遅熟のコニカ
57「カミトオワリ」
「え?」
心、淀みなく淀む中、コニカは、表情を変える事よりも前に、感情変化の扉を叩き、最初に出てきた感情とは、疑問だった。
ランプに入った火が、逃げるようにして揺らぎ、そして、消える。
薄暗く、なっていく。
コニカの姿が消える。
金髪の子供の肉片が、コニカの頬を伝いながらコニカは、闇を身に纏わせ、さながら、肉食獣のように、目を光らせ、そして言った。
「騙したな」
その言葉響き渡る前、火が、再び燃え上がる。
そして、コニカは、今燃え上がるランプの中の火のように、激しい怒りの感情に襲われ、辺りをその感情による、本能への訴えかけを行う。
訴えかけたのは、予告。
「殺す」
血涙、いや、金髪の子供の血なのだろうか、それは、コニカですら分からない。
しかし、それを分かろうとする前に、王にへと向かっていた。
何を思ったか、アンパイアが盾にへとなる、しかし、防ぐ事など不可能。
コニカは、引っ掻いた。
いや、切り裂いた。
アンパイアの体を横一線。
爪の間には、肉と皮が詰まり、そして赤色のマニキュアがされている。
そして叫ぶ、アンパイア。
アンパイアにも、遺能があった。
それを簡単に言うならば、感情を読み取る能力。
故に今、コニカの尋常ではない感情悪に、受け取りを拒否している。
しかし、己の意思とは真逆に流れ込む、悲しみ、殺意、寂寥感。
アンパイアは、感じた事のない人の感情に脳がオーバーヒートしかけていた。
しかし、感情が目まぐるしく交差し、送り続けられ、承認されていく今、アンパイアはその根幹にある物が何かを突き止める。
金髪の子供ともう一度会いたいという、願い。
金髪の子供は、今、髪すら持たず、首から下しか持たぬ、首なし人形になっている。
二度と叶わない、あの笑顔、食事を頬張るあの幸せに満ちた顔、すやすやと眠る卑しの顔、自分を守ると勇ましくいったあの凛々しい顔、全てもう、見ることなど、出来ない。
コニカは、分かっていた。
どうしようもない事など。
ただ、ではどうすればいいのか、分からなかった。
であれば、体の動くままに、身を任せ、いつか死に、動くのが止まるまで、殺し尽くせばいいのではないのか?
コニカは、考える事をやめた。
アンパイアを殺した。
返り血など、温いシャワーに過ぎなかった。
人を殺し、真っ赤に染まった手であろうと、今はもう、関係はない。
抱きしめる相手などいない。
絞め殺す。
赤く濡れた手で、王の首を。
王は抵抗した。
生きたかったのだろう、しかし、コニカに、それは、関係ない。
王が、言わなければ、死んではいなかっただろう、ただ、もう、コニカは、どうでもよかった。
諦めていた、考える事を。
次は、ヒルコだった。
ヒルコは、怯えてげる事なく、コニカの行動に、快感を得ているだけだった。
「素晴らしい!! 素晴らしいよコニカ!!」
誉められようと、どうでもよかった。何も変わらない。何を言われようと。
「流石、我輩が認めたコニカだ。あの時、実験素材にしなくて本当によかったよ」
コニカは、何も思わない、思えない。
獣の鳴き声に、何も思わないように、ただ、言っている。としか思えなかったのだ。
「コニカ、コニカ、コニカ」
ヒルコは、何度もコニカの名を呼ぶ、反応がないために。
純粋な動機。
そう見せるために。
一瞬、金髪の子供の姿が重なった。
揺らいだ。
しかし火は消えず。
「コニカ、気は晴れたか?」
言葉など、当に忘れた。
理解をする事など、忘れた。出来ない。
炎が、ただただ、燃料、空気、木を焼き尽くすだけの存在であるように、コニカは、止める事など考えず、いや、考えられず。思考を停止し、勝手に動く体、ただただそれに順じ、生きる。
それに人間としての、尊厳はあるか、いや、ない。
ヒルコの首を掴む。
ヒルコは、何も言わず、ただコニカを見つめる。
思考すらままならない中、コニカは、記憶を呼び起こす事など出来ない中、体が覚えていた。
その時、思考が動く。
再び、あの事を繰り返してはならない。
