異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)
11 . 表面上と裏の顔
「ここがスラム街、ねぇ…...」
思い浮かべた通りの街並み、いや。ゴミ溜め。
トタン板を寄せ集めて作ったような簡易的な家が並んでいる。瀕死で倒れている人々なんてざらじゃないようで歩いているボロ服を着た人々は見向きもしない。先程の賑やかな繁華街とは打って変わって、世界の悲惨な現状を伝えているようだった。
「この地方の問題は貧困と富民の経済格差です。特にここ最近、統治主のベンカード家の代替わりが行われ地方的にも費用が無くなってきているとか。今年は夏の異様な寒さにより飢饉もございました、ここの貧民達は苦しいばかりでしょう」
後ろを歩くアイが始めた説明に耳をすます。
「じゃあ、私の食事の格を2段階ぐらい下げて結構、それだけで結構浮くでしょ。お昼ご飯でさえ高級レストランみたいだったんだから。あと城の食料を配給して、ベンカード家には献金を。それと他の地方の良心的な貴族達に募金をお願いしてみてね」
「...…承知しました」
「良いのですか?食事の格を落とせば今までより6000ペイスほど浮きますが何もそこまで…」
「ここら辺の物価はどんな感じ?」
「パン一個80ペイスです」
「上出来よ。てかなんでそんなに浮くのか不思議だわ」
「しかし....…」
私は心配してくれているのか何度も引き止めようとしてくるマイにくるりと向き直った。
「別に私は広い別室に構えてある高級ドレス専用のドレッサーの中を全部売り払ってもいい。逆にそうしてもらいたいかな。前のあのワガママそうな魔王がどんな政治をしていたかは知らないけどマリーアントワネットみたいにはなりたくないしね」
「...…そうでございますか。その、マリーなんとかネットさんがどなたかは存じえませんが」
だよね。
「というかアイナ様、そちらの方向は路地裏ですよ。人通りのある方を通られた方が…...、あと後ろ歩きしてますけどこけたらいったいどうするんですか」
「まぁ大丈夫でしょ」
そう足を後ろに出すとコツンと何かにぶつかり___
「____だと、思っちゃった?」
突然現れたのは私を背後で抑える黒髪の男とニヤニヤとした顔でこちらを見る金髪の長身の男。
「「「アイナ様ッ!!」」」
「えっ、ちょ…...!」
更にもう3人現れ、私と3人の間に入り3人を上からニタニタ眺め回す。
「よぉ、かわいこちゃん。元気か?」
「ええ。あんたのせいで元気ではないわね」
そう言うと金髪の男は少しびっくりしたような顔をしたがすぐに笑みを増して浮かべる。
「そうかい。この状況で減らず口を叩くほど余裕があるとは面白いな」
「あら、お褒めいただきどーも」
「そうだ、一つ教えといてやるよ。こんなところで見えやすい首にそんな大きな光ものつけて歩くなんて自殺行為だぜ?」
「そう、ご親切にどうもありがとう」
男は私の首に下がった大きな青い石のネックレスを引きちぎった。そして私の首に手をまわすと
「どういたしまして、来世では気をつけろよ」
そうニタリと笑い力を__
「『拘束魔法、インディペディア』」
暗い路地裏に冷たい声が響いた。
「『毒魔法、ポイズンドロップス』」
「ぐあッ...…!?」
前の方から声が聞こえるが男が邪魔で何が起こっているのか見えない。少し焦ったような顔の男は手を離し後ろを振り返る。
「お前ら何をし__!?」
そこには3人の男が倒れていた。
「どういう事だ!?」
ひきつった顔の男の向こうには一人の少女がいた。ローブから緑の三つ編みを揺らし、いつもはかけていない筈のメガネをつけ、その片手には分厚い辞書のような本を開いている。
「…メイ?」
「ひぃ…...っ!?」
私の背後から声が上がる。まだ抑えられているので何が起こっているのか見えないが大体は予想はついた。ゆっくり首を動かすと化け物を見るような顔をした大柄な男の喉元に当てられたナイフから白い腕が伸びている。その先には金髪の三つ編みの少女が男を睨みつけていた。
「私達の主人に手を出すのはやめていただこう、下賤の者よ」
そう告げたのは長い槍を固まった金髪男の喉元に当て仁王立しているアイだった。
「お、お許しください!」
そう言って持っていたネックレスを投げて逃げ出した金髪男の後を追うように大柄な男も駆け出し、倒れた3人は取り残される。それを見てメイはため息をついた。
「『解毒魔法 ポリスィス』」
メイがそう言うと3人がすぐさま立ち上がり悲鳴をあげて逃げていく。
「アイナ様、ネックレスをどうぞ」
槍を片手に落ちたネックレスを拾ってこちらに渡したアイを見て私はポツリとつぶやいた。
「かっこいい...…」
「「「え?」」」
「めっちゃかっこいいじゃん!!!?? なんでこんなの今まで黙ってたの!?」
「い、いや、見せるものではないですし…...」
「めっちゃかっこいいんだけど!! てか魔法とかあんの!?マジで!? てかその槍何!? どこから出してきたの!?」
「こ、これは魔導グッズの袋でどんな大きさの物でも入れられるのですよ」
「何それすげぇ!!」
そこでハッとしたような顔でメイが眼鏡を外し時計を取り出した。
「って、アイナ様。もう夕方ですよ!! 晩餐会に行かなければ!」
「えー!? 世界塔は!?」
「また今度でいいじゃないですかー」
「がっくし…」
「というかやばいですよ。一旦城に戻って準備しないといけないです!」
「そんな時間押してる感じ?」
