワール ~英霊は異世界で斯く戦えり~
第五章35 砂塵の試練ⅩⅩⅣ:壮絶なる戦いの行方
「くそッ……俺の野望がッ……計画がッ……こんなところでッ……くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉッ!」
ハイラント王国を襲った壮絶なる戦いが終局を迎えようとしていた。
元王族であり、何かしらの恨みからハイラント王国を壊滅させようと乗り込んできたのは、ルイス・ハイラントという名の少年だった。現国王の兄であり、かつては最も王の座に近かった。
そんなルイスは自らの身体に『魔竜』と呼ばれる、世界崩壊の力を宿して王国へと戻ってきた。圧倒的な力をもってして、ハイラント王国は滅亡の時を迎えようとしていたのだが、その前に立ち塞がったのは白銀に輝く甲冑ドレスを身に纏った少女だった。
「……や、やったの?」
少女もまたハイラント王国では過酷な日々を送っていた。
金色の髪をもっている。ただそれだけの理由で王族であるにも関わらず存在を隠されて生きてきた。彼女にとって、この日が初めて外に出た瞬間であった。
リーシア・ハイラント。
それが少女の名であり、世界を守護する存在『神竜』から力を授かることで、剣姫として覚醒を果たした結果に最悪の悪神・ルイスを討ち倒すことに成功したのであった。
『驚きを隠すことができないが、どうやらそのようだ』
「はあぁ……よかったぁ……」
魔竜の力を使役した結果、その力に飲み込まれそうになったルイスはリーシアの一撃を避けることができず、凄まじい衝撃を前に小柄な身体は地面に落下すると大きな粉塵の中へと姿を消した。
「私、守ることができたんだね……この国を……」
『あぁ……私の力だけではない、主の守りたいという想い……それがこの結果をもたらしたのだ』
「そっか……これが、私の力……なんだね……」
戦いの終わりを実感するリーシア。
彼女は自分が身に纏う神竜の力、その大きさを改めて実感する。
恐ろしいほどの静寂が包む城下町。
周囲を見渡せば、リーシアとルイスが激戦を繰り広げた広場を中心に荒廃した町が広がるばかりであり、かつての姿を保っているのは遠くに見える王城のみである。
「…………」
『……主?』
「ここから、始めないといけないんだよね……」
『…………』
リーシアが安堵の表情を浮かべたのも一瞬であり、荒廃としたハイラントの城下町を見て、少女は険しい復興の道程を共に歩む決意を固める。
「私はこの国を守る……復興が済んだら、今度は世界を守るために力を使うよ、竜さん」
『……それが剣姫としての務めである。最後のその時まで、我は主に力を貸そう』
剣を愛し、剣にされし者。
世界を守護する剣の姫……それが剣姫である。
これまで鳥籠の飼われていた少女は世界を守護するという、大きな使命を背負いこれからの日々を生きていく。
「ふぅ……やることはいっぱいだけど、とりあえず疲れちゃったなぁ……」
リーシアが自分の使命を再確認し、しかし全身を襲う疲労感にため息を漏らした瞬間だった――。
『主ッ、後ろだツ!』
「……えっ?」
神竜の言葉が脳裏に響くのと同時、少女の背後で立ち込めていた粉塵の中から何かが飛び出してくる。それは漆黒の鱗に覆われ、先端が鋭利に尖った魔竜の尻尾であり、風を切って直進する尻尾が狙うのは無防備な姿を晒している剣姫・リーシアだった。
「――――」
それはあまりにも呆気なく、そして静寂に包まれた一瞬であった。
粉塵の中から飛翔してきた尻尾はリーシアの身体を貫いた。背中から体内へ侵入を果たし、そのまま胸へと飛び出して白銀の甲冑ドレスに鮮血の花を咲かせる。
「……俺の計画は台無しだ。折角、手に入れたこの力も……手放さなければならない」
「…………」
城下町を一陣の風が吹き抜けていく。
粉塵が晴れると、そこには右半身を失い、夥しい量の出血を続けるルイス・ハイラントの姿があった。普通であれば即死である状態にも関わらず、ルイスは最後の瞬間まで魔竜の力を行使することで、かろうじて命を繋いでいたのであった。
「ただの小娘だと思って油断していた。それが俺の敗因だ……まさか、この国に……この世界に……これほどまでの力を持った者が居るとは……予想外だった」
今にも消えそうな声音を発し続けるルイス。
身体を貫かれたリーシアは胸と口から溢れ続ける鮮血、そして予想していなかった状況に声が出ない。
「俺は死なない。いつか必ず、この世界に帰ってくる……そして、その時がこの世界の最後の瞬間となる……」
「…………」
「世界を破壊する……その野望を果たすために、お前の存在は邪魔だ……だから、今ここで葬り去る必要があるんだよ」
魔竜の尻尾によって貫かれたリーシアの身体に、黒々とした模様が刻まれていく。
それは魔竜が持つ呪いであり、確実な死を約束するものであった。
「束の間の平穏を楽しむがいい……しかし、俺は必ず戻ってくるぞ――必ずだッ!」
その言葉を最後にルイスの身体が闇の炎に包まれる。
炎が消えた時、そこにルイスの姿はなく、残されたのは命の灯火を消そうとする少女一人だけなのであった。