その瞬間、コニカは、人間にへと戻った。
「……割りと死ぬと思ったぞ」
何度も咳をしてみせ、ヒルコは、弱々しい声で言った。
コニカは、ヒルコを優しく、抱いた。
母子像。
ヒルコは笑った。
「すまない、こんな提案をしてしまって」
なだめるように、コニカを撫でながら、ヒルコは言う。
「家にへと帰ろう、まずはそれだ。安息を得なければ人は成長しない。君は人だろう?」
高尚な事を、ヒルコは語り、コニカを人にへと戻す。
心晴れるや。
暗雲は、日の光を濃くするただの脇役に、そしてコニカを照らす。
「すまない……何度も」
「問題もない。君が授けた命、君の思うがままに」
コニカと、ヒルコは立ち上がり、歩く。
「あ、あの子の墓を……」
、コニカが、思い出したかのように、そう呟き、後ろを向こうとするが、ヒルコは見せないようにするためか、また強く、手を引く。
「墓に入れるのは、遺品遺骨だけじゃない。記憶だ、形に残らない。君の心の中にあの子の墓を作れ」
ヒルコは、前だけを見て、コニカに語る。
コニカは、ただ、頷いた。
ヒルコが確認する方法はないはずなのに。
「向かおう、我監獄へ」
階段を上がる度、光が強くなっていく。
暗い部屋、一つ、弱い光がついた。
「……生きている」
王が、呟いた。
呟くまで、疑問に思っていた。
「国の再建、兵の増量、民の復活……やる事が多いな」
手を天井にへと伸ばし、指を折る。
体を起こし、辺りを見回す。
「……掃除をせねば、人手が足りんな」
王は、立ち上がり、ふらふらとEiの元へと近寄り、座る。
自分で管をつけ、そして頭無しの遺体を見て、一度まばたきをし、そして手を合わせた。
「神よ」
カマキリ、マンティデ。
前足が祈っているように見える事から、カマキリは、別名、神を崇拝する女性と呼ばれる。王と似ている。
「はい、呼んだ?」
心、淀みなく淀む中、コニカは、表情を変える事よりも前に、感情変化の扉を叩き、最初に出てきた感情とは、疑問だった。
ランプに入った火が、逃げるようにして揺らぎ、そして、消える。
薄暗く、なっていく。
コニカの姿が消える。
金髪の子供の肉片が、コニカの頬を伝いながらコニカは、闇を身に纏わせ、さながら、肉食獣のように、目を光らせ、そして言った。
「騙したな」
その言葉響き渡る前、火が、再び燃え上がる。
そして、コニカは、今燃え上がるランプの中の火のように、激しい怒りの感情に襲われ、辺りをその感情による、本能への訴えかけを行う。
訴えかけたのは、予告。
「殺す」
血涙、いや、金髪の子供の血なのだろうか、それは、コニカですら分からない。
しかし、それを分かろうとする前に、王にへと向かっていた。
何を思ったか、アンパイアが盾にへとなる、しかし、防ぐ事など不可能。
コニカは、引っ掻いた。
いや、切り裂いた。
アンパイアの体を横一線。
爪の間には、肉と皮が詰まり、そして赤色のマニキュアがされている。
そして叫ぶ、アンパイア。
アンパイアにも、遺能があった。
それを簡単に言うならば、感情を読み取る能力。
故に今、コニカの尋常ではない感情悪に、受け取りを拒否している。
しかし、己の意思とは真逆に流れ込む、悲しみ、殺意、寂寥感。
アンパイアは、感じた事のない人の感情に脳がオーバーヒートしかけていた。
しかし、感情が目まぐるしく交差し、送り続けられ、承認されていく今、アンパイアはその根幹にある物が何かを突き止める。
金髪の子供ともう一度会いたいという、願い。
金髪の子供は、今、髪すら持たず、首から下しか持たぬ、首なし人形になっている。
二度と叶わない、あの笑顔、食事を頬張るあの幸せに満ちた顔、すやすやと眠る卑しの顔、自分を守ると勇ましくいったあの凛々しい顔、全てもう、見ることなど、出来ない。
コニカは、分かっていた。
どうしようもない事など。
ただ、ではどうすればいいのか、分からなかった。
であれば、体の動くままに、身を任せ、いつか死に、動くのが止まるまで、殺し尽くせばいいのではないのか?
