七年間ずっと片想いしてた初恋の女の子に告白しました!

片山樹

七年間ずっと片想いしてた初恋の女の子に告白しました!

題名にもある通り、俺はある女の子に七年間恋をしていた。七年間という歳月が経ってしまったのは、自分の気持ちの整理が着かなかった事が原因である。順序よく話したいと思うし、できるだけ短い話にしたいと俺は思っているので時系列はバラバラであるがそんなに気にしないでくれたらありがたい。

ってことで、語らせてもらう。

俺の初恋を……

✽✽✽
 桜が満開とは言わず、少し枯れ始めた小学5年生の春、俺はある女の子に出会った。今考えるとこの出会いは決して間違いでは無かったと思うし、俺の人生を変えてくれたいいきっかけになってくれたと思っている。その出会った女の子ってのが俺が恋した女の子なんだけどね。

名前はミナミアヤ
ポニーテールの茶髪に茶色の瞳。透き通った鼻と艶っぽい唇。ぷりっとしたお尻に白い肌の美脚。おまけに性格は元気で明るかった。まぁ、馬鹿には変わりは無かったけど。

そんな彼女と一緒のクラスになったものの、当時の俺はあまり目立つタイプの人間でも無かったので彩と関わりを持つことは無かった。

だが、そんなある日。転機は訪れたのだ。
その日、俺を含む男子生徒数人かでテストの勝負をした。負けたら罰ゲームがあるという約束で開始したのだが……負けたのは俺だった。その時の点数は何点だったかは覚えてないけど、余程悪かったと思う。あまりにも嘲笑されたからな。それで罰ゲームってのをどうするかって話になって、出てきた案が『好きな人に告白する』というものだった。俺はかなり躊躇したけど、周りのメンバーは面白いと思ったらしく、俺にやれやれと言ってきたので仕方なくすることにした。まぁ、これが子供の掟みたいなものですよ。それで俺は誰に告白するか迷った挙句……友達が告白する相手を選ぶ事になった。

そして選ばれたのが、彩だったんだ。
これには反論も無いし、友達の意見もあるし、もしも成功したらラッキーとか思ってた。
そして俺は、ドキドキしながら彩に喋りかけた。

「あ、あのさ……」
心拍数はもうバクバク。止まることは無かった。運動場を全速力で走った後みたいだった。

「えっ? 何?」
さすが、クラスの明るい女子。返し方が慣れていた。だけど当時の俺はそんなことを全く覚えていない。

「あの、もしよかったら僕と付き合ってください!」

これが俺の人生初めての告白だった。
そしてこれが初めての失恋だった。

「ごめんなさい……」

彼女はさくっと俺の告白を断った。罰ゲームと言えど、結構落ち込んだのを覚えている。っていうか、あの時の俺は告白なんて失敗するとかあり得ないとでも思っていたのだろう。

その後、二年という月日が経ち、俺達も小学校を卒業することになった。

そしてその卒業式に俺はあることを決心していた。

『もう一度、告白しよう』と。

2年前の事を思い出しどうするか迷った事もあったけど、告白したその日から日に日に彩に対する想いは強くなっていた。結構、俺と彩は2年間の間に席替えがあったものの4回程隣の席になった事も要因と言える。

彼女の怒った姿。彼女の泣いた姿。彼女の困った姿。そして、彼女の笑った姿。

そんなあの時の、あの時のという彼女の姿が卒業式の最中に思い出し、涙が止まらなくなったのを覚えている。

だって彼女は家の近くの中学校に行くのでは無く、私立の中学校に入ると言ったから。

もう、お別れだと思ったら……涙が止まらなかった。

そして卒業式も終わり、教室で先生が泣きながら「皆、今まで……ありがとう」と言う言葉で俺達、6年1組は解散することになった。

彩は泣きながら、皆と楽しく会話していたのでタイミングを見計らっていた。

そんな時だった。

「なぁ、今から学校の七不思議調べね?」

クラスの中でお調子者だった奴が俺に喋りかけてきた。

面白そうと思った事と最期の思い出には丁度良いと思った俺は参加することにした。

そしてさすが、お調子者と言わんばかりに色んな奴に喋りかけ、最終的に参加するのは五人になった。ちなみに、その中には彩もいる。
彩は元々この話をお調子者と計画していたらしく、思い出にしたかったらしい。

