遅熟のコニカ
21「オカアサントヒカリ」
「我輩はお邪魔のようだな、少し眠くなった、我輩は寝るとしよう」
少し疎外感を感じたのか、ヒルコは、とぼとぼと、引き留めて欲しいように外に出ていく。
「あ! おい!」
引き留めるようにコニカはヒルコを呼ぶが、名前を呼ばないのは、まだコニカが心を許していない事から来ている。
しかし、心を許していないと言っても、最初からある、一定の警戒を怠っていない、ただそれだけであるが。
ヒルコは足を止めた、コニカに背を向けたままで。
「なんだ、その、あれだな……ありがとぅ……美味しいよ」
感謝の言葉を言ったのは、コニカの傷を癒し、温かい食事をもらい、安心して眠る事が出来る場所を提供してもらった事からくる、
嘘偽りもない、陥れる気もない、真の感謝である。
『マンティデ』では、もし負傷をした場合、医務室にかかる事は出来るが、治療という治療を受ける事はできず、基本的に、消毒と包帯だけである。
食堂では、味など度外視しし、栄養を優先して作られた、美味しいとお世辞でも言えない料理を出され。
緊急の依頼が来るかもしれないため、ゆっくりと安静に寝れるような、柔らかいベッドではなく、石のように固いベッドで仮眠を取るだけである。
今、コニカはとても癒されている。
その証拠に、十数年ぶりに昼寝をした。
「感謝などはいらない、コニカはもう家族だ」
そう言って、背を向けたまま語る姿は、とても子供とは思えなかった。
ヒルコは扉を閉めて、牢屋の外へと出た。
「家族か、母と父はだいぶ会っていないな」
家族という事にコニカは、まんざら嫌悪感を抱いていないようで、その事を自然と受け入れ、家族に関連した事を思い浮かべる。
「はは なに?」
「ははというのはお母さんという意味だ」
「おかあさんなに?」 
金髪の子供は、矢継ぎ早に質問する。
聞いた言葉を使うだけの受動的だった金髪の子供は、聞いた言葉の意味を、自分から知ろうとする能動的な行動を起こしている。
「お母さん……そうだなどう伝えれば……えっとだな…………ずっとお前といて……そうだなお前が好きな人物か?」
詰まりながらも、自分の思うお母さん像を金髪の子供に教える。
「コニカ!おかあさん!」
コニカが言い終わる寸前に、金髪の子供は手を上げて、嬉しそうに、若干高い声で高らかに宣言する。
「いやいや!待て!私はお前のお母さん……いや私が言った条件に当てはまっているのは私だけだが……」
コニカは自業自得で、自分が定めた定義にハマっていた。
そして大慌てで、否定しようとはするが、否定しようがなかった。
「コニカ! トンカツ!」
トンカツがあった皿を指差し、その次にコニカを指差し、声を大にして言った。
「同じ! 好き!」
「私はトンカツと同程度だったのか!」
「……うっ」
ヒルコは急に胸を押さえ、廊下に倒れこむ。
ヒルコが倒れこんだ場所の近くにある牢屋には、ナニカがいた。
「主よ! どうされたのですか!」
激しく鉄格子を揺らし、自分が助けに行きたいという思いを表す。
主人の身を案じ、助けようとする行動は、従者の見本のような行動だったが、その主人は助けを必要としていなかった。
「あぁ……コニカ……可愛い、いやここまでくると、愛くるしい……」
ヒルコは、愛に悶えていた。
いや、愛ではない、一方的な執着、ストーカーと同様の感情。
頬が紅潮し、息は荒くなる。
脳が沸騰するように、熱く。
自然と口角は上がる、乙女のように、しかし、脳内は壊れている。
「分かるか! ビトレイよ!」
急にナニカの方にへと顔を向けると、ナニカは驚いた、いや恐怖した。
ヒルコの目に光が差していたのだ、本来ならば逆である場合に恐怖するべきなのだが、ヒルコのその少年のような目に、妙な恐ろしさをナニカは感じた。
「愚直、愚直なのだ!少し喜ばせば、それに比例し喜ぶ。感情の起伏、その瞬間の滞りの無さ、素晴らしい!そうとしか言えないであろう?」
コニカの良さを語るヒルコの話を、ナニカはただ聞いているだけしか出来なかった。
いや、本来ならば、耳を塞ぎたくなるほどに、不快な物なのだが、耳を塞げば、その手を壊されてしまいそうな程の恐怖を感じ、下手に何か行動を起こすのではなく、何もせず、耳を傾けるのが安全なのだと、ナニカは瞬時に悟った。
「喜びの感情を見たのだ、では次は何を見るべきだと思う?」
キラキラとした目で、ナニカに問う。
その目は見たことがなかった。
そして恐る恐るナニカは答えた。
「きょ、恐怖……?」
恐る恐る言った言葉は、ナニカが思う、喜びとは真逆の言葉。
しかし、ヒルコが求めた答えとは違った。
「それは、最後だ。感情とは積み重ねから行き着く事により、幾何倍をも結果が変わるものよ。次に見るのは怒りだ、いや悲しみも、更には恨みも……あぁ楽しみだ」
ヒルコは笑った。
全てを狂わせるほどの狂気を孕んで。
