話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

遅熟のコニカ

紙尾鮪

79「シュートパンドーラ」

 「ハミセト、お前は何を言ってるんだ。冗談も程々にしろ」
 コニカは、sueと名乗るハミセトに疑問しか浮かばなかった。
 本来ならばふざけていると思うのだろうが、雰囲気と異変を感じる前の光景が伝えていた。

 これが、sueという物なのだろうかと。
 故に、真偽を問う。
 もし冗談であれば、そのままでいい。

 本当であれば、それに沿った行動を行えばいい。
 もし、騙ったのならば。

 「理解出来ないのも無理はないでしょうね。私と会話をした物は毎回同じ反応を示しますよ」
 ハミセトは、いやsueの反応は実に、淡々としていた。
 それ故に、コニカは分かった。

 別人であると。

 別であり、見てくれは同じではあるが、全くの質と雰囲気と生気が変わった。
 sueがこれかどうかは理解は出来ない。

 「お前はなんだ」
 一つ、コニカは質問をした。
 核心を探るたった一つの質問。
心音鳴る中、コニカは平静を装いながら、凛とした姿を装いながら立っている。

 「とてもユニークな質問ですね。しかし、私と会話をした者のほとんどがその質問をします」
 口調はとても明るく、声だけで想像するならば、笑みを溢している様に聞こえるが、眉も動かさず、瞬きもしていない。

 「そうですね。ある者は代弁者、ある者はメールと呼んでいたりしていましたね」
 コニカは、ただ聞くことしか出来ない。

 「私を作ったパンドーラは、初めてsueシューと呼んでくれたため、自ら名乗る場合はsueシューと名乗る様にしていますよ」
 少し、また嬉しそうにsueは言った。

 「先程から、パンドーラと言っているが、パンドーラとは何なんだ」
 コニカは、少し引っ掛かったというか、気になった。
 一瞬、笑ったような音が鳴ったが、コニカの鼓動の音が消した。

 「パンドーラですか。彼らは様々な者達に嫌われていましたね。共に彼等も、様々な者達を嫌っていましたよ」

 「補足はいらない、本文を言え」
 しばらくの間を空け、sueはもう一度語りだす。

 「パンドーラとは、とあるコトクの組織名、そしてそれに属する者達の俗称です」
 その瞬間、あの会合をコニカは思い浮かべた。
 であれば、コトクとは魔女の子孫であるとコニカは仮定した。

 「パンドーラが結成されたのは、今から450年前程です。初期の活動は主に自らの研究です」

────────────
 コトクは、人知から外れた力を持っていました。
 それを彼らはルキャドや由能ユイノウと呼んでいました。

 パンドーラは、その力について解き明かそうとしていました。
 そして様々な事が分かりました。

 その力には遺伝性がある事や、無から有を生み出す事や、その力を使う為の何かがあり、それは個々によって変わる事など。

 私はその力によって生まれたんですよ。

 そして転機が訪れます。

 パンドーラの構成員がほぼ全て三世代目になった頃。

 ティーグルブラン王国、現在のティーグルブラン帝国の王、ロゥイシュ・ジュゥドゥネ王はティーグルブラン王国の領地に存在するコトクを全て殺せという伝令を出しました。

 その夜、コトクの娘が襲われました。
 その事がきっかけで魔女狩りと呼ばれる物が激化したと言われています。
 しかし私が記憶するには、そのコトクの娘は自殺だと記憶しています。

 魔女狩りと呼ばれる物が激化する中、ティーグルブラン王国のコトクは順調にセイリョウククノチにへと移動していました。

 ティーグルブラン王国にいたコトクは全てセイリョウククノチにへと移動出来た時、ティーグルブラン王国には死骸の山が積まれ、死臭にまみれていました。

 その後、ロゥイシュ・ジュゥドゥネは皇帝と名乗るようになりました。
 ティーグルブラン帝国の誕生ですね。

 しかし、その後皇帝は一年も経たずして失踪しました。

 私を作ったパンドーラは、ティーグルブラン帝国に残りました。
 その後パンドーラの構成員は急増しました。

 そしてパンドーラはその後急速に活動を活発化させました。
 主に研究から活動を殺しに変えました。

 少なからずとも、コトク達は自分達を殺そうとした事に腹が立っていたのでしょうね。
 魔女狩りによく似た人間狩りを行うようになりました。

 最初は遠慮や、罪悪感に苛まれるコトクも多かったですが、コトクには遺伝能力がとても高いという事もあり、それら不必要であると判断したのでしょうね。
 私が記憶する限りはセイリョウククノチにはそれらを持ち合わせたコトクはいません。

 100年後コトクは、選択を迫られていました。
 その選択とは、コトク以外との交配です。

 保守派のコトクはその事を決して許すことはなく、拒み続けました。

 コトクはとてもプライドの高く、自分より下だと思っている者達の血を一滴でも混ぜたくなかったんでしょうね。

 しかし、彼らにはそれをしないという理由があったのです。

 コトク同士の交配は、未熟児が産まれる確率が高く、コトクの数が減少傾向にあったからです。

 このままではコトクの滅亡の可能性もあり、やむなくただの人間との交配を行うようになりました。

 しかし、これによって産まれた子には重大な欠陥がありました。

 子の力が、親の力より著しく劣っていたのです。

 コトクとは、その力の優劣によって、コトク内での評価は変わるため、力が先代より劣るという事は何よりもあってはならない事でした。

 そのためコトクは、人間との間に産まれた子は自分らの居住区から追放しました。

 パンドーラは、人間との間に産まれた子が、劣性的な力を備えるごいう事を無くすにはどのような事をすれば良いか。

 思考する事50年、一つの試みを実行に移したパンドーラがいました。

 力で生み出したヒトとの交配です。
 自らの力で出した人であれば、純度はほぼ100%であり、劣悪な者は産まれないだろうと思ったからでした。

 そして実験は成功しました。
 力で生み出した母体との交配により、一人の子を妊娠しました。

 胎児は何も問題なく成長していきました。
 私もその子の誕生を心待ちにしてましたよ。
 どこかその子に共感する部分があったのでしょうね。

 やがてその子が産まれる時、そのパンドーラは一つの妙案が浮かびました。
 そのパンドーラの力は、魂と定義付けられた物を他者にへと埋め込むという力でした。

 しかし、誰でも良いという訳ではなく、魂と定義付けられた物が入り込める余裕があるもの、そして元あった魂と定義付けられた物を追い出す事が出来るほど弱りきっている事という条件がありました。

 そのパンドーラは、次の器を探すのに難色を示していました。

 しかし、そこに自らの研究の失敗が訪れます。

 産まれた子は自我を持っていませんでした。
 それはパンドーラにとって失敗ではなく、殆ど成功でした。

 それにより、そのパンドーラは永遠の命に近い現象を得ることが出来ました。

 そのパンドーラは、私が記憶が正しければ未だに生きていると思われます。

 そのパンドーラの名前は。

 オンター・ビーツ・イルゼ。

 パンドーラ創設からいる初期の構成員の一人でしたね。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く