異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)

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24 . 才能無しの魔王様

「そういえば今度からは魔法の座学は私、実技はメイが担当します、いいですか?ではまず目を閉じ、魔力の流れを感じ取ってみてください」
「いやまずいきなり難しいこと言われても困るんですが」
「なに言ってるんですか、幼少期から皆出来ますよ」
あの後中庭まで引きずられた私は半端ヤケクソで魔法の講義に励んでいた。言われた通りに目を閉じてなんとなくイメージしてみると何だかその辺りに白と黒、そして赤青緑等のカラフルな湯気の様な靄が見えた。
「なんか見えるんだけど。靄みたいなのが」
「それがアイナ様の魔力です。ちなみに何色ですか?人により扱える属性が違うのでそこのとこ_」
「え?超カラフルなんだけど」 

「は?」
「…超カラフル」

そこでアイは頭を抱え混んで何かを考えている様に屈んだ。スクッと立ち上がると少し驚いた様な困った様な笑いを交えた顔をしていた。
「つまり…全属性、という事、でしょうか」
「珍しいの?」
「珍しいもなにも、今まで報告された事ありませんよ…」
ハァ、とアイはため息をついた。
「人によって生まれつき使える属性が決まってるのです。ちなみにエイル様は火属性と氷属性を兼用させた奴でしたね。それでも十分珍しいのですがここまでくると…」
「へぇー。ってかエイル様って誰だっけ」
苦笑いでアイに問いかけると呆れたような顔をされた。アイは中庭の低木に咲いている小さな花を手に取るとその露が滴り落ちた。
「なに言ってるんですか、アイナ様の変え月前の魔王ですよ。つまりその身体です」
「あっ、そういえばそうだったね」
私は人の名前は早々覚える人ではない。顔と名前が一致しないという奴だ。
「ふぅーん、全属性ねー」
「はい。じゃあ試しに『フレアボール』でも撃ってみましょうか」
「ふれあぼーる?」
「簡単に言えばファイヤーボールですね」
よくある火の魔法ってやつか。
「ではまず、そうですね。まだ慣れていないので目を瞑り先程の赤色の靄を手前に集めてみてください」
言われるがままに目を閉じ先程と同じ様にイメージを巡らす。そして現れた靄を見えない力でかき集め手前に固めた。
「んで、どうするの?」
「その状態をなるべくそのままにして目を開けてください。そして利き手を向けたい方向へ突き出してください」
「んえ、杖とかいらないの?」
杖が無いとなんか締まらない気がするのだが。
「上級魔法になると杖やらメイのような魔導書が必要になりますが今のアイナ様には必要ありませんよ」
「あ、そう」
つまりてめぇは雑魚だと…。
多少凹みながら言われた通り右手を前に突き出し手を広げた。
「それで手前に集めた魔力を手のひらに貯め『フレアボール』と唱えてください」
人生初の魔法!!ドキドキとワクワクが止まらないぜ!!それでは渾身の魔力を込めて!!!


「『フレアボールッ!!』」


私の向けた手のひらから生まれた大きな火力、否、火柱は地面から高く舞い上がりその少し後ろで空中で花火のような何かの小さな爆発が起こり辺りは一瞬の光で埋め尽くされ__


たりはしなかった。


「えっ」
「えっ」
思わずそうハモってしまう程。

私の突き出した右手から出たのは申し訳程度の雀の涙ほどの火力だった。ボッと小さく音を立てると直ぐに消えた。

「「……」」

辺りは沈黙に包まれる。

「もういい異世界なんて嫌いだッ!!!」
「アイナ様ああああああ!!!!」
猛ダッシュで自室へと向かった。

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