「ってか、この学校に七不思議とかあんのかよ?」

確かに言われてみればそうだ。俺達が通っていた小学校は古かったけど、それと言った噂は無かったのだ。

「そうよね……あ、私お姉ちゃんに聞いたことがあるんだけど……別館の4階にある多目的室の鏡には将来の自分が見えるらしいよ!?」

「へぇ〜面白そうね」
「だな! これに決定!」
「よし、じゃあやろうぜ!」

こんな具合に皆もやる気になった。

彩が付け加えるように言葉を紡ぐ。

「でも……別館には一人で行かないと駄目なの……一人じゃ無いと意味が無いから」

空気がかなり重々しくなったのを覚えている。
その後、誰が最初に行くか? 
って話になって、じゃんけんで決める事になった。

そして……俺はじゃんけんに負けた。

勿論、負けた……という事は1番に行かなければならない。

「ほら、早くいけよ!」と皆に急かされ、俺はゆっくりゆっくりと別館に向かった。あまりの怖さに腰が引けそうだったけどそれを我慢してゆっくり、ゆっくりと歩みを進め、遂に4階に辿り着いた。

4階の多目的室は普段は使うことが無く、ほこりまみれで薄暗く、無意味な合わせ鏡があるので怖さが引き立っていた。

「うぅ……こぇぇ……」

ボソリと呟く。

「ピュ〜〜」と吹く風の音にかなりびびった。

そして俺は多目的室にある黒板に自分の名前を書き込む。自分の名前を書き込むというのは、自分がちゃんと来たよという印でもあるらしい。

この時、俺はある天才的な事を思いついた。

そして……俺はそれを実行する。

急いで合わせ鏡を覗き込んだが、怖さというよりもこれから先がどうなるかという好奇心が強くなり、俺が悠々と皆の元に戻った。

「じゃあ、次は彩の番だな。怖かったけど、頑張れよ」

「えっ……怖いとか無理だなぁ」と本音を呟きながらも彩はゆっくりゆっくりと別館に向かっていった。

まぁ、この時の俺の心拍数は前みたいにドキドキな訳。まぁ、その理由は告白したから。

『貴方の事がずっと前から好きでした。僕と付き合ってください。もし良かったら、今日の午後四時公園で待ってます。by俺』

と、黒板に書いたのだ。

彩が居なくなった今こそ家に帰り支度を済ませるべきだと考えた俺は家に帰ることにした。

皆には悟られないように「あ、今日……用事あるんだった」と言って。

こんなにも清々しい昼は無いだろうというぐらいにステップを挟みながら家に帰った俺は親が使っていたワックスを髪につけた。ワックスとか初めての挑戦だったのでかなり変だったけど。それに親が使っていたのはワックスと言ってもイケイケな感じというよりもハードワックスと言ったバリバリに固めるワックスだったらしく、かなり変な髪型になった。(髪型的には映画版ハリーポッターに出てくるマルフォイの初期に似ている)だが、母親が言うには「かっこいいよ」と笑いながら言っていたので俺は時間が過ぎるのを待った。

そして3時30分……俺は家を出た。父親が使っている時計をはめて。レディを待たせるのはいけないと思った俺は走ったね。全速力で。髪型はハードワックスだったので崩れる事は無かったけど、心の中はかなり揺れたよ。

もし、振られたらどうしようとか付き合えたらどうしようとか思ってさ。

そして公園に3時45分に着いた。

さすがに早く着すぎたなぁと思い、自分の服装をトイレの鏡でチェックして最高の自分を演出した。

時刻は3時50分。

子供達が遊び、本当にこれだから子供は困ると思った。無邪気に遊ぶ子供達を見て、自分もこんな感じだったんだなと思い返す。

時刻は3時55分。

ふふっ……そろそろだ。ドキドキするぜ。

時刻は4時。

約束の時は来た。

彩はまだかな? 

時刻は4時5分。

あぁ……緊張してんだな。ったく……俺も緊張してんだからお互い様だよ。とか言ってやろう。

時刻は4時10分。

まだか? 遅いな。だけど、2年間ずっと待ってたんだ……余裕だぜ。

時刻は4時20分。

あれ? そろそろ来てもいい頃だと思うんだが……

時刻は4時30分。

涙流してたから目が疲れて寝てたに違いない。

時刻は5時。

待たせるにも程があるなぁ。

彩、会いたいぜ……

時刻は5時30分。

6時になったら帰るかぁ……でも、彩は来てくれるはずだ!