こうして、ハイラント王国を舞台にした歴史に残る壮絶な戦いが幕を下ろす。
束の間の平穏。それは一人の少女の命と引き換えに訪れる。
ハイラント王国を襲った壮絶なる戦いが終局を迎えようとしていた。
元王族であり、何かしらの恨みからハイラント王国を壊滅させようと乗り込んできたのは、ルイス・ハイラントという名の少年だった。現国王の兄であり、かつては最も王の座に近かった。
そんなルイスは自らの身体に『魔竜』と呼ばれる、世界崩壊の力を宿して王国へと戻ってきた。圧倒的な力をもってして、ハイラント王国は滅亡の時を迎えようとしていたのだが、その前に立ち塞がったのは白銀に輝く甲冑ドレスを身に纏った少女だった。
「……や、やったの?」
少女もまたハイラント王国では過酷な日々を送っていた。
金色の髪をもっている。ただそれだけの理由で王族であるにも関わらず存在を隠されて生きてきた。彼女にとって、この日が初めて外に出た瞬間であった。
リーシア・ハイラント。
それが少女の名であり、世界を守護する存在『神竜』から力を授かることで、剣姫として覚醒を果たした結果に最悪の悪神・ルイスを討ち倒すことに成功したのであった。
『驚きを隠すことができないが、どうやらそのようだ』
「はあぁ……よかったぁ……」
魔竜の力を使役した結果、その力に飲み込まれそうになったルイスはリーシアの一撃を避けることができず、凄まじい衝撃を前に小柄な身体は地面に落下すると大きな粉塵の中へと姿を消した。
「私、守ることができたんだね……この国を……」
『あぁ……私の力だけではない、主の守りたいという想い……それがこの結果をもたらしたのだ』
「そっか……これが、私の力……なんだね……」
戦いの終わりを実感するリーシア。
彼女は自分が身に纏う神竜の力、その大きさを改めて実感する。
恐ろしいほどの静寂が包む城下町。
周囲を見渡せば、リーシアとルイスが激戦を繰り広げた広場を中心に荒廃した町が広がるばかりであり、かつての姿を保っているのは遠くに見える王城のみである。
「…………」
『……主?』
「ここから、始めないといけないんだよね……」
『…………』
リーシアが安堵の表情を浮かべたのも一瞬であり、荒廃としたハイラントの城下町を見て、少女は険しい復興の道程を共に歩む決意を固める。
「私はこの国を守る……復興が済んだら、今度は世界を守るために力を使うよ、竜さん」
『……それが剣姫としての務めである。最後のその時まで、我は主に力を貸そう』
剣を愛し、剣にされし者。
世界を守護する剣の姫……それが剣姫である。
これまで鳥籠の飼われていた少女は世界を守護するという、大きな使命を背負いこれからの日々を生きていく。
「ふぅ……やることはいっぱいだけど、とりあえず疲れちゃったなぁ……」
リーシアが自分の使命を再確認し、しかし全身を襲う疲労感にため息を漏らした瞬間だった――。
『主ッ、後ろだツ!』
「……えっ?」
神竜の言葉が脳裏に響くのと同時、少女の背後で立ち込めていた粉塵の中から何かが飛び出してくる。それは漆黒の鱗に覆われ、先端が鋭利に尖った魔竜の尻尾であり、風を切って直進する尻尾が狙うのは無防備な姿を晒している剣姫・リーシアだった。
「――――」
それはあまりにも呆気なく、そして静寂に包まれた一瞬であった。
粉塵の中から飛翔してきた尻尾はリーシアの身体を貫いた。背中から体内へ侵入を果たし、そのまま胸へと飛び出して白銀の甲冑ドレスに鮮血の花を咲かせる。
「……俺の計画は台無しだ。折角、手に入れたこの力も……手放さなければならない」
「…………」
城下町を一陣の風が吹き抜けていく。
粉塵が晴れると、そこには右半身を失い、夥しい量の出血を続けるルイス・ハイラントの姿があった。普通であれば即死である状態にも関わらず、ルイスは最後の瞬間まで魔竜の力を行使することで、かろうじて命を繋いでいたのであった。
「ただの小娘だと思って油断していた。それが俺の敗因だ……まさか、この国に……この世界に……これほどまでの力を持った者が居るとは……予想外だった」
今にも消えそうな声音を発し続けるルイス。
身体を貫かれたリーシアは胸と口から溢れ続ける鮮血、そして予想していなかった状況に声が出ない。
「俺は死なない。いつか必ず、この世界に帰ってくる……そして、その時がこの世界の最後の瞬間となる……」
「…………」
「世界を破壊する……その野望を果たすために、お前の存在は邪魔だ……だから、今ここで葬り去る必要があるんだよ」
魔竜の尻尾によって貫かれたリーシアの身体に、黒々とした模様が刻まれていく。
それは魔竜が持つ呪いであり、確実な死を約束するものであった。
「束の間の平穏を楽しむがいい……しかし、俺は必ず戻ってくるぞ――必ずだッ!」
その言葉を最後にルイスの身体が闇の炎に包まれる。
炎が消えた時、そこにルイスの姿はなく、残されたのは命の灯火を消そうとする少女一人だけなのであった。
こうして、ハイラント王国を舞台にした歴史に残る壮絶な戦いが幕を下ろす。
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