「「「はいっ」」」
こんなバタバタするのが毎日続くと思うとなんだか楽しいな、とか心の隅で思ってしまうのだった。
思い浮かべた通りの街並み、いや。ゴミ溜め。
トタン板を寄せ集めて作ったような簡易的な家が並んでいる。瀕死で倒れている人々なんてざらじゃないようで歩いているボロ服を着た人々は見向きもしない。先程の賑やかな繁華街とは打って変わって、世界の悲惨な現状を伝えているようだった。
「この地方の問題は貧困と富民の経済格差です。特にここ最近、統治主のベンカード家の代替わりが行われ地方的にも費用が無くなってきているとか。今年は夏の異様な寒さにより飢饉もございました、ここの貧民達は苦しいばかりでしょう」
後ろを歩くアイが始めた説明に耳をすます。
「じゃあ、私の食事の格を2段階ぐらい下げて結構、それだけで結構浮くでしょ。お昼ご飯でさえ高級レストランみたいだったんだから。あと城の食料を配給して、ベンカード家には献金を。それと他の地方の良心的な貴族達に募金をお願いしてみてね」
「...…承知しました」
「良いのですか?食事の格を落とせば今までより6000ペイスほど浮きますが何もそこまで…」
「ここら辺の物価はどんな感じ?」
「パン一個80ペイスです」
「上出来よ。てかなんでそんなに浮くのか不思議だわ」
「しかし....…」
私は心配してくれているのか何度も引き止めようとしてくるマイにくるりと向き直った。
「別に私は広い別室に構えてある高級ドレス専用のドレッサーの中を全部売り払ってもいい。逆にそうしてもらいたいかな。前のあのワガママそうな魔王がどんな政治をしていたかは知らないけどマリーアントワネットみたいにはなりたくないしね」
「...…そうでございますか。その、マリーなんとかネットさんがどなたかは存じえませんが」
だよね。
「というかアイナ様、そちらの方向は路地裏ですよ。人通りのある方を通られた方が…...、あと後ろ歩きしてますけどこけたらいったいどうするんですか」
「まぁ大丈夫でしょ」
そう足を後ろに出すとコツンと何かにぶつかり___
「____だと、思っちゃった?」
突然現れたのは私を背後で抑える黒髪の男とニヤニヤとした顔でこちらを見る金髪の長身の男。
「「「アイナ様ッ!!」」」
「えっ、ちょ…...!」
更にもう3人現れ、私と3人の間に入り3人を上からニタニタ眺め回す。
「よぉ、かわいこちゃん。元気か?」
「ええ。あんたのせいで元気ではないわね」
そう言うと金髪の男は少しびっくりしたような顔をしたがすぐに笑みを増して浮かべる。
「そうかい。この状況で減らず口を叩くほど余裕があるとは面白いな」
「あら、お褒めいただきどーも」
「そうだ、一つ教えといてやるよ。こんなところで見えやすい首にそんな大きな光ものつけて歩くなんて自殺行為だぜ?」
「そう、ご親切にどうもありがとう」
男は私の首に下がった大きな青い石のネックレスを引きちぎった。そして私の首に手をまわすと
「どういたしまして、来世では気をつけろよ」
そうニタリと笑い力を__
「『拘束魔法、インディペディア』」
暗い路地裏に冷たい声が響いた。
「『毒魔法、ポイズンドロップス』」
「ぐあッ...…!?」
前の方から声が聞こえるが男が邪魔で何が起こっているのか見えない。少し焦ったような顔の男は手を離し後ろを振り返る。
「お前ら何をし__!?」
そこには3人の男が倒れていた。
「どういう事だ!?」
ひきつった顔の男の向こうには一人の少女がいた。ローブから緑の三つ編みを揺らし、いつもはかけていない筈のメガネをつけ、その片手には分厚い辞書のような本を開いている。
「…メイ?」
「ひぃ…...っ!?」
私の背後から声が上がる。まだ抑えられているので何が起こっているのか見えないが大体は予想はついた。ゆっくり首を動かすと化け物を見るような顔をした大柄な男の喉元に当てられたナイフから白い腕が伸びている。その先には金髪の三つ編みの少女が男を睨みつけていた。
「私達の主人に手を出すのはやめていただこう、下賤の者よ」
そう告げたのは長い槍を固まった金髪男の喉元に当て仁王立しているアイだった。
「お、お許しください!」
そう言って持っていたネックレスを投げて逃げ出した金髪男の後を追うように大柄な男も駆け出し、倒れた3人は取り残される。それを見てメイはため息をついた。
「『解毒魔法 ポリスィス』」
メイがそう言うと3人がすぐさま立ち上がり悲鳴をあげて逃げていく。
「アイナ様、ネックレスをどうぞ」
槍を片手に落ちたネックレスを拾ってこちらに渡したアイを見て私はポツリとつぶやいた。
「かっこいい...…」
「「「え?」」」
「めっちゃかっこいいじゃん!!!?? なんでこんなの今まで黙ってたの!?」
「い、いや、見せるものではないですし…...」
「めっちゃかっこいいんだけど!! てか魔法とかあんの!?マジで!? てかその槍何!? どこから出してきたの!?」
「こ、これは魔導グッズの袋でどんな大きさの物でも入れられるのですよ」
「何それすげぇ!!」
そこでハッとしたような顔でメイが眼鏡を外し時計を取り出した。
「って、アイナ様。もう夕方ですよ!! 晩餐会に行かなければ!」
「えー!? 世界塔は!?」
「また今度でいいじゃないですかー」
「がっくし…」
「というかやばいですよ。一旦城に戻って準備しないといけないです!」
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