遅熟のコニカ
54「アイトフェイリー」
何を言っているかは、分からない。
しかし、理解はせずとも、何を言ったか分かった。
死のお
揺れていた。
もし、金髪の子供に認められなければ、生きる意味など、あるのだろうか、その疑問が、ただの疑問が、ほとんど確定事項のようになり、そして、誘われるままに、首吊り台に、上がる。
無気力に、やる気もなく。
マスクを着けていたグラブは、立っていた。
よろよろと、赤子のように、近付き、笑う。
  彫刻のように、堀の深く笑う。
目は、笑うことなく、ただ、一点に、楽しそうに、コニカの顔を覗く。
獲物を食らうのを躊躇、いやなんとなく、やめ、そして、一瞬の間を持って、ただの行為の物を、遊びにも近いものを、グラブは今している。
「いおぉお?」
再び、誘われ、惑わされ、耳に響く。
その声が、耳を食み、嬲る。
鎖は巻き付いた。
後は、どう締め付けるか、どう引き寄せるか。
「やだ……いやだ……捨てられたくない」
コニカは、すがるように、寄生するように、寄生する宿主などいないのに。
「捨てられるのが嫌だったら、捨てればいいんだよ、自分で」
  仁王立ちで、地面を踏むグラブが、言う。
「どうせ、次はあるんだから、捨てようよ、最近流行りの断捨離だよ」
下から見上げるように、地面に横たわったグラブが言う。
「あの子が待っているよ。行ってあげな」
コニカの背後にいるグラブが、心を折るために言った。
叩けば、折れる、そんな簡単な話な訳がない。
時に、叩けば直され、補強される。
胸骨への一打。
衝撃が、内蔵を通り、揺らし、体外にへと放つ。
そして、顔を、斬る。
グラブを、斬る。斬る。斬る。
忘れていた事を、今思い出した。
斬れば、血が出る。剣が濡れる。
簡単な話。
殺し、糧を使い、贄を捧げ、金髪の子供を呼ぶ。
神に近い。
金髪の子供は、神だ。女神だ。
コニカにとって。
教徒は、いつも、女神の事を考えなければならない。
忘れていたならば、その事を無くす程に、熱信すればいい。
糧を捧げよう。贄を使おう。
私は、金髪の子供の元へ。
やめろ。声がした。
やめる筈もない。
案山子を殺す。
動かないのであれば、殺し易い。
上手く歩けない物ほど、酷く簡単な的はない。
「なぁグラブ、殺すぞ」
剣を、喉元にへと突き付け脅す。
ハッタリでも、ブラフでも、何でもない。
本当に殺す気だった。
「おおえ」
引くことも、逃れる事もなく、小刻みに震えながら、立っている。
今直ぐにも折れそうな、細い足が、辛うじて、地面と体を離している。
「あぁ、分かるよ。了解」
右目を、刺した。
まだ目は笑っている。
水平に、斬る。
骨が、易く、柔く、脆くも、断たれ、そして、開く。
球体が、ポロっとこぼれ、嘴に沿って、地面に落ちる。
「……光栄に思え」
血の赤が、白目を染めて、地面を接写している。
グラブが、抵抗もせず、笑いながら死んだのは、抗おうと死ぬと思ったからか、もしくは。
コニカは、思い出していた。
凡百の天才など、非凡に過ぎない。
グラブが、いつか言った言葉。
その時は、自分以外の天才など、凡人に過ぎず、自分は素晴らしい存在だ、などと言う自分を賞賛する言葉だと、コニカは、思っていた。
真意は。
違う。
コニカとヒルコは今、階段をおりている。
今も気絶している王を背負い、アンパイアを先頭に、暗く、埃が被り、削れた石階段を、歩く。
照明も少ないその階段は、華やかな先程の部屋とは違うのは、この先にある部屋が、光の当たらないような、影に同化している存在であろうと。
使っていないのか、使わないのか。
「コニカ、あの同僚とやら、本当に良かったのか」
少し湿った壁に手を当てながら、ヒルコは一段、一段、降りていく。
目の前に立つ、アンパイアに苛立ちを覚えつつも、背後のコニカに幸福感を得つついる。