コニカは、考える事をやめた。
アンパイアを殺した。
返り血など、温いシャワーに過ぎなかった。
人を殺し、真っ赤に染まった手であろうと、今はもう、関係はない。
抱きしめる相手などいない。
絞め殺す。
赤く濡れた手で、王の首を。
王は抵抗した。
生きたかったのだろう、しかし、コニカに、それは、関係ない。
王が、言わなければ、死んではいなかっただろう、ただ、もう、コニカは、どうでもよかった。
諦めていた、考える事を。
次は、ヒルコだった。
ヒルコは、怯えてげる事なく、コニカの行動に、快感を得ているだけだった。
「素晴らしい!! 素晴らしいよコニカ!!」
誉められようと、どうでもよかった。何も変わらない。何を言われようと。
「流石、我輩が認めたコニカだ。あの時、実験素材にしなくて本当によかったよ」
コニカは、何も思わない、思えない。
獣の鳴き声に、何も思わないように、ただ、言っている。としか思えなかったのだ。
「コニカ、コニカ、コニカ」
ヒルコは、何度もコニカの名を呼ぶ、反応がないために。
純粋な動機。
そう見せるために。
一瞬、金髪の子供の姿が重なった。
揺らいだ。
しかし火は消えず。
「コニカ、気は晴れたか?」
言葉など、当に忘れた。
理解をする事など、忘れた。出来ない。
炎が、ただただ、燃料、空気、木を焼き尽くすだけの存在であるように、コニカは、止める事など考えず、いや、考えられず。思考を停止し、勝手に動く体、ただただそれに順じ、生きる。
それに人間としての、尊厳はあるか、いや、ない。
ヒルコの首を掴む。
ヒルコは、何も言わず、ただコニカを見つめる。
思考すらままならない中、コニカは、記憶を呼び起こす事など出来ない中、体が覚えていた。
その時、思考が動く。
再び、あの事を繰り返してはならない。
その瞬間、コニカは、人間にへと戻った。
「……割りと死ぬと思ったぞ」
何度も咳をしてみせ、ヒルコは、弱々しい声で言った。
コニカは、ヒルコを優しく、抱いた。
母子像。
ヒルコは笑った。
「すまない、こんな提案をしてしまって」
なだめるように、コニカを撫でながら、ヒルコは言う。
「家にへと帰ろう、まずはそれだ。安息を得なければ人は成長しない。君は人だろう?」
高尚な事を、ヒルコは語り、コニカを人にへと戻す。
心晴れるや。
暗雲は、日の光を濃くするただの脇役に、そしてコニカを照らす。
「すまない……何度も」
「問題もない。君が授けた命、君の思うがままに」
コニカと、ヒルコは立ち上がり、歩く。
「あ、あの子の墓を……」
、コニカが、思い出したかのように、そう呟き、後ろを向こうとするが、ヒルコは見せないようにするためか、また強く、手を引く。
「墓に入れるのは、遺品遺骨だけじゃない。記憶だ、形に残らない。君の心の中にあの子の墓を作れ」
ヒルコは、前だけを見て、コニカに語る。
コニカは、ただ、頷いた。
ヒルコが確認する方法はないはずなのに。
「向かおう、我監獄へ」
階段を上がる度、光が強くなっていく。
暗い部屋、一つ、弱い光がついた。
「……生きている」
王が、呟いた。
呟くまで、疑問に思っていた。
「国の再建、兵の増量、民の復活……やる事が多いな」
手を天井にへと伸ばし、指を折る。
体を起こし、辺りを見回す。
「……掃除をせねば、人手が足りんな」
王は、立ち上がり、ふらふらとEiの元へと近寄り、座る。
自分で管をつけ、そして頭無しの遺体を見て、一度まばたきをし、そして手を合わせた。
「神よ」
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