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遅熟のコニカ

紙尾鮪

18「ホンハサル」

 「ユイノウとやらは、魔法とはどう違うんだ?」
 文章を読んでは見るが、理解するのが口頭の方が早いのだろうと思い、ヒルコに聞く。

 「例えばだな、炎を使う魔法と遺能があったとする。魔法の場合は、応用でも炎を剣にまとわせるだけだが、遺能の場合は炎の剣を作り出す事ができる」
 コニカは、若干ピンとは来ない、そのためコニカは腕を組み、少し唸ってみてあまり分かっていない事を態度で表す。

 「分からないか、そうだなどう言えば……そうだ、あいつを呼ぶか」
 ぴょんとコニカから降りて、地面にガリガリと言わせながら、チョークで魔方陣のような物を描いていく。

 そしてまた黒い鞄が現れると、その鞄の中から鏡のような物を出して、そっと魔方陣の中心にへと置く。
 ヒルコは、自分の髪を1本取ると、鏡にへと落とす。
 鏡はその髪を鏡の中にへと取り込むと、鏡は膨張し、割れる。
 鏡の破片は、1度天井近くにまで上昇すると、紙吹雪のようにヒラヒラと舞う、光を反射しながらきらびやかに。

 そして、鏡の破片が落ちると破片は何処かにへと消え、影が現れる。
 そして影から猿が現れる、体が鏡の。

 「こいつはズィ・チィ、とても可愛いだろう」
 キャキャと辺りを見回すズィ・チィをヒルコは抱き上げ、コニカに見せる。

 「そうだな、しかしサルを見せてどうする」

 「そうだな、まぁ簡単に言えばコイツも魔女の子孫だ」
 ズィ・チィはヒルコの腕の中で暴れだし、そしてコニカの目の前にへとズィ・チィがベッドに飛び乗る。

 「……つまり魔女は人間だけではないと?」
 ズィ・チィは、コニカをまじまじと観察するように、コニカの至る所を見る。
 すると、金髪の子供もコニカの上に乗り、ズィ・チィに殴りかかる。
 ズィ・チィは逃げるように、ヒルコの腕の中にへと戻る。

 「いや、そういう訳ではないのだが、まぁいいか。チィ、コニカを写せ」
 ズィ・チィはキャァと言うと、腹部にある鏡に、コニカが写し出される。
 コニカはその鏡をジッと見つめるが、鏡の中のコニカはそっぽ向いている。

 「そして、この……名前は決めたのか?」
 ヒルコはズィ・チィを、コニカの上にへと置くと、金髪の子供を持ち上げる。
 コニカは首を振ると、ズィ・チィの腹部の鏡にへと、金髪の子供を放り投げた。

 「ちょ、お前!」
 コニカの心配もむなしく、金髪の子供は、コニカの顔の側面に張り付いていた。
 あの時、金髪の子供は、鏡と同化するように吸い込まれていた。

 「という事だ」
 
 「離れろ!髪を食べるな髪を!」
 ヒルコが若干のドヤ顔をしているが、そんな事はつい知らず、コニカは、顔に引っ付いている金髪の子供を引っぺがそうとしている。
 ただ、金髪の子供は、とても穏やかな笑顔で、コニカの栗色の短い髪をもしゃもしゃ食べている。

 「……でどうなんだ、分かったか?」
 ただでさえ淀んでいるヒルコの目が、一層淀んで、若干大きめの声でコニカに聞く。
 やはり嫉妬とも思えるような行動、まるで子供に妻を取られた夫のよう。

 「あ、ぁあ、つまり凄いという事だな」
 若干適当にコニカは答えるが、その答えに満足したのか、ヒルコは、コニカが持っていた本を拾い上げ、表紙を見ながらこう言う。

 「魔女の力は、素晴らしく、そして破滅的である。この言葉だけ我輩には分からない」

 「遺能に救われてきた、遺能のおかげでここまで来れた、遺能のおかげで家族が増えた、遺能のおかげでコニカと会えた。救いと言ってもいい、だから我輩にはこの1文しか見えていない」
 ヒルコは、遺能にとり憑かれているように、遺能を賛美する。
その狂気性に、コニカは少し身構える。
 少しでも、油断すればヒルコの狂気に食われそうな程の威圧だった。

 何も脅されてもなかった。
 持論を述べているだけだ、なのにコニカは酷く、恐れていた、なんの危なげもない、なのにコニカは、強大な敵と相対しているように、気を張っていた。

 「この本にかけられた遺能は、読み手が覚えている事を排除するという物だ、ちなみに遺能を持っている者以外には、つまらないただの日記だ」

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