遅熟のコニカ

紙尾鮪

23「グロルハハゲ」

 「おお、広いな」
 コニカが見たのは、ただ、だだっ広い空間だった。
 体育館のようだったが、違う物だった。
 その理由は2つある、その1つは、塗装のないコンクリートの内装という事、通常体育館という物は、スポーツを行うのに適した床材を使っているのだが、ここの床は、灰色の、コンクリートで固めた床しかない。

 そしてもう1つは、破損箇所の多さ、そして破損範囲の、大きさである。
 傷などではなく、抉られていたり、穴が空いていたりなどだ。
 本来ならば、そのような破損があれば、早急に修復せねばならないが、してはいないという事から、スポーツをしているのではない事が見てとれる。

 そして、ヒルコが言っていた運動が、コニカの知っている運動ではない事を示していた。

 「であろう!。この部屋ならば、以前見せたデカいやつも、伸び伸びと動くことが出来るのだ!」
 興奮しているのか、とても早く、大きな声でコニカに伝える。

 「穴ぼこ!。穴ぼこ!」
 床に空いた穴に、手を突っ込んで見て遊んでいる金髪の子供は、何故か、レジャー施設に来たような様子で金髪の子供は楽しんでいる。

 「おぉおぉチビさんよぉ、今日の飯は女と子供かよ、ひっでえなぁ」
 少しガラついた声の、ガラの悪い丸坊主の男が、何時現れたか分からないが、ヒルコの背後にいた。
 背はヒルコの1.5倍程か、ヒルコを見下すようにその男は、喋り、そして見る。

 「客人の前だ、言葉を慎めテュラン・グロル」
 グロルと呼ばれているこの男、長身なのが特徴的だが、一番の特徴といえば、上半身裸である事だ。

 「そうかぁ、だったら丁寧にせっさねぇといけねぇなぁ?!」
 強く、大きな声で、コニカら二人を威嚇するように言った。
 グロルは、若干動じた二人の表情を見て、カッカと笑った。

 「グロル、いい加減にしろ、我輩の面子が立たないだろうが」
 グロルの悪態に、流石のヒルコも苛立ってきたのか、睨み、少し低めの声でグロルをしかる。
 しかしそんな物、グロルにとって効くはずもなかった。

 「へいへい、チビさんはこれだから背が伸びねぇんだよ」
 グロルはヒルコを貶すと、広間の真ん中で、ウォーミングアップを始める。

 「あの子供ガキが……!!」
 何時も、冷静、もしくは興奮している ヒルコが、ただ自分が貶された事によって起こる怒りをアラワにしていた。
 それほどに、背について言われるのが嫌だったのだろうか。

 「私は、あいつとやり合えばいいのか?」
 コニカも、ウォーミングアップを始めた。
 いや、コニカにとって、グロル自体ウォーミングアップのような物だった。

 「あぁ、灸をすえてやれ」
 苛立ちを隠しきれないようで、コニカの質問に回りくどい答え方をした、ただコニカに伝えるとしたならば十分過ぎる物だった。

 「ほぉ、チビさんのお気に入りっぽいなあ、まぁ、運動・・するだけだからな、楽しもうぜ」
 楽しもうぜ、その言葉が妙に引っ掛かったが、無論コニカも楽しむつもりだった。

 「で、ルールはどうする」
 コニカが言った。 それは、公平を期すために設ける物であり、それはコニカが今自分が上だと思ってるために言った、いわば情けである。

 「ルール? ……そうだな、チビさんに聞いてくれ」
 グロルは、ルールについての事を考えるのをやめ、ヒルコに考えさせる。
 その含みは、思い付かなかったという理由ではなかった。

 「そうだな、銃や刀などの武器の使用を許可し、勝敗は参ったと言った方が負けとする。双方自分の持つ力を最大限に使うのを望む、励め」
 ヒルコは、達観しつつも、両者の事を考え、両者が利益の出ないようなルールを出した。
 ただ、コニカは、剣を持っていたがグロルは何も持ってはいない。
 この時点でグロルは不利な状況であった。

 「チビさんの割りにはいいルールだな、さぁ始めようぜ、何ならあのガキも一緒でもいいぜ」
 しかし、グロルは自らを不利な状況にへと足を運ばせ、それすらも楽しもうとしていた。

 グロルは、ずっと穴ぼこに手を入れて遊んでいる金髪の子供を、指差し共闘を誘う。
 それが、グロルにとって良い物なのか。

しかし、明らかにグロルにとって良いものではない答えが返ってきた。

  「……?… …! ハゲ!!」
 金髪の子供は、グロルの頭を指差して笑った。
 それは、グロルとの戦いの始まりの合図だった。

 「スキンヘッドォ!! ぶち殺すぞ!!!」
 即座にハゲである事を否定し、弁解した。

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