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遅熟のコニカ

紙尾鮪

26「ドゴウデゴウキュウ」

 コニカが目を覚ました時、見たのは、蛍光灯が点滅している天井だった。
 コニカは、グロルを探したがいなかった、代わりにいたのは、本をペラペラと捲るヒルコと、髪が若干少なくなった金髪の子供だった。

 ここ最近見慣れた部屋に、3人はいた。

 「ん、目覚めたか」
 ヒルコは、余程熱中していたのだろう、コニカが起きてから若干時間が経ってから気がついた。
 そしてヒルコは、目を輝かせて、コニカに近付いていった。

 「ずっと見ていたぞ! 凄かったなぁあの力、それでこそコニカだ」
 ヒルコは、コニカに触れようとした瞬間、強くコニカにその手をはたかれた。
 その行動に、ヒルコは理解は出来なかった。

 コニカは、やはり、グロルの言葉が引っ掛かっていた。
 ただの子供の悪戯、もしくは子供の意味のない距離感の近さ、そう思っていた。
 以前男娼と言ったのも、ただの悪戯、もしくは挑発しているからと思っていた。

 それが、もしもグロルの言った通りだったら?
 それが拭いきれない今、コニカは、ヒルコの手を拒んだ。

 「……すまない、今はそういう気分じゃないんだ、我が儘ワガママを言ってすまないが一人にしてくれ」
 コニカは、毛布を手繰り寄せ、抱くようにして、身を縮ませる。
 寒さから身を守るためではない、ただただ体に何かを当てていたい、人間ではない何かを。

 「……そうか、仕方ない、ご飯は食べられそうか?」
 コニカは、ただ首を振った。

 「わかった……そうだ、」
 「出ていってくれ!!」
 ヒルコが、何か次の話題を言おうとしたその瞬間コニカは、大声を出した。
 ヒルコは酷く驚いていたが、コニカも同様に驚いていた。

 自分なぜこんなにも大声を出したか分からなかった、いや分かりたくなかった。
 理解はしていた、このような声を出す原因、いや行動理由を。

 反抗期のような物、意味もなく他者を恐れ、一人でいたいという駄々、子供のようなその行為を認めたくない、故にコニカは分からないままいた。

 「……一つ、あの子供に礼を言っておけ」
 そう言って、ヒルコは出ていった。
 金髪の子供は、さっきの大声で起きたのか、目を擦ってコニカの方へと歩いて近寄る。

 「近付くな! お前だとしても今は……一人にしてくれ……」
 コニカは、金髪の子供が近付くのを許さず、そして、そんな事を言った自分を責めるように声は小さくなり、毛布に顔を埋めた。

 その姿に金髪の子供は、逃げ出すことも、コニカの場所近くから離れる訳でもなく、コニカに近付き、頭を撫でた。

 ただ、頭を撫でた。それだけ、特別な技術もない、ましてや初めて頭を撫でたのだ。
 乱雑で、でたらめで、しかし愛がこもっていた。
 子供が故の、混じりっけもない、純粋な好意の行為。
 その愛にコニカは、長きの年月溜まっていた、辛さ、悲しさ、苦しさ、全て溢れ、そして泣いた。

 コニカは、思いきり泣いた、名誉も、体裁も、全てを気にせず泣いた。
 涙など枯れ、いや枯らしたはずだった。
 視界を妨げる物など必要なかった。

 コニカの涙は、毛布の毛を濡らし、そして、暖かさをコニカは欲した。
 金髪の子供に抱きついた。
 毛がコニカを傷付けた、それを金髪の子供は分かった。
 金髪の子供は離れようとしたが、コニカは、力強く離そうとはしなかった。
 外部の傷より、心の傷を癒したかった。
 金髪の子供の、頼りない胸の中で泣きじゃくり、そしてコニカに積まれていた物を投げ出した。





 「……いやほんとすまない」

 「なんで? お母さん」
 金髪の子供は、やけに笑顔だった。頼られたというのがとても大きかったのだろうか。

 「……いや……うんなんでもない」
 コニカは、先程まで自分が行っていた事に恥ずかしさを覚え、毛布に顔を埋めるが、毛布が涙で濡れ若干冷たかった事にコニカは、再び思い出す。

 「大丈夫!お母さんを守る!馴れた!」
 金髪の子供は再び成長していた、助詞を使えるようになっていた。
 その成長よりも、コニカは引っ掛かるものがあった。

 「馴れた? 馴れたってどういう事だ」
 コニカがそう聞くと、若干金髪の子供は、口を開くのが、少し億劫なのか少し、もたつきを持って喋り始めた。

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