遅熟のコニカ
30「コニカトヒルコ」
 ヘーレは、幸福、幸せに満ちていた。まさに至高、この上ない、愛すべき者がヘーレの顔を撫でるようにコニカが、ヘーレの輪郭を捉える。
ヘーレを挑発するように誘い、そして、輪郭を潰した。
ヘーレの瞳孔が酷く小さい目が、コニカに持っている、自分の両頬を見た。
そして、叫んだ。耳がもげそうな程のその叫びは、人の声とは思えない。
近しいものを挙げるとすれば、豚や牛、鶏を解剖する時にあげる、救いを求めるのかも分からない、人生最後の発声。
そして、その声を出す場所を、引き裂いた。
いとも簡単に、編み目の大きい服を強く引き裂くように、易く、そして酷く、酷い。
そしてヘーレの記憶は、ここで途切れた。
─────────
「ぁあコニカ! コニカ!。……コニカァア!!」
ヒルコは、何度もコニカの名前を叫び、悶えている。
それほどに今、興奮しているのだろう、どちらの意味でも。
その他の者、物のほとんどは、声をあげ、コニカの行動に熱狂した。
ただ、その中の少数が、声を失い、ただ悲観的に映像を見るだけしか出来なかった。
今映像に写し出されているのは、人を殺す、いや人であるのだろうか、それほどに、コニカは易く、同種同士の殺し合いとは思えない程に、楽に、躊躇もない、一人倒したと思えば、また、殺し、飽きたりない程に、潰し、捻り、引き裂き、折り……殺すという行為の果てにコニカの姿は、見ている化け物が皆、悪魔、そう思った。
それ程に、恐ろしく、到底感情を持っているとは思えぬ程に、コニカの動きが、機械的に、自動で殺している。
悪魔の所業を見て、ヒルコは感じ、ナニカは畏敬し、グロルは興奮し、老人は笑った。
ナニカは、あの姿が、ヘラクレス、戦いの神を重ねた。
恐怖している、しかし、それと同じ、いやそれ以上に、崇高な姿に、恐怖さえもその姿で塗り替えて、コニカは、ヒルコと同格の存在にナニカの中で位置付けられていた。
グロルは、あの力を試したいと思った。無謀だった、それをグロル自体感じている。
しかし、それでも、試したい、知識と好奇心を得た、人間に近い物を得た、だからこその特権だった。
老人は、笑った。ただ、笑った。
笑顔にこびりついた、思惑を他所に、その他の声に混ざり薄まっていった。
争い、いや一方的虐殺。
少数である方がされるべきであろう事を翻し、そしていとも簡単に、いや凌駕し、行う。
ヒルコの心に、その行為をしているコニカの姿が、楔のように心に突き刺さり、ヒルコの心にズブズブと入り込み、出そうと思い、掴もうとすれば、中にへと入っていく。
それほどにヒルコにとって魅力的だったのだ。
現に今、ヒルコの脳内はコニカについての事で全てが埋まっている。
狂信的なその愛は、その矛先にへと向かおうと、足を進めようとするが、それはしない。
また、餌をまいているのだ。
───────────
コニカは、歩いていた、金髪の子供を抱き抱え、生気の失った浮遊霊のように、ゆっくりと、移動している。
のそのそと。
泣きもせず、笑いもせず、怒りもせず、ただただ、歩いていた。
そして、コニカはまるで天啓のように、ある言葉を思い浮かぶ。
──生き返った君の──
ヒルコの言葉だった。生き返った君の……生き返った、つまり、生き返らせる手立てが?
