異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)
54 . 夢?
「本当にここどこだよ…」
諦め半分で呟く。
いろんな方向へと歩き回ってはや30分。向こう側にある筈の草原を囲む森林には一切近づいてる気がしなく、しょうがなくその場にへたり込んだ。
「はぁぁ…」
深くため息をついた。暑くも寒くもないぬるーい風が頬を撫で周りの草を揺らす。
と、どこからか啜り泣くような声が聞こえた。
「……」
啜り泣く声は恐怖心よりも母性本能を刺激されるような…子供の声だった。
どうやら後ろの方から声がする。
立ち上がってドレスについた草を払うとそちらへと歩き出す。
ちょうど聞こえるところの背の高い草をかき分けた。
そこにいたのは、小さな女の子だった。
「おかぁさん…」
ここでは珍しく美しい白髪をセミロングで垂らし、すこし汚れた白のワンピースを着て体操座りをし顔を伏せて泣いていた。
「どうしたの?」
堪えきれない良心がその子に話しかけた。女の子はこちらに気付いたのかピタッと泣き止み鼻をすすった。
「お母さんが…いないの…グスッ」
「そっか…一緒に探そ?」
思わず差し出した右手を女の子はぎゅっと握り返した。そしてふわりと風を巻き上げ顔を__
「ほんと?」
綺麗な幼児の顔ににつかわない大きく黒く深い目が私を覗き込んだ。
「…ッ」
恐怖心なんてざらじゃない、それのもっと、もっと上さえも行く深さ。
ずっと見ていては本当に吸い込まれてしまいそうで目をそらそうとした。
…そらせない。
まるで美しい絶景に釘付けになっているかのように…実際はまったくの逆だが、まったく視線が動かせない。
深い瞳に固定されていた。
と、そこで本当に、私の意識は吸い込まれるようにぐるぐると瞳へと回り始めた。
そういえば私は聞いた事がある。
生物は進化の為に恐怖を欲すると。
暗闇に包まれた私の視界の中でポツリと誰かの声が響いた。
「みーつけた」
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