遅熟のコニカ
70「テンビントフクダ」
「おっまたっせーでぇぇす!」
シュイジは全裸のフクダに、刀と上着を投げつけた。
フクダは、上着を腰元に巻き付けると、刀を抜き、鞘をそこらに捨てた。
シュイジは、腰に巻かれた自分の上着を見て、なんとも言えぬ顔をした。
「遅かったな、一体リードだ」
フクダは、安全ピンを指に通しくるくると回せば、先程の爆発音が届いているのを前提に、察せと言わんばかりに、見せびらかす。
「えーけど一回死んでようやく一体でしょお? 効率悪くぬぇー?」
───────────
和気藹々と話す、甘党の二人を前に、遺された3人は、恐怖と、驚きと、興奮に分かれた。
その胸中騒ぐ中、3人に1つの同じ疑問。
なぜ、生きている?
明らかな異変だった。
性能操作系の遺能により、熱や衝撃への耐久を上げる事によって健在しているのだったら分からなくもない。
しかし、甘党の、アイツはただの一般人である。
つまりは、生身のまま、自爆したのであって、今生きている筈がなかった。
そして、もう一人、後から来た甘党の言葉、──一回死んで──つまりは生き返り、監獄でコニカが"人を生き返らせる"遺能を持っていると告げた時のハミセトの反応から見るに、本当に珍しい、いやそれどころの話ではないのだろう。
しかし、ただの人間である甘党らがそのような事を出来るのであれば、起こるのは、同士討ちの惨劇。
起こるだろう、人間をも巻き込む、ヒト同士の争い。
「ヒルコ、あの子を出してくれ」
コニカが、耳打ちをした。
今度は、承諾の必要な問などではない、自分で行うと決めた、確定的な一手。
例えワンピースを着ていようと、剣の携帯は忘れてはいなかった。
いや忘れられなかった。
「コニカ、遺能を使った方が」
ヒルコが、金髪の子供の姿のぬいぐるみを取り出して言った。
それにコニカは人指し指をピンと立て、ヒルコの口元に付けた。
柔らかな感触が一本の指から全身に伝わり、それが励みに、カツリョクになった。
「言うな、この子の前では私でいたい」
ぬいぐるみを受けとると、コニカは、指を離し、今度は親指を立てた後、甘党の方へと向かっていった。
「ふぅあっついねぇ、出ないの? 『万』さん?」
ハミセトは、『斬り裂き権兵衛』が殺された今も、何もせず、めんどくさそうにヒルコに話しかけた。
「少し後になる。描かなければならないからな、それよりいいのか? あの若者が死んだようだが」
ヒルコは、どこからか出した黒の鞄に、白のチョークで描き始めた。
「名残惜しいけど、死す人だった。まぁそれまでだったんだよ。まぁ正義の執行悪人とやらの名前に恥じないように~殺人鬼に刑罰を執行せねば~」
ハミセトが、一度自分の顔を叩き、気合いを入れるような素振りをしたら、先程まで着ていた服が消え、それと同時に黒の法服を着ていた。
──────────
「『天秤』ぬぃ~『生母事』ぬぃ~?お!『万』までいんじゃぁあん!」
シュイジが、両手で望遠鏡の様な形をして目に当て、あちら側を見る。
その報告にフクダは、驚いた。
「はぁ?! なんで『天秤』と『万』が一緒にいるんだよ」
