異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)

N

43 . 重要機密?


「んで、この会議は何をするの?」
「そうですね、報告とかでしょうか」
元の様子に戻ったマイが間抜けなことを抜かす。
アホか。
「では報告はその紙で十分ですので、一番重要な本題に移させていただきます」
そういって立ち上がったのはイオだった。青いフードを翻し、奥の方の黒板のような板を引っ張り出してくる。
「今から申し上げるのは国家重要機密ですので、アイナ様、そして新人のソレラさん等心してお聞きください」
一体全体何が始まるのだろうか。机に肘をつけに頬杖し前のめりになる。
「ここ最近、禁忌の場所にヴァルキュリアが集まる傾向にあります。つまりそれはあの場所に封印された彼がそろそろ目覚めるということ」
イオが黒板に白いチョークで書いた魔法語は浮き出て目の前に絵が現れ一つ一つが宙を動き出す。
「その昔、オーディンという男が謀反を起こし処刑されました」
チョークの筆彩が観衆の前で一人の若い男が磔にされ燃やされている図ができ、白色の炎が彼を包んだ。
「しかし彼は死ななかったのです。謀反を起こしただけでなく禁忌にあたる禁断の魔術を使い、神へと転生していたのです」
包まれていた炎が一瞬で消え火傷の跡も見当たらない姿の男が磔を自力で壊し、街や山等このあたり全てで暴れまわり焼きはらうというアニメーションが流れる。
「神、いえ、堕落神になったオーディンは今も有名なアスカ教の生き仏となったアスカ・ラティオスによって封印されました」
突然現れたポニーテールの女性が瞬く間に羽根のない体で飛ぶ男を切りその身体が巨大な魔法陣にかこまれる。ボッと音を立ててチョークのアニメーションは消え粉がパラパラと下に落ちた。
「そしてオーディンが封印された場所、それが禁忌の場所です。そしてヴァルキュリアは神となったオーディンに使える戦士です」
再度イオは黒板に何かを書く。白い鳥のような羽根の生え、鎧に身を包み飛んでいる沢山の女兵士が結界で守られている何もない土地の周りに集まっている絵が現れた。
「これが今の状況です。この数だと近々…早くて半年、遅くて2年で彼が復活します」
その言葉に何やら皆がシンとし深刻な顔をした。
「はい、質問」
「アイナ様、どうぞ」
シンとした空気に疑問をぶつけるべき手を挙げるとイオは手のひらをこちらに向けた。
「もしその、オーディンが復活したらどうなるの?」
私のその質問に俯き少し悔しそうな顔をしたイオは震えた、且つはっきりとした声でこう告げた。



「全員死にます」



「ハァ?」
咄嗟に漏れた言葉を隠す術もなくそのまま垂れ流す。
「計算上、500年 の眠りについていたオーディンが復活すれば500年分のエネルギーが爆発し、その半径3キロ辺りは跡形もなく消し飛びます。そして有り余った力でオーディンはこの国を滅ぼすことでしょう…」

この世界に来て一週間足らず。
いきなりなんだか大変なことになりそうだ。

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