時刻は6時。チャイムが鳴り、いつも帰る時間帯。だが、今回は帰りたくなかった。もしかしたら……彩が来てくれると思ったからだ。だけど……俺は母親を心配させない為に帰宅することを決意する。

2時間も待ったんだから……結果は分かった。


「彩は俺の事なんて……好きじゃない……うぅ」

涙が溢れ始める。こんなにも自分は相手の事を思っているのにこの気持ちは一方通行だというこの複雑な気持ち。やり場の無い怒り。そんな気持ちを抱えながら俺は家に帰宅した。

これが人生二回目の告白であり、俺のトラウマである。

✽✽✽
 そんなこんなで俺も晴れて中学生になった。はっきり言ってこの中学時代からは俺の世界は灰色の世界になった。自分の世界に映り込む景色は全て色が無くなり、見えるのは黒色と白色だけになった。美術のデッサンみたいな感じ。そうなった訳は、俺が中学に入ってから1ヶ月が過ぎようとしていた頃の話だ。小学校が同じで俺の元クラスメイトが廊下で喋っているのが聞こえてきた。

「あのさ、彩ちゃんね。今ね、彼氏できたみたいよ」

「いいなぁ〜やっぱり彩ちゃん可愛いからね」

「だよねぇ〜それにその彼氏がかなりのイケメンなんだって!」

「見たことあるの?」

「う、うん……少ししか見てないけど、噂によると二つ上の先輩でサッカー部のエースらしいよ」

俺の脳に『?』という文字が埋め尽くした。

そしてその『?』という記号が少しずつ、消えていく。消えていくのではなく、理解していくのだ。

彼女はもう……遠い存在にいるのだと。

 それからの俺は腐っていった。周りからは厨二病とか言われたけど、そんなのはどうでも良かった。腐りたかったし、狂いたかった。何かの幻想に囚われたかった。しかしそれは幻想であり、現実では無い。こうして、俺の精神は少しずつ少しずつ蝕めていく。小学校時代はまだ陽キャラの方だったのにいつの間にか、気づけば自分は教室の端にいる様な存在になった。元々、そんな性格だったのに彩という存在の為に無理をして陽キャラを演じていた。彼女の理想となる為に。彼女をしっかりと守る為に。

だけど……現実って本当に残酷だよね。

だって、もう俺以外に彼女の騎士はいるんだから。

✽✽✽
 元々典型的な馬鹿だった俺だが、ちゃんとやればできる子だったらしく、どうにか偏差値がそこそこ高い高校に入れた。高校に入る前は高校デビューとかやってみるかと思っていたけどすることは無かった。だけど……あとでやっておけば良かったと後悔することになる。小学校時代に見たあの時と同じような春だが、今年は違う。なぜなら、今年は満開の花びらだったから。そんな花を見て、綺麗だなと思いながらも高校の校門を潜り抜け、玄関に貼られた大きなクラス発表を見る。自分の名前を見つけ、そして俺は教室へと向かった。教室に入る前に深く深呼吸を2回していざ、出陣! 
と思ったが、踏みとどまる。このクラスで本当にやっていけるだろうか? この先、ちゃんとやっていけるだろうか? などと不安を胸にドアを開けた。

すると、そこにはセミロングの茶髪に茶色の瞳。透き通った鼻と艶っぽい薄いピンク色の唇をした女子生徒が俺の視線を奪った。

俺の視線はもう、既に奪われていたと言ってもいいだろう。だって俺は彼女に小学生の頃からずっと好きだったんだから。ずっと彼女の為に頑張ってきたと言ってもいいのだから。

「ははは……」下を俯きながら、微笑した。

あまりの嬉しさに。それとこの世界の残酷さに。

この日、俺の視界が少しだけ色が付きました。

 彼女と親しくなっていく内にだんだんと俺の視界は色を取り戻していった。

だけど……また不幸がやってきた。

「えっ? 彩ちゃん……やったね!」
そんな声が昼食を取っている俺の耳に聞こえてきた。

「あぁ〜〜聞いちゃったんだ……」
彩の顔がぽっと赤くなった。

俺はその表情がどんな時になっているか知っている。

この顔は……この表情は、この仕草は

彼女に彼氏ができた時の反応だ……

本気で死のうと思った。なぜ、俺が一歩を踏み出す前に誰かが一歩を踏み出すんだよ! と、叫びたい。喚きたい。だが、そんな事をやっても意味が無いのだ。彼氏持ちでる彼女にこれ以上、関わる事はしたくないと思ったし、迷惑をかけられないと思った俺は彼女と喋ることを止めた。必要最低限にしたのだ。元々の俺等の関係をリセットするように。

✽✽✽
 2年生になった。特にあの日から変わってはいない俺と彩の関係は時間が経つたびにその空いた隙間は大きくなっていき、歪みを生み始めた。だが、あることが起きた。

彩が最近元気が無いという事だ。彼氏と別れたということなのか?