「……ん、あぁそうだな、別にこれといった。それより、ちゃんと持ってきているんだろうな」
幾百と、グラブを殺し、若干、グラブを殺したという実感が薄れていた。
何故、幾百もいるのか、その疑問に気づく事すら止めていたが、今、降りつつも、昇る感覚にコニカは、いた。
「あぁ、何時でも持ってる」
黒い鞄を、トントンと叩いて見せる。
膨らみを持たず、平坦のままの鞄は、本当に何か入っているとは思えない。
「いつも思うが、その鞄、どういう仕組みなんだ? 遺能か?」
疑問と、推測を、ヒルコにぶつける、階段は、終わりが近付き、扉が見えかける。
「ん、あぁ、うんそうだな遺能だ。これはだな」
説明をしようとした時、アンパイアが、扉を空けた。
説明途中に遮られた苛立ちからか、石階段の破片を、アンパイアに投げた。
石は、部屋の中にへと入っていく。
「……殺せ」
王が、コニカに背負われたまま、言った。
いつから気がついていたのか、分からないが、この部屋に、何かあることを裏付ける。
「あの子を生き返らせたら、殺す」
「叶わない夢ほど、酷な現実はない。引き返せ」
王は、殺される事など、どうでもよく、諭すように、コニカに引き返すように言う。
それにコニカは何かを思う。
「何があると言うんだ」
 
「知らない幸せもある」
「言え、帝国の王よ、貴様は我輩達に負けたのだ。従うべきだろう」
王を、責めるように、コニカとヒルコは、真相を問う。
ただ、王は屈せず。
「知りたければ、見ろ。後悔はする。桃源郷などない。いつもあるのは、ヘドロの上に立つ、骨で出来た滑稽な墓標。私はそんな物は見たくはない」
コニカは、部屋にへと、入った。
王の話が聴こえていなかった訳ではない。
それを見ようと、あの子と会えるのならば、と思った。
「これは……なんだ」
「何って……Eiだ、Ei」
しかし、理解はせずとも、何を言ったか分かった。
死のお
揺れていた。
もし、金髪の子供に認められなければ、生きる意味など、あるのだろうか、その疑問が、ただの疑問が、ほとんど確定事項のようになり、そして、誘われるままに、首吊り台に、上がる。
無気力に、やる気もなく。
マスクを着けていたグラブは、立っていた。
よろよろと、赤子のように、近付き、笑う。
  彫刻のように、堀の深く笑う。
目は、笑うことなく、ただ、一点に、楽しそうに、コニカの顔を覗く。
獲物を食らうのを躊躇、いやなんとなく、やめ、そして、一瞬の間を持って、ただの行為の物を、遊びにも近いものを、グラブは今している。
「いおぉお?」
再び、誘われ、惑わされ、耳に響く。
その声が、耳を食み、嬲る。
鎖は巻き付いた。
後は、どう締め付けるか、どう引き寄せるか。
「やだ……いやだ……捨てられたくない」
コニカは、すがるように、寄生するように、寄生する宿主などいないのに。
「捨てられるのが嫌だったら、捨てればいいんだよ、自分で」
  仁王立ちで、地面を踏むグラブが、言う。
「どうせ、次はあるんだから、捨てようよ、最近流行りの断捨離だよ」
下から見上げるように、地面に横たわったグラブが言う。
「あの子が待っているよ。行ってあげな」
コニカの背後にいるグラブが、心を折るために言った。
叩けば、折れる、そんな簡単な話な訳がない。
時に、叩けば直され、補強される。
胸骨への一打。
衝撃が、内蔵を通り、揺らし、体外にへと放つ。
そして、顔を、斬る。
グラブを、斬る。斬る。斬る。
忘れていた事を、今思い出した。
斬れば、血が出る。剣が濡れる。
簡単な話。
殺し、糧を使い、贄を捧げ、金髪の子供を呼ぶ。
神に近い。
金髪の子供は、神だ。女神だ。
コニカにとって。
教徒は、いつも、女神の事を考えなければならない。