更に、そんな妄想を色濃く確固たる物としたのが、アンパイア・リビルドの存在。
元国王の存在が、生き返り、今、存在している。
であれば、ゆっくりと歩く訳にはいかなかった。
その顔は希望と、そして、喜びに満ちていた。
駆ける姿は、空腹で、夕食欲しさに家にへと走る子供のようだった。
血で重くなった服を気にする暇も、自分の肌に貼り付くのを気にする事も、鉄格子の扉を恐れる余裕もなかった。
「ヒルコォオ!!!!!」
初めて、ヒルコの名前を発した。
それは、つまらないプライドなど捨てて、金髪の子供を救いたい、その思いが故に、ヒルコの名前を叫んだ。
張り裂けるようなその声は、悲しみと、怒りと、そして希望を持っていた。
その声は、監獄を揺らし、監獄の中に響き、ヒルコの耳に、消え薄れる事なく届いた。
「コニカ! 初めて名前を呼んでくれたな! どうしたのだ? 散歩はたの」
「コイツを生き返らせてくれ!頼む!」
ヒルコの言う事を全て聞く前に、コニカは、自分の伝えたいことを、言い、酷く震えながら金髪の子供の亡骸を差し出した。
金髪の子供は、寝ているのかと思える程に安らかに死んでいる。
「すまない……」
「え」
「生き返らせる事は出来ないんだ」
コニカの心の唯一の、細く頼りなかった柱が消えた。
ヘーレを挑発するように誘い、そして、輪郭を潰した。
ヘーレの瞳孔が酷く小さい目が、コニカに持っている、自分の両頬を見た。
そして、叫んだ。耳がもげそうな程のその叫びは、人の声とは思えない。
近しいものを挙げるとすれば、豚や牛、鶏を解剖する時にあげる、救いを求めるのかも分からない、人生最後の発声。
そして、その声を出す場所を、引き裂いた。
いとも簡単に、編み目の大きい服を強く引き裂くように、易く、そして酷く、酷い。
そしてヘーレの記憶は、ここで途切れた。
─────────
「ぁあコニカ! コニカ!。……コニカァア!!」
ヒルコは、何度もコニカの名前を叫び、悶えている。
それほどに今、興奮しているのだろう、どちらの意味でも。
その他の者、物のほとんどは、声をあげ、コニカの行動に熱狂した。
ただ、その中の少数が、声を失い、ただ悲観的に映像を見るだけしか出来なかった。
今映像に写し出されているのは、人を殺す、いや人であるのだろうか、それほどに、コニカは易く、同種同士の殺し合いとは思えない程に、楽に、躊躇もない、一人倒したと思えば、また、殺し、飽きたりない程に、潰し、捻り、引き裂き、折り……殺すという行為の果てにコニカの姿は、見ている化け物が皆、悪魔、そう思った。
それ程に、恐ろしく、到底感情を持っているとは思えぬ程に、コニカの動きが、機械的に、自動で殺している。
悪魔の所業を見て、ヒルコは感じ、ナニカは畏敬し、グロルは興奮し、老人は笑った。
ナニカは、あの姿が、ヘラクレス、戦いの神を重ねた。
恐怖している、しかし、それと同じ、いやそれ以上に、崇高な姿に、恐怖さえもその姿で塗り替えて、コニカは、ヒルコと同格の存在にナニカの中で位置付けられていた。
グロルは、あの力を試したいと思った。無謀だった、それをグロル自体感じている。
しかし、それでも、試したい、知識と好奇心を得た、人間に近い物を得た、だからこその特権だった。
老人は、笑った。ただ、笑った。
笑顔にこびりついた、思惑を他所に、その他の声に混ざり薄まっていった。
争い、いや一方的虐殺。
少数である方がされるべきであろう事を翻し、そしていとも簡単に、いや凌駕し、行う。
ヒルコの心に、その行為をしているコニカの姿が、楔のように心に突き刺さり、ヒルコの心にズブズブと入り込み、出そうと思い、掴もうとすれば、中にへと入っていく。
それほどにヒルコにとって魅力的だったのだ。
現に今、ヒルコの脳内はコニカについての事で全てが埋まっている。
狂信的なその愛は、その矛先にへと向かおうと、足を進めようとするが、それはしない。
また、餌をまいているのだ。
───────────
コニカは、歩いていた、金髪の子供を抱き抱え、生気の失った浮遊霊のように、ゆっくりと、移動している。
のそのそと。
泣きもせず、笑いもせず、怒りもせず、ただただ、歩いていた。
そして、コニカはまるで天啓のように、ある言葉を思い浮かぶ。
──生き返った君の──
ヒルコの言葉だった。生き返った君の……生き返った、つまり、生き返らせる手立てが?
更に、そんな妄想を色濃く確固たる物としたのが、アンパイア・リビルドの存在。
元国王の存在が、生き返り、今、存在している。
であれば、ゆっくりと歩く訳にはいかなかった。
その顔は希望と、そして、喜びに満ちていた。
駆ける姿は、空腹で、夕食欲しさに家にへと走る子供のようだった。
血で重くなった服を気にする暇も、自分の肌に貼り付くのを気にする事も、鉄格子の扉を恐れる余裕もなかった。
「ヒルコォオ!!!!!」
初めて、ヒルコの名前を発した。
それは、つまらないプライドなど捨てて、金髪の子供を救いたい、その思いが故に、ヒルコの名前を叫んだ。
張り裂けるようなその声は、悲しみと、怒りと、そして希望を持っていた。
その声は、監獄を揺らし、監獄の中に響き、ヒルコの耳に、消え薄れる事なく届いた。
「コニカ! 初めて名前を呼んでくれたな! どうしたのだ? 散歩はたの」
「コイツを生き返らせてくれ!頼む!」
ヒルコの言う事を全て聞く前に、コニカは、自分の伝えたいことを、言い、酷く震えながら金髪の子供の亡骸を差し出した。
金髪の子供は、寝ているのかと思える程に安らかに死んでいる。
「すまない……」
「え」
「生き返らせる事は出来ないんだ」
コニカの心の唯一の、細く頼りなかった柱が消えた。
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