これはチャンスだと思った。俺にとっての、自分にとっての最後のチャンス。自分がきちんと初恋の人に向けて贈る言葉。
罰ゲームでも無く、文字でもなく、自分の口で自分の真実を語る言葉。

もう、逃げられない。

もう、避けられない。

過去の自分の為にも未来の自分の為にも、そして何より今の自分の為に。

自分の世界に色を付けてくれた彼女に言おう。

『七年間ずっと貴方が好きでした。僕と付き合ってください』と。

しかし、この時の俺は絶好のチャンスを失ってしまう。失うというよりも、自分で捨ててしまった。あの日、自分がずっと彼女を待ったのに来なかったあの日の事を思い出し、胸が張り裂けそうだった。

あの時と同じ苦しみを、あの時と同じ悲しみを、あの時と同じ……と思う気持ちが胸一杯に広がり、自分の胸を締め付ける。

自分が今からやろうと思っていた行為を引き止めるかのように。

だけど……だけど……俺は彼女が好きなんだ!

彼女にきちんと面と向かって「好き」と言ったのは遊びで言っただけ。

あの時……真面目に言っておけば……

そうすればあんな後悔をしなくて済んだのに。

それなのに……それなのに……

こうして、俺は1週間の間悩み続けた。

そしてある答えを導いた。

『もう、彼女に関わらない』

それが自分の為にもなるし、彼女の為にもなると思ったからだ。彼女は俺をただのクラスメイトと思っているだけであり、男として見ていない。逆に俺は、彼女を初恋の相手として見ていて、クラスメイトとして見ていない。

ならば、その関係を壊す為にはこの方法が1番リスクが少ないと思ったのだ。

「過去の俺……ごめん……諦めたよ」

そう言いながら、ふと目に入った小学校の卒業アルバムを取り出す。自分の顔が幼かったりしていて、結構恥ずかしい気持ちになったり、こんな事があったなと思いつつ懐かしかった。

そして最後のページ。

本来ならば、友達や先生が書き込んでくれるはずのページ。

しかし、俺のページには何も書かれていない……はずだった。

「書いている……文字が書いている……」

この文字は……ブラックライトペンで書かれたものだ。ブラックライトペンは俺が小学校の時に流行ったペンだ。ブルーライトを当てる事によって、反射して文字が見える仕組みだ。だが、もう年月が経ち、文字が浮かび上がったのだろう。

俺は慌てて、ブルーライトを当てる。

そこにはこう書かれていた。

『私は貴方の事がずっと好きでした。2年間の間、ずっと貴方を見ていました。卒業して離れ離れになるけど、私は一生貴方を愛しています。もし、貴方が私と共になりたいのなら私は校舎で待っています……by彩』

涙がポロポロと溢れ出てくる。今まで泣けなかった分全てが溢れ出ていく。

今まで隠してきたこの感情を。

「なんだよぉ……あの時の俺が1番馬鹿だよぉ」涙と共に鼻水まで出てくる。

「うぅぅっ……なんで、なんで、俺は、気づかなかったんだぉ……」

自分に対する反省。怒り。

それよりも今の自分にしなければならないこと。

それは……七年間の初恋を終わらせることだ。

俺は走る。ただ、がむしゃらに走る。彼女がどいるかどうかも分からないけど、思い出の場所に向かって走る。

彼女に返事を伝えないと……

彼女に……俺の気持ちを伝えないと。

文字では伝わらなかった想いを伝える為に。

着いた先は小学校。自分達がいた頃には古かった遊具も新しくなっている。そして何より校舎も変わっている。だけどそこには当時とあまり変わっていない無邪気な顔をした初恋の人がいた。

「ハァハァ……待たせなぁ……今まで……」
走ってきたせいか、息切れが激しい。

彼女の目からはポロポロと涙が落ちる。

「や、やっと……気づいてくれたんだね……」

そして彼女が言葉を紡ぐ。

「私、南彩は……」

言葉を続けようとしていた彼女の唇を俺の唇で止めた。

「うぅ……反則だよ! これ!」
顔を真っ赤にして怒っている。

「反則はそっちだろ! こういうのは、男から言うものなんだよ!」

そして、俺が言葉を紡ぐ。

今までの自分に対する感謝を込めて。

「貴方に七年間ずっと恋してました。僕と付き合ってください!」

「も、もちろん! こちらこそ、よろしくお願いします!」

彼女の表情は小学生の頃の様な無邪気な笑顔だった。

コメント

  • ノベルバユーザー603850

    特に登場人物たちが大きく動くエピソードは 読んでいて退屈させないのでおすすめでした。
    カッコ良すぎる!!

    0
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