遅熟のコニカ
39「アイトオウ」
「お前ッ」
記憶の最果てにあった目の前の女の存在は、記憶から消しても良いような存在だった。
それは、目の前の女が、ちっぽけで、覚えるに値しない女だからという理由ではなく、もう目の前に出てくるはずのなかったはずの存在。
死んだはずのヘーレだった。
恐れてはいない、疑問に思うこともない。
ただ一つ、確信。
人を生き返らせる術がある。
幸福の言の葉。地獄に垂れた一本のか細い蜘蛛の糸。
その蜘蛛の糸を崇拝すらしようとすれば、仏はその糸を切るだろう。
「コニカ先輩、一緒にイきましょ?」
ヘーレは、コニカの耳元にへと近付き囁く。
ねっとりと、体を舐めまわすような、醜穢とほど思える程の、気色の悪いその言葉は、コニカの耳に漏れることなく届き、そして抱き付かれた。
「"愛の迷宮入り"」
その言葉を発した時、ヒルコは既に、ズィ・チィを出していた。
ヒルコは、経験と知識、そして事前にヘーレの行動を知ることにより得た、ヘーレの思想。
それは、ヒルコと同じだった。
いや、似ているようにみえて似ておらず。
ただ両者とも、コニカが好きだった。
いや、愛していた。
ただ、ヘーレは、コニカを独占したかった。
まさに愛、その甘ったるい程の愛情に、吐きたくなる程、コニカを愛しているのだ。
だからこそ、ヒルコは分かった。
いや分かったのではない、自分だったらこうする、そう思った。
「ズィ・チィ、コニカを写せ!!」
コニカは、ヘーレに抱き付かれたせいか、フレーメン反応をしているかのような顔のまま、その場から消えた。
そして、ズィ・チィは腹部の鏡に、コニカを写す。
そして、ヒルコが身を入れようとした時、コニカとヘーレの他に、人間がいた。
携帯機器を見つめる群集、騎士姿の彼女らを撮る野次馬。
そして、それら有象無象とは違う、明らかなオーラと、存在感、そして絶対的な地位。
知らなかろうと、誰であろうと、ひれ伏すだろう。
それは王。
「かの王すらもこの地へと出向くか……面白い行くか」
ヒルコが一瞬躊躇し、その後十秒も経たぬうちに、ズィ・チィにへと入っていった。
その躊躇の時間は、酷く短くも長い時間で、現状を変えるのには十分すぎる時間だった。
─────────
「コニカ、お前はなぜそこまで無様な姿を公衆の面前で晒す事が出来るのだ?」
コニカは、今王の目の前で、地に脚と頭をつけていた。
「あぁすまんな、答えられないな、一々指示をしなければ答えられないんだったなコニカは」
王は、コニカの近くにより、コニカの横顔を覗くようにしてしゃがみ、コニカの耳を擽るように囁いた。
コニカならば、いや、誰であろうと、今ならば王の首をハネる事が出来た。
しかし、出来ない。
ただ、頭を垂れるだけだ。
「退職届も出さず辞めたと思えば、民に手をかけるとは、堕ちたな」
王は、何もしない。
コニカの頭を地面に押し付ける事も、足で踏みつける事もしない。
する意味がないのだ。
確かにコニカは、帝国の民を虐殺するのに加担した。
ただそれは、司法で取り扱うべき事。
大罪者アイビー・コニカの事だ。
しかし、王が今話をしている相手は、アイビー・コニカ、『スィクル』の隊長を務めていた、『マンティデ』の社員アイビー・コニカである。
民の頂点であるべき存在が、感情の変化から訪れる暴力欲求に、身を預けるなど、そのような低俗な行動はするはずがなかった。
「なぁ、コニカよ。お前が行った行動には意味があったのか?」
善意の言葉であろうが、その言葉はコニカに重く突き刺さる。
今の、正義もない自分に、職という肩書きすらない、一端の女に、人を殺す意味など、大義など 。
ある。
唯一無二の行動原理、金髪の子供を生き返らせる。
その原動力を、糧にコニカは、体を起こ
「止めるな、続けろ」
コニカは、また地に伏した。
重い、いや、抗えない、それほどに王の一言は重く、抗う事など叶わない。
王は、コニカの何にも触れてはいない。
言葉一つで従わせている。
コトダマ、ククノチに伝わる物だ。
それは、言葉に宿る力のようなもの、それがまさに、王の一語一句には宿っている。
逃れる事は出来ない。
「コニカッ!」
ヒルコが、来た。
しかし、コニカは、助けに来たヒルコに礼を言う事などは出来ない。
「おぉ、まさに僥倖、首謀者が自ら足を運んでくれるとは」
王は、ヒルコの事を見ると、何の危機感のないように言葉を発した。
「これが王か、拍子抜けだな」
  王を貶した。
それがどれ程の物か、ヒルコは分かっているのだろうか、いや、分かっているからこその言葉なのだろうか。
「あぁ、国際手配されているのが、ただの子供だとは、私も思わなかったよ」
王は淡々と語る、迫力など皆無、しかし、恐怖の圧力がヒルコにかかる。
ただヒルコの胸中、一片の変化なし、ただ、コニカを奪還する。
その一本柱は、言葉ごときの揺さぶりなどに揺れる事などはない。
その揺らぎない考え、王は察する。
「なるほど、そうだなコニカ、あやつを殺せ」