少し疎外感を感じたのか、ヒルコは、とぼとぼと、引き留めて欲しいように外に出ていく。
「あ! おい!」
引き留めるようにコニカはヒルコを呼ぶが、名前を呼ばないのは、まだコニカが心を許していない事から来ている。
しかし、心を許していないと言っても、最初からある、一定の警戒を怠っていない、ただそれだけであるが。
ヒルコは足を止めた、コニカに背を向けたままで。
「なんだ、その、あれだな……ありがとぅ……美味しいよ」
感謝の言葉を言ったのは、コニカの傷を癒し、温かい食事をもらい、安心して眠る事が出来る場所を提供してもらった事からくる、
嘘偽りもない、陥れる気もない、真の感謝である。
『マンティデ』では、もし負傷をした場合、医務室にかかる事は出来るが、治療という治療を受ける事はできず、基本的に、消毒と包帯だけである。
食堂では、味など度外視しし、栄養を優先して作られた、美味しいとお世辞でも言えない料理を出され。
緊急の依頼が来るかもしれないため、ゆっくりと安静に寝れるような、柔らかいベッドではなく、石のように固いベッドで仮眠を取るだけである。
今、コニカはとても癒されている。
その証拠に、十数年ぶりに昼寝をした。
「感謝などはいらない、コニカはもう家族だ」
そう言って、背を向けたまま語る姿は、とても子供とは思えなかった。
ヒルコは扉を閉めて、牢屋の外へと出た。
「家族か、母と父はだいぶ会っていないな」
家族という事にコニカは、まんざら嫌悪感を抱いていないようで、その事を自然と受け入れ、家族に関連した事を思い浮かべる。
「はは なに?」
「ははというのはお母さんという意味だ」
「おかあさんなに?」 
金髪の子供は、矢継ぎ早に質問する。
聞いた言葉を使うだけの受動的だった金髪の子供は、聞いた言葉の意味を、自分から知ろうとする能動的な行動を起こしている。
「お母さん……そうだなどう伝えれば……えっとだな…………ずっとお前といて……そうだなお前が好きな人物か?」
詰まりながらも、自分の思うお母さん像を金髪の子供に教える。
「コニカ!おかあさん!」
コニカが言い終わる寸前に、金髪の子供は手を上げて、嬉しそうに、若干高い声で高らかに宣言する。
「いやいや!待て!私はお前のお母さん……いや私が言った条件に当てはまっているのは私だけだが……」
コニカは自業自得で、自分が定めた定義にハマっていた。
そして大慌てで、否定しようとはするが、否定しようがなかった。
「コニカ! トンカツ!」
トンカツがあった皿を指差し、その次にコニカを指差し、声を大にして言った。
「同じ! 好き!」
「私はトンカツと同程度だったのか!」
「……うっ」
ヒルコは急に胸を押さえ、廊下に倒れこむ。
ヒルコが倒れこんだ場所の近くにある牢屋には、ナニカがいた。
「主よ! どうされたのですか!」
激しく鉄格子を揺らし、自分が助けに行きたいという思いを表す。
主人の身を案じ、助けようとする行動は、従者の見本のような行動だったが、その主人は助けを必要としていなかった。
「あぁ……コニカ……可愛い、いやここまでくると、愛くるしい……」
ヒルコは、愛に悶えていた。
いや、愛ではない、一方的な執着、ストーカーと同様の感情。
頬が紅潮し、息は荒くなる。
脳が沸騰するように、熱く。
自然と口角は上がる、乙女のように、しかし、脳内は壊れている。
「分かるか! ビトレイよ!」
急にナニカの方にへと顔を向けると、ナニカは驚いた、いや恐怖した。
ヒルコの目に光が差していたのだ、本来ならば逆である場合に恐怖するべきなのだが、ヒルコのその少年のような目に、妙な恐ろしさをナニカは感じた。
「愚直、愚直なのだ!少し喜ばせば、それに比例し喜ぶ。感情の起伏、その瞬間の滞りの無さ、素晴らしい!そうとしか言えないであろう?」
コニカの良さを語るヒルコの話を、ナニカはただ聞いているだけしか出来なかった。
いや、本来ならば、耳を塞ぎたくなるほどに、不快な物なのだが、耳を塞げば、その手を壊されてしまいそうな程の恐怖を感じ、下手に何か行動を起こすのではなく、何もせず、耳を傾けるのが安全なのだと、ナニカは瞬時に悟った。
「喜びの感情を見たのだ、では次は何を見るべきだと思う?」
キラキラとした目で、ナニカに問う。
その目は見たことがなかった。
そして恐る恐るナニカは答えた。
「きょ、恐怖……?」
恐る恐る言った言葉は、ナニカが思う、喜びとは真逆の言葉。
しかし、ヒルコが求めた答えとは違った。
「それは、最後だ。感情とは積み重ねから行き着く事により、幾何倍をも結果が変わるものよ。次に見るのは怒りだ、いや悲しみも、更には恨みも……あぁ楽しみだ」
ヒルコは笑った。
全てを狂わせるほどの狂気を孕んで。
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