「知らないよ~、あ、『生母事』と『天秤』がくる」
シュイジは何も危機感無さげに言った。
それは、二人が来ようと脅威にならないと思っているからか、それかただ楽観主義者なだけか。
「お前は『生母事』とでもやっとけ、『天秤』は俺がやる」
フクダは、向かってくる一人の女、『生母事』をシュイジに託し、自分は、動かず、挑発しているような余裕を持つ『天秤』に敵意を向けた。
『天秤』の鎖のおおよそは分かっていた。
"相手の体の自由を支配する"、そういう能力だと、事実、全ての被害者は、抵抗する事なく死んでいる。
であれば、遠距離からの攻撃。
その場に落ちていた、フクダの大きな手にギリギリ収まる石を、シュイジにへと向かって投げた。
シュイジが力強く握りすぎたせいか、空中で割れ、四散する。
しかし、速度緩む事なく、ただ散弾のように、『天秤』の元へ。
「アンタは死さない、つまりウチにとってアンタは極刑に値しない」
その言葉は、フクダを憤らせた。
「てめぇが量ってんじゃねぇよ、クソ偽善ガァ!!」
相手に品定めをされている。
それがフクダの心に、いや闘争心に火をつけた。
一本の曲がらぬ信念、正義の職、努力勤勉。
それが、何もせず、ただ、人離れした能力を得ただけの奴が、強者を騙り、自分、いや無能力者を見下すのが耐えきれなかった。
『天秤』の元に、四散した石が届くと思われた時に、『天秤』はフクダの後ろにいた。
「君、罪を数えよう」
『天秤』は、フクダの腕を触り言った。
フクダは、肘打ちを『天秤』顔めがけて放った。
「殺人16件これだけでも手配書ものだね」
『天秤』は、フクダの目の前にちょこんと座り、フクダを見上げる。
フクダは、『天秤』を踏みつけようと右足を上げ、勢いよく落とす。
「しかし、君は罪には問われない」
『天秤』は、フクダの顔の前に近づき、そして笑った。
フクダは、踏み下ろした足の勢いそのままに、地面を蹴り、膝蹴りを、送る。
「被告は犯行当時、殺人に対する善悪の判断がつかず、心神喪失状態による責任能力がない事を認め、無罪とする」
『天秤』は元いた場所に戻ると、判決を述べ、そして、木槌を、振り上げ、下ろした。
何にも打ち付けてはいないはずだが、どこかで音がなった。
「奇遇だな、お前と一緒だ」
フクダは、『天秤』の元へと近づき、刺突。
手応え、ある。
骨に当たる事なく、真っ直ぐ一閃の突き。
しかし、刀身に血液の付着無し。
───────────
『判決を述べる者』
シュイジは全裸のフクダに、刀と上着を投げつけた。
フクダは、上着を腰元に巻き付けると、刀を抜き、鞘をそこらに捨てた。
シュイジは、腰に巻かれた自分の上着を見て、なんとも言えぬ顔をした。
「遅かったな、一体リードだ」
フクダは、安全ピンを指に通しくるくると回せば、先程の爆発音が届いているのを前提に、察せと言わんばかりに、見せびらかす。
「えーけど一回死んでようやく一体でしょお? 効率悪くぬぇー?」
───────────
和気藹々と話す、甘党の二人を前に、遺された3人は、恐怖と、驚きと、興奮に分かれた。
その胸中騒ぐ中、3人に1つの同じ疑問。
なぜ、生きている?