記憶の最果てにあった目の前の女の存在は、記憶から消しても良いような存在だった。
それは、目の前の女が、ちっぽけで、覚えるに値しない女だからという理由ではなく、もう目の前に出てくるはずのなかったはずの存在。
死んだはずのヘーレだった。
恐れてはいない、疑問に思うこともない。
ただ一つ、確信。
人を生き返らせる術がある。
幸福の言の葉。地獄に垂れた一本のか細い蜘蛛の糸。
その蜘蛛の糸を崇拝すらしようとすれば、仏はその糸を切るだろう。
「コニカ先輩、一緒にイきましょ?」
ヘーレは、コニカの耳元にへと近付き囁く。
ねっとりと、体を舐めまわすような、醜穢とほど思える程の、気色の悪いその言葉は、コニカの耳に漏れることなく届き、そして抱き付かれた。
「"愛の迷宮入り"」
その言葉を発した時、ヒルコは既に、ズィ・チィを出していた。
ヒルコは、経験と知識、そして事前にヘーレの行動を知ることにより得た、ヘーレの思想。
それは、ヒルコと同じだった。
いや、似ているようにみえて似ておらず。
ただ両者とも、コニカが好きだった。
いや、愛していた。
ただ、ヘーレは、コニカを独占したかった。
まさに愛、その甘ったるい程の愛情に、吐きたくなる程、コニカを愛しているのだ。
だからこそ、ヒルコは分かった。
いや分かったのではない、自分だったらこうする、そう思った。
「ズィ・チィ、コニカを写せ!!」
コニカは、ヘーレに抱き付かれたせいか、フレーメン反応をしているかのような顔のまま、その場から消えた。
そして、ズィ・チィは腹部の鏡に、コニカを写す。
そして、ヒルコが身を入れようとした時、コニカとヘーレの他に、人間がいた。
携帯機器を見つめる群集、騎士姿の彼女らを撮る野次馬。
そして、それら有象無象とは違う、明らかなオーラと、存在感、そして絶対的な地位。
知らなかろうと、誰であろうと、ひれ伏すだろう。
それは王。
「かの王すらもこの地へと出向くか……面白い行くか」
ヒルコが一瞬躊躇し、その後十秒も経たぬうちに、ズィ・チィにへと入っていった。
その躊躇の時間は、酷く短くも長い時間で、現状を変えるのには十分すぎる時間だった。
─────────
「コニカ、お前はなぜそこまで無様な姿を公衆の面前で晒す事が出来るのだ?」
コニカは、今王の目の前で、地に脚と頭をつけていた。
「あぁすまんな、答えられないな、一々指示をしなければ答えられないんだったなコニカは」
王は、コニカの近くにより、コニカの横顔を覗くようにしてしゃがみ、コニカの耳を擽るように囁いた。
コニカならば、いや、誰であろうと、今ならば王の首をハネる事が出来た。
しかし、出来ない。
ただ、頭を垂れるだけだ。
「退職届も出さず辞めたと思えば、民に手をかけるとは、堕ちたな」
王は、何もしない。
コニカの頭を地面に押し付ける事も、足で踏みつける事もしない。
する意味がないのだ。
確かにコニカは、帝国の民を虐殺するのに加担した。
ただそれは、司法で取り扱うべき事。
大罪者アイビー・コニカの事だ。
しかし、王が今話をしている相手は、アイビー・コニカ、『スィクル』の隊長を務めていた、『マンティデ』の社員アイビー・コニカである。
民の頂点であるべき存在が、感情の変化から訪れる暴力欲求に、身を預けるなど、そのような低俗な行動はするはずがなかった。
「なぁ、コニカよ。お前が行った行動には意味があったのか?」
善意の言葉であろうが、その言葉はコニカに重く突き刺さる。
今の、正義もない自分に、職という肩書きすらない、一端の女に、人を殺す意味など、大義など 。
ある。
唯一無二の行動原理、金髪の子供を生き返らせる。
その原動力を、糧にコニカは、体を起こ
「止めるな、続けろ」
コニカは、また地に伏した。
重い、いや、抗えない、それほどに王の一言は重く、抗う事など叶わない。
王は、コニカの何にも触れてはいない。
言葉一つで従わせている。
コトダマ、ククノチに伝わる物だ。
それは、言葉に宿る力のようなもの、それがまさに、王の一語一句には宿っている。
逃れる事は出来ない。
「コニカッ!」
ヒルコが、来た。
しかし、コニカは、助けに来たヒルコに礼を言う事などは出来ない。
「おぉ、まさに僥倖、首謀者が自ら足を運んでくれるとは」
王は、ヒルコの事を見ると、何の危機感のないように言葉を発した。
「これが王か、拍子抜けだな」
  王を貶した。
それがどれ程の物か、ヒルコは分かっているのだろうか、いや、分かっているからこその言葉なのだろうか。
「あぁ、国際手配されているのが、ただの子供だとは、私も思わなかったよ」
王は淡々と語る、迫力など皆無、しかし、恐怖の圧力がヒルコにかかる。
ただヒルコの胸中、一片の変化なし、ただ、コニカを奪還する。
その一本柱は、言葉ごときの揺さぶりなどに揺れる事などはない。
その揺らぎない考え、王は察する。
「なるほど、そうだなコニカ、あやつを殺せ」
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