異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)
18 . 三姉妹の事情
カコーン、等とそれこそ風呂!という音なんてなるわけなくチャプチャプという水音が風呂場を埋めた。
いや、厳密にいえば風呂場というか、もはや風呂屋…。この広さで普通のお家一個立てれるであろう広さ。石畳のひんやりとした床が心地よく風呂の囲いの岩の形が寄りかかりやすい。なんでこんなところは和風なのだろうか。ふむ、風呂屋貸切と思った方がいいのだな。
あの後ケーキを買って帰り、疲れ果てて風呂があるというので入ってみたらこのさまである。ちなみに今食べたら乙女が台無しになるというメイの勧めでケーキは明日食べることとなった。
「これ露天風呂あるんじゃない?」
壁の右側に元から曇ったような大きなガラス窓がありその向こうに何やら湯気が見えた。ざぱぁと音を立て風呂を上がり出口を探すが奥の方にあっさりとあった。扉を開くと暖かかった室内に涼しい秋風が舞い込んだ。
「おお〜」
そのまんま温泉の露天風呂だった。囲いは岩で構成されていて貫禄のある植物などが生えている。それなりの広さで竹の目隠しが壁となっていた。
「そのまんまじゃん」
感心しながら露天風呂に足から入る。露天風呂というのは冬に入るのが最高の楽しみ方だと私は思っているが他の人はどうなのだろうかと考えてみた。鈴虫に似た音がどこからか聞こえ秋だなぁと思わせる。
「失礼しまーす!!」
「…します」
「しまーすっ!」
「…え?」
そんな静かな秋の世界を蹴り破ってきたのは空気の読めない信号機ちゃんだった。
「あ、あんたら寝たんじゃなかったの!?」
「嫌ですねーアイナ様、裸の付き合いですよ。はだかのつ、き、あ、い!」
「おねぇちゃんに誘われたのできたまでです」
「メイはあんまりお風呂好きじゃないです〜…」
寝ろよ。真っ先にそう思ったが何も言わせまいというように3人は次々とお湯へ浸かった。
「やっぱりここの温泉はいいですね。絶対いい成分入ってますよ」
「そう?じゃあ胸大きくなる成分とか入ってたら嬉しいね!」
この空気の読めない金髪ちゃんの頭は無事なのだろうか。アイに今にも殴られそうになっているが当方人は気づいていないのかニコニコしている。
「てか思ったんだけど、なんでこんな和風なの?」
「わふう…?は存じ上げませんが、古代人間の国にあった文明を真似しているそうですよ。風情があって私は好きです」
さすがアイ、わかってるね。一方残りの二人はぽけーっとしていた。
「じゃ!私上がりますね!!」
「は、早くない?」
浸かってから1分も経たぬうちにザパァッとあがったマイ。幾ら何でも早すぎるだろう。
「えぇ?こんなもんじゃないですか?ね!アイ行こう!」
「はいはい…。私も長風呂派なのですがいつも一緒に上がらされるんですよ」
とほほ、というような顔をしてアイは風呂を上がるとテトテトとマイの後に続いてった。
ガチャンと音がなり扉が閉まる。その扉の奥の方から声が聞こえた。
「ちょっとアイ!私のパンツないんだけど!」
「知らんわ!なんで持ってこんかったんやねん!おねーちゃん自室までノーパンやな!みんなに言いふらさんと!」
「な、何言ってんの!アイのあほー!」
思わずフッと笑ってしまう。そういえば今日の朝アイが最初関西弁だったのを思い出す。素は関西弁で喋るということなのだろうか、いつもは真面目なお堅いアイが本当は関西弁でバンバンツッコミ入れていると思うと想像してるだけでちょっと笑えてきた。
「まったく…ふふ、メイ、あんたのお姉さん達っていつからああなの?」
冗談混じりで聞いたつもりが緑の長髪を後頭部で纏めたそれなりに…豊かな少女は意外な事を口にした。
「そうですね…。マイお姉様が8歳ぐらいの頃海で溺れた時以来でしょうか」
心の中でん?と思うがぐっと口を閉ざす。
「それまで今のアイお姉様以上に能力的にも人格的にも完璧だったのですがそのあとガラリと人が変わりましてね。変え星が行われたのかとみんな疑ったのですがまず私たちは鬼人ですから、魔族ではありませんし人格は変わってしばらくの記憶喪失の後ほぼ完全に記憶喪失は治ったと言われたのでそのままなのですよ」
「そしてその後全くダメになったマイお姉様の代わりをやらなければとアイお姉様がとても頑張り今に至るわけです。残り物のメイは普通の魔導書使いなのですよ〜」
赤の瞳がこちらを見て月光により怪しく光った。
「なるほどね、解説ありがとう。私はもう上がるけどまだ入ってる?」
「メイは長風呂派なのです、お構いなく〜ですよ!」
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