異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)

N

15 . 星屑


準決勝戦、なう。
所々というかこの大広間の壁とか傷だらけ、なう。
軋んでる、なう。
「メイよ…」
「はい!なんですか?」
「今何時だ…」
「今はですね…9時です!」
舞踏会、否、地獄の武道会が始まって三時間。ずっと私はこのひな壇の様なステージの真ん中の椅子に座りソレを眺めていた時には不正が発覚して暴れまわったどこかの魔王の一応結界役だった緑髪のメイドっこがいれば、驚異的強さで決勝戦へと進めたどこかの魔王の赤髪のメイドっこもいるし、途中敗退となったが足軽く飛び回り壁に穴を開けまくったどこかの魔王の金髪のメイドっこがいたり。とりあえず色々いたなぁ、変な人。
全員身内やん。
「メイよ…」
「今度はなんですか?」
「ちょっと夜風に当たってくる…」
そう告げると出口あたりにあるバルコニーに向けて席を立った。人混みの中をかき分け行きついた窓からはカラッとした涼しい秋風が吹き疲れを少しばかりか吹き飛ばす。バルコニーへと足を踏み出したが思ったより広さがあった。そして先着がいた事に気づく。
「あぁ、ロゼッタか」
ウェーブのかかった茶髪の少女は振り向くと少し驚いた様な顔をして頭を下げる。
「お邪魔なら出て行きますわ」
「構わないよ」
そうでございますか、と向きを戻し頬杖をつくロゼッタの隣で私も頬杖をついた。空を見上げれば無数の星々が輝き天の川を映し出している。最後にあっちの世界でこんな満天の星空を見たのはいつだっただろうか。田舎の山に幼馴染の女の子と親と一緒にキャンプにいった時以来だろうか。もっとも、それは私が8歳とかの時の話なのだが。ともかくその東京では絶対に見られない星空に飲み込まれた。
「わたくし、この様な血生臭い遊びはあまり好みませんの」
「私もそうかなぁ。実際に見るのはちょっと気分悪くなっちゃう」
実際に…?と首を傾げるロゼッタをよそに夜空を見上げた。

「魔王様…、アイナ様は星がそんなに珍しいんですの?」

唐突な呼びかけに微かに声を絞り出す。
「珍しくはない。でも、ここまで多く見るのは久しぶりかな」
少しの微笑を浮かべそう言うとこちらを見つめていたロゼッタも微笑んだ。
「そうですか」

「あ、流れ星」

光る一筋の小さな線が一瞬で現れ消える。
儚いからこそ美しいとはこの様な事なのだろう。
「今日はよく流れ星をみるわね。いつも見えてないだけなのかもしれないけど」
「そういえば今はアスカ流星の時期ですわね。ご存知でしょうか?流れ星はですね」


「星屑が落下して光っているのですわ」


「でもいつもは浮遊しているだけの星屑がこうして綺麗な物になれるのはなんだか面白いですわよね」
「…そうだね」
でも、その後燃え尽きて消えてしまう。その言葉を飲み込むと満天の星空を眺めつつ、長い長い今日に思いを巡らせた。


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