忘れていたならば、その事を無くす程に、熱信すればいい。
糧を捧げよう。贄を使おう。
私は、金髪の子供の元へ。
やめろ。声がした。
やめる筈もない。
案山子を殺す。
動かないのであれば、殺し易い。
上手く歩けない物ほど、酷く簡単な的はない。
「なぁグラブ、殺すぞ」
剣を、喉元にへと突き付け脅す。
ハッタリでも、ブラフでも、何でもない。
本当に殺す気だった。
「おおえ」
引くことも、逃れる事もなく、小刻みに震えながら、立っている。
今直ぐにも折れそうな、細い足が、辛うじて、地面と体を離している。
「あぁ、分かるよ。了解」
右目を、刺した。
まだ目は笑っている。
水平に、斬る。
骨が、易く、柔く、脆くも、断たれ、そして、開く。
球体が、ポロっとこぼれ、嘴に沿って、地面に落ちる。
「……光栄に思え」
血の赤が、白目を染めて、地面を接写している。
グラブが、抵抗もせず、笑いながら死んだのは、抗おうと死ぬと思ったからか、もしくは。
コニカは、思い出していた。
凡百の天才など、非凡に過ぎない。
グラブが、いつか言った言葉。
その時は、自分以外の天才など、凡人に過ぎず、自分は素晴らしい存在だ、などと言う自分を賞賛する言葉だと、コニカは、思っていた。
真意は。
違う。
コニカとヒルコは今、階段をおりている。
今も気絶している王を背負い、アンパイアを先頭に、暗く、埃が被り、削れた石階段を、歩く。
照明も少ないその階段は、華やかな先程の部屋とは違うのは、この先にある部屋が、光の当たらないような、影に同化している存在であろうと。
使っていないのか、使わないのか。
「コニカ、あの同僚とやら、本当に良かったのか」
少し湿った壁に手を当てながら、ヒルコは一段、一段、降りていく。
目の前に立つ、アンパイアに苛立ちを覚えつつも、背後のコニカに幸福感を得つついる。
「……ん、あぁそうだな、別にこれといった。それより、ちゃんと持ってきているんだろうな」
幾百と、グラブを殺し、若干、グラブを殺したという実感が薄れていた。
何故、幾百もいるのか、その疑問に気づく事すら止めていたが、今、降りつつも、昇る感覚にコニカは、いた。
「あぁ、何時でも持ってる」
黒い鞄を、トントンと叩いて見せる。
膨らみを持たず、平坦のままの鞄は、本当に何か入っているとは思えない。
「いつも思うが、その鞄、どういう仕組みなんだ? 遺能か?」
疑問と、推測を、ヒルコにぶつける、階段は、終わりが近付き、扉が見えかける。
「ん、あぁ、うんそうだな遺能だ。これはだな」
説明をしようとした時、アンパイアが、扉を空けた。
説明途中に遮られた苛立ちからか、石階段の破片を、アンパイアに投げた。
石は、部屋の中にへと入っていく。
「……殺せ」
王が、コニカに背負われたまま、言った。
いつから気がついていたのか、分からないが、この部屋に、何かあることを裏付ける。
「あの子を生き返らせたら、殺す」
「叶わない夢ほど、酷な現実はない。引き返せ」
王は、殺される事など、どうでもよく、諭すように、コニカに引き返すように言う。
それにコニカは何かを思う。
「何があると言うんだ」
 
「知らない幸せもある」
「言え、帝国の王よ、貴様は我輩達に負けたのだ。従うべきだろう」
王を、責めるように、コニカとヒルコは、真相を問う。
ただ、王は屈せず。
「知りたければ、見ろ。後悔はする。桃源郷などない。いつもあるのは、ヘドロの上に立つ、骨で出来た滑稽な墓標。私はそんな物は見たくはない」
コニカは、部屋にへと、入った。
王の話が聴こえていなかった訳ではない。
それを見ようと、あの子と会えるのならば、と思った。
「これは……なんだ」
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