明らかな異変だった。
性能操作系の遺能により、熱や衝撃への耐久を上げる事によって健在しているのだったら分からなくもない。
しかし、甘党の、アイツはただの一般人である。
つまりは、生身のまま、自爆したのであって、今生きている筈がなかった。
そして、もう一人、後から来た甘党の言葉、──一回死んで──つまりは生き返り、監獄でコニカが"人を生き返らせる"遺能を持っていると告げた時のハミセトの反応から見るに、本当に珍しい、いやそれどころの話ではないのだろう。
しかし、ただの人間である甘党らがそのような事を出来るのであれば、起こるのは、同士討ちの惨劇。
起こるだろう、人間をも巻き込む、ヒト同士の争い。
「ヒルコ、あの子を出してくれ」
コニカが、耳打ちをした。
今度は、承諾の必要な問などではない、自分で行うと決めた、確定的な一手。
例えワンピースを着ていようと、剣の携帯は忘れてはいなかった。
いや忘れられなかった。
「コニカ、遺能を使った方が」
ヒルコが、金髪の子供の姿のぬいぐるみを取り出して言った。
それにコニカは人指し指をピンと立て、ヒルコの口元に付けた。
柔らかな感触が一本の指から全身に伝わり、それが励みに、カツリョクになった。
「言うな、この子の前では私でいたい」
ぬいぐるみを受けとると、コニカは、指を離し、今度は親指を立てた後、甘党の方へと向かっていった。
「ふぅあっついねぇ、出ないの? 『万』さん?」
ハミセトは、『斬り裂き権兵衛』が殺された今も、何もせず、めんどくさそうにヒルコに話しかけた。
「少し後になる。描かなければならないからな、それよりいいのか? あの若者が死んだようだが」
ヒルコは、どこからか出した黒の鞄に、白のチョークで描き始めた。
「名残惜しいけど、死す人だった。まぁそれまでだったんだよ。まぁ正義の執行悪人とやらの名前に恥じないように~殺人鬼に刑罰を執行せねば~」
ハミセトが、一度自分の顔を叩き、気合いを入れるような素振りをしたら、先程まで着ていた服が消え、それと同時に黒の法服を着ていた。
──────────
「『天秤』ぬぃ~『生母事』ぬぃ~?お!『万』までいんじゃぁあん!」
シュイジが、両手で望遠鏡の様な形をして目に当て、あちら側を見る。
その報告にフクダは、驚いた。
「はぁ?! なんで『天秤』と『万』が一緒にいるんだよ」
「知らないよ~、あ、『生母事』と『天秤』がくる」
シュイジは何も危機感無さげに言った。
それは、二人が来ようと脅威にならないと思っているからか、それかただ楽観主義者なだけか。
「お前は『生母事』とでもやっとけ、『天秤』は俺がやる」
フクダは、向かってくる一人の女、『生母事』をシュイジに託し、自分は、動かず、挑発しているような余裕を持つ『天秤』に敵意を向けた。
『天秤』の鎖のおおよそは分かっていた。
"相手の体の自由を支配する"、そういう能力だと、事実、全ての被害者は、抵抗する事なく死んでいる。
であれば、遠距離からの攻撃。
その場に落ちていた、フクダの大きな手にギリギリ収まる石を、シュイジにへと向かって投げた。
シュイジが力強く握りすぎたせいか、空中で割れ、四散する。
しかし、速度緩む事なく、ただ散弾のように、『天秤』の元へ。
「アンタは死さない、つまりウチにとってアンタは極刑に値しない」
その言葉は、フクダを憤らせた。
「てめぇが量ってんじゃねぇよ、クソ偽善ガァ!!」
相手に品定めをされている。
それがフクダの心に、いや闘争心に火をつけた。
一本の曲がらぬ信念、正義の職、努力勤勉。
それが、何もせず、ただ、人離れした能力を得ただけの奴が、強者を騙り、自分、いや無能力者を見下すのが耐えきれなかった。
『天秤』の元に、四散した石が届くと思われた時に、『天秤』はフクダの後ろにいた。
「君、罪を数えよう」
『天秤』は、フクダの腕を触り言った。
フクダは、肘打ちを『天秤』顔めがけて放った。
「殺人16件これだけでも手配書ものだね」
『天秤』は、フクダの目の前にちょこんと座り、フクダを見上げる。
フクダは、『天秤』を踏みつけようと右足を上げ、勢いよく落とす。
「しかし、君は罪には問われない」
『天秤』は、フクダの顔の前に近づき、そして笑った。
フクダは、踏み下ろした足の勢いそのままに、地面を蹴り、膝蹴りを、送る。
「被告は犯行当時、殺人に対する善悪の判断がつかず、心神喪失状態による責任能力がない事を認め、無罪とする」
『天秤』は元いた場所に戻ると、判決を述べ、そして、木槌を、振り上げ、下ろした。
何にも打ち付けてはいないはずだが、どこかで音がなった。
「奇遇だな、お前と一緒だ」
フクダは、『天秤』の元へと近づき、刺突。
手応え、ある。
骨に当たる事なく、真っ直ぐ一閃の突き。
しかし、刀身に血液の